若者の車離れ、若者の書籍・雑誌離れ?
「twitterの面白いやりとりを抜粋したブログがありましたよ」と聞いて、探してみた。なんと、名にしおうディスカヴァー21社の社長ブログだった。→ディスカヴァー社長室blog: プレステのせいではない、若者のクルマ離れの理由は? 〜Twitterで話されているたとえばこんなこと ●干場
僕は車が好きなので、車について語るのも好きなのだけど、たしかに最近の若い人と車の話をする場面は皆無だ。まあ周りにあまり若い人がいない、というのもあるが。サーファーの若い人がいたので(サーフィンはさすがに車なしではできないだろう、と)「何乗ってるの?」と聞くと、「超中古の軽トラ乗ってます。便利ですよ」と返ってきた。これはまいった。生半可な車乗ってるよりよっぽどマニアックだわ。だけど自動車メーカーにとってみればまったく対象外のお客さんだわな。
結局、車の話をするのは僕と同年代の40代前半とか、せいぜい30代後半となる。それも結婚したとか子どもができたとか、なんだか楽しくなさそうな車購入話が多い。ここ数年で聞いたなかでもっとも趣味に走った車購入は、ある年上の妻子持ち男性が「値引きがすごいから」とVWゴルフGTI(ゴルフV型)を買って800kmほど離れた故郷に帰省したとき高速で飛ばしすぎて15km/h超過だかで捕まった、という件くらいだ。
あとは、スバル・レガシーを買った知り合い、VWゴルフトゥーランDSG・TSIを買った知り合い…どれもあまり色気がないな。いずれも家族のために選んだ気配が濃厚だ。
まあ僕のようにいい年してひとりでいて、乗ってるのも小さいBセグメントというのはさすがに知り合いには少なくなった。そもそもBセグの車が少なくなったしな。
で、若者の車離れだけど、たしかに若者が車を購入することは少なくなったかもしれない。最近、休日の出先でよく「わ」ナンバーを見る。みんなレンタカーで遠出しているのである。つまり、ETCカードは持ってて土日1000円は楽しんでるんだけど車は持ってないのだ。さすがだ。賢い。
しかし件の社長ブログのtwitter抜粋のように、車持ちの若者は減っているのだろうか。実数として。
よくわからないのだけど、昔から車を享楽的に買っていた若者というのはそんなにいなかったような気がする。
ちなみに僕は広島とか岡山とかの田舎で育ったので、車は生活必需品でした。なかったら通勤できないような地域だったので。だから若いとかに年寄りとかに関係なくみんな車乗ってた。ただし、若者はちょっと無理してマツダのサバンナに乗ったりしてた。いちばんよく見たのはファミリアだったが。ついで軽自動車。そういえば中学のときの担任はスズキ・セルボに乗っていた。あれは軽自動車のくせにクーペで今考えるとめちゃくちゃマニアックだ。あれが典型的な若者型車消費だったんだな。
車と若者といえば金字塔のような作品があって、それは今でも現役で車マンガを書き続けている楠みちはる先生の『シャコタン★ブギ』ですな。高知とおぼしき地方で80〜90年代の若者が車をめぐって巻き起こすコメディ。
Amazon見てみたらもう中古品しかないわ。んー、若者の車離れというのはほんとなのかもね。こんな名作がもう読まれてないなんて。
そんなこんなで話はねじ曲がっていくのだけど、若者は車を買わなくなっただけじゃなくて出版物も買わなくなったようだ。書籍で若者を対象にしたものはもうあまり売れない。40代以上にしぼった企画はけっこう売れる。雑誌でも20代が対象のファッション誌はもうダメ。集英社「PINKY」が休刊する、ってのは氷山の一角で、休刊間際の雑誌がいっぱいあるはず。だけど30代女性向けのファッション誌は堅調。というか実は40代が読んでるんだと思うけど。そして明白に40代に向けられた雑誌がいま有卦に入っている。この不況下でも広告が集まるのがこのセグメントらしい。
若者の自動車離れ、という話で僕が「?」と思ったのは、僕が知っている田舎の若者たちは、みな新車なんか買ってなかったってこと。タクシー落ちのクラウン、遠隔の地方から流れてきたカローラ、極上の出物を大阪のオークションまで出張って買ったローレル、とか全部中古だ。たまに新車乗ってるやつがいたらそれは概して軽自動車だったね。大学までの通学用として親から買い与えられた。
つまり、他の誰か大人が買ったものを中古としてゲットしていたのだ。若者マーケットなんてそんなにあったのかって思う。……たしかに僕らの頃にプレリュードとかシルビアなどのデートカーが全盛だったらしい。だけど、ほんとはそれももっと年寄りが最初に買って、乗り捨てたやつが若者層に降りてきてたんじゃないの?
で雑誌なんだけど、雑誌は中古車みたいな消費形態はないので、おばさんが読み捨てた「Plecious」を若い娘が買って読む、なんてことは起きない。もしかして母娘で同じ雑誌を読むことはあるかもしれないが。なので母世代の雑誌が妙に若作りするようになって、ガーリーなものが平気で載ってる、なんてことは実際あるかもしれないな。旅行先でよく母娘の客を見かけるもんな。連中金持ってそうだしな。
まあだけど雑誌は安いので(何十万円もする服が載ってる雑誌も700円くらいで売ってるわけで)若者の財布から出た金で買われることが多かった。かつては。それがいまや、金出して買う若者は激減。
書籍も同様で、若者向けの「就活」の本はたしかに売れてるけど、それ以外のジャンルで若者向けはけっこう悲惨。ライトノベルは実は30代後半から40代くらいがヘビーユーザーみたいだし(要するに大人にならない人たちが読み続けている)、マンガももう20年くらい同じ読者だけに買ってもらってる(でなきゃこんなにたくさん20年続く作品なんてないよ。「美味しんぼ」だけじゃないよ長寿マンガは)。純粋に若者向け、志を持った、反骨心のある若者が読むべき小説、たとえばSFなんかは、もう絶滅。日本SF大会とかは平均年齢確実に40超えてるよね。書き手は50〜60くらいだし。一人気を吐く山本弘、ももうすぐ50だろ。
いま売れてるジャンル、警察小説とか時代小説は、若者の読むものじゃない。マンネリを楽しめる大人の読み物だ。
そういうわけで、自動車メーカーの偉い人が「若者が商品を買わなくなった」って言ってるのは、認識としてどうかと思うが、書籍雑誌メーカーの偉い人に危機意識がまったくないのはこりゃどういうことだと。見当違いな方向かもしれないがいろいろ考えてる自動車メーカーの人の爪の垢を煎じて飲むべきだと。思う。
書籍雑誌産業は悪い要素ずくめだ。僕はその末端で書店に営業したりしているので、ことさら悲惨に見えるのかもしれないが。列挙してみると。
- 部数低落が止まらないので、定価を上げようとしている。悪循環。
- 1タイトルあたりの経済規模が縮小すれば、在庫圧力が増す。在庫の制御も難しさを増す。
- 多量のタイトルが絶えず供給されるため、書店の店頭は超過密。店員は商品知識を涵養する時間もない。売れ筋を補充するのがせいいっぱい。
- そのため「本屋大賞」のような現場からの賞を設けても、文学的に面白いものを選ぶことはできない。
- 書店員を低賃金・長時間労働で使うビジネスモデルももう限界。現場を低賃金で使うことで高い収益力を出していたのだが、売り上げ減で収益が見込めない。それでいて労働はもっと苛酷になって人手が足りなくなっている。
- 書籍雑誌メーカーも疲弊しており、小売店へのキックバック・報奨金が払えない。
- メーカーは広告収入で高収益体質を誇っていたが、売り上げが減った現在は高コスト体質だけが残っている。
…まだまだあるけど今日は止める。で、これらを食い止めてこの業界の産業革命になりそうなのがAmazonのキンドルとか、Appleのまだ見ぬタブレット(巨大iPhone?)なのだと思う。ちぇ、キンドルはAmazon.comでしか売ってないのでアフィが貼れないな。
ともかく上記の悲惨な状況をすべて解決できるのは、これら新媒体だけだ。早くメーカーの経営陣がそれに気づかないかな。この暮れぐらいに気づいてくれないと、来年の今頃はこの業界の半数が職探ししてると思うよ。