新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

文明堂の栗むし羊羹

 寒いですね。寒いとお腹が減ります。
 今夜は鍋にしました。手抜きなので具は白菜・葱・ぶなピー、豆腐と、白いモノばかりです。ホワイトプランというか。安いし。せめてもの彩りにと思って春菊を入れたら、汁が薄緑色になってしまいました。なんだかな。


 食後にお茶を入れました。お茶請けは、いつだったか小銭が必要になったので1万円で1個だけ買って忘れてた「栗むし羊羹」。文明堂謹製です。
 いま文明堂のwebページhttp://www.tokyo-bunmeido.co.jp/confectioneries/index.php見てみたけど、載ってません。200円しない、小さな食べきりサイズで、小豆色の直方体の上面に黄金色の栗が一粒、のっかっていました。こんなのです(後日写真を追加しました)。

 これが、なかなか感動するものだったのですよ。
 黄色い栗の部分以外は普通の羊羹だろうと思ったんですが、舌の上に載せるとここからもほんのり栗の味がします。裏ごしした栗が小豆に混ぜられているようです。食感もほこほこしており、通常の小豆の羊羹のようにしっとりぺっとりしたものではありません。もちろん主成分は小豆ですから、大筋はきちんと羊羹羊羹してるのですが、加えて栗の味わい・イメージが強烈に残るのです。

 せっかく栗そのものをトッピングしてるんだから、ベース部分は普通の羊羹でもいいじゃん、と私なんかは思うのですが、文明堂のパティスリーさんはそうは考えなかったのです。ベース部分にしっかり栗が入っていてこそ「栗むし羊羹」であろうと。トッピングにだまされるような味音痴の客は相手にしてないのだよ、と。本物の味を提供してきたから今日の文明堂があるのですよ、と。
 これほどの出来なら、何十年も文明堂のお菓子だけをお茶請けにしてもけっして飽きることはないでしょう。たぶん、街の文明堂のお店の周りには、「お茶請けは文明堂」と決めて週に一回とか必ず買いに来るお年寄りが何人も住んでるんじゃないかな。そんなに高いものじゃないけど、100円ショップではけっして売ってない味です。

 私はこの栗むし羊羹を世田谷の国道沿いにある文明堂の店舗で買いました。いわゆる高級住宅街に近い地区です。文明堂以外にも『亀屋万年堂』 お土産、ご進物、散策のお供に、自由が丘お菓子の店とか鶴屋吉信とか、世田谷の街には和菓子屋さんがいっぱいあります。それも、羊羹などの練り物系か、カステラなどの高級焼き菓子が目立つような気がする。

 http://www.tokyo-bunmeido.co.jp/store/index.htmlで文明堂のお店が東京のどのへんに分布してるか見てみると、渋谷から池袋をつないだ山手線西側から西郊へ、ものの見事に偏っておりました。葛飾区、墨田区江東区江戸川区といったいわゆる城東地区には文明堂は出店してません。
 先入観なのですが、城東地区の和菓子屋さんのイメージは、練り物じゃなくてせんべい、あるいは豆大福とかが多いような気がする。これ、私の偏見ですよ、実証的なデータはありません。そういえば、とらやの店舗も城東地区にはありません。例外は、上野と浅草の百貨店に出店してるだけですね。

 ここで一つ思い出したのが、「つぶ餡」のことを東京では「貧乏あんこ」と呼ぶ、ということです。これ、かなり年配の男性から聞いたのですが、「こし餡」が高級で、つぶ餡は処理工程が少ない下賤なあんこなのだと。
 羊羹がちゃんとしたおつかいものになるのに、豆大福だと「失礼だ」とかあまりにカジュアルな印象になってしまうのは、こういう歴史的文化的階級的背景があるからだったのでしょうか。今頃気づいたぞ俺は。

 実際に文明堂の店舗に行ってみると、こぎれいだけどけっして敷居は高くなく、ワンコインどころから百数十円で買える商品がいっぱいある。どら焼き(http://www.tokyo-bunmeido.co.jp/confectioneries/mikasayama/index.php)だって1個ならコンビニで売ってるのと変わらない値段だし(でも味はこっちのほうが上)。はやりの洋菓子屋さんなんかよりずーっと親しみやすいくせに、味に関しては妥協がない。
 今時の小売業はどこも激しいコストダウンと効率追求の荒波に揉まれてるわけですが、そんななかでほっこり美味しい本物を手軽に味わえると、とてもホッとしてしまいます。高級だけど庶民にもやさしい文明堂。そういえば「三時のおやつは文明堂♪」って、高度成長期を代表するCMソングですね(http://www.tokyo-bunmeido.co.jp/museum/cm/index.html1962年放送だそうです)。高級和菓子を大衆化させた文明堂ですが、本質的な高級さはいまもぬきがたく息づいている、ということでしょうか。なんだかよくわからん言い方になってすみませんが。


 ま、細かいことはさておき、機会があれば食べてみてください、文明堂の栗むし羊羹。美味しいですよ。
 と言っても私の家の近所には文明堂はないんですが。
 ではまた。