新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

リストラなう!その36 ハローワークなう!

 ブログ更新して、シャワー浴びて、霧雨の中アパートを出た。墓地の脇の道を歩くと生臭い花の匂いが今日の雨でいっそう際立つ。コメントでご指摘いただいたように、どうも栗ではなくスダジイのようだ。栗の葉っぱらしい樹がないもんな。
 この道を行くとサンシャイン60。そう、この高層ビルの三階にハローワーク池袋があるのだ。


■雨の日のハロワは空いている
 霧雨の中を歩いてくると、ちょっとの距離でも全身が濡れる。まったく腹立たしい雨だ。
 一階シアトルズ・ベストコーヒーのそばのエスカレーターを三階まで上がるとハローワークの看板がある。ここから先なのだが、入ると手前右から「職業訓練の相談コーナー」、正面が総合受付、さらに右に曲がって奥が「雇用保険給付課」受付となっているよーだ。よーだ、というのは各受付のブースが一般に考えられる「受付」よりもぐっと小さくて質素なので、一目ではわからないのだ。初心者に厳しいよハローワークは。
 総合受付?みたいなブースにいる女性に尋ねる。
「すみません、初めて来ました。今月末でリストラされて失業するのですが、こちらに登録するには?」
「それは大変ですね、まずこの用紙に記入して、あちらに見本がありますからよくご覧になって、そしてまたいらしてください」
 ハローワークカードを作るための、ここ専用の履歴書を渡される。壁の見本には「自分をアピールしてください」などと懇切丁寧に要領が書いてある。うーん、僕の場合、職種歴は「書籍編集・宣伝業務・販売営業」とかになるのか? よくわからんが。とりあえず書く。それぞれに従事した年月を書く欄もあるが、よくわからないぞ。これからハロワに来るみなさん、自分の職種歴は予習しておいたほうがいいよ。
 あとアドビのクリエイティブスイーツ、MSのオフィススイーツが使えることはどっかに書いておこう。といってもMSアクセスとかはかなり怪しいが。
 受付に戻って「お願いします」と専用履歴書を差し出すと(残念ながらここに出すんじゃないのよ)という表情でやんわり戻され、順番待ち伝票を渡される。「400」。そして「あちらの窓口でお呼びしますので、座ってお待ちください」と。向こうにはパーティションで仕切られた長い長い窓口が並んでいる。なんか「未来世紀ブラジル」みたいな光景ですよ。
 電光板の表示は「398」。なんだ、たった二人待ちか。後ろの会話が耳に入る。
「今日は空いてるな。雨だから」
 そっかー。普段はもっと混んでて大変なのね。今日来てよかったなあ。濡れたけど。
 すぐに「400番」が呼び出され、電光板に示されたブースに行く。面接してくれるのは品の良い年配の女性。
「初めてですか?」
「ええ、今月末で退職するので、その前に登録とご相談に参りました。リストラされるので会社都合退職になると思うのですが」。履歴書?の在籍してた企業名欄に目がとまる。
「こちら、あの有名な○○社ですか?」
「そうです。有名…かどうか」
「リストラ、ですか。大丈夫なんですか?」
 …って、知りませんよ! 潰れないためのリストラだと思いますけどね! 僕に聞かないで(w)!


■野良犬たちの群れ
「ひとまず登録してハローワークカードを作りましょう。少々お待ちください」
 今日は空いてるからなのか、面接してくれる人(ケースワーカー?)の態度は非常にプロっぽく、物腰が柔らかい。たしかここで働く人は国家公務員と非常勤職員だと聞いたんだが、みんなそれっぽくない。丁寧な接客業、素敵なホテルのコンシェルジュみたいだよ。士気も高い。
 しばし待たされ、厚めの紙に印字されたレシートのようなものを渡される。ハローワークカードだ。下部のミシン罫から切り離すと名刺大の紙片になる。ここに個人情報を呼び出すバーコードがある。
「これで登録はできました。もしこの後転居等されてもカードは作り直さないでくださいね」。了解です。
「それで今日のご相談というのは?」
「はい、雇用保険職業訓練についてうかがいたく」
雇用保険は会社から離職票をもらっていただいて、それから申請になります。会社都合退職ですとすぐ支給開始ですね。詳しくはあちら、奥の雇用保険給付課受付でお聞きください。職業訓練は入ってこられたところに相談コーナーがあります」
 言葉を文字にするとこんな感じだけど、実に丁寧かつ暖かい応対ですよ。「ハローワーク行くのは疲れるって。大変だって。おっかないって」なんて、これから辞める僕にいろいろ情報くれる方もいますが、今のとこそういうストレスは感じませんよ?
 ただ、振り返るとパソコン検索コーナーがどばっと広がっており、空席なしでびっしり埋まっており、検索してるみんなの目がかなり真剣だったのにはビビった。そりゃそうだ、僕は今日は冷やかしだけど、ここのみんなは現役の野良犬だからな。真剣だよな。
 ここで“野良犬”という呼称について。「自虐的に使っているのもわかりますが」「自虐で他の人を傷つけないで」というコメントをいただきました。でも、僕はこの言葉、全然自虐的に使ってるつもりはないですよ。むしろ、鎖につながれない犬、というつもりで誇り高く使ってるつもりなんです。もっともそれを他人にまで無節操に適用するのは失礼ですよね。ごめんごめん。でも僕は何度でも言いますよ、野良犬になるぜ!もう飼い犬じゃないぜ!と。
(ブログでどんなに猛々しく吼えてもたぬきちの実像は仔猫のようなものである、とは広く知られた事実ですよね? そういう訳で、自分のブログでくらい虚勢張らせてくれよなっつーか)
 フロアいっぱいの野良犬の群れに圧倒されながら雇用保険のエリアに進む。ちょっとむしむしする日の朝からフロアにひしめき合いながら求人を検索しているみんなのリアリティ。いい感じだ。
 雇用保険のエリアでは、本日ただいま受給の認定を申請した人たちがならんでいる。「今日申請された方は5月27日から支給…云々」なんてアナウンスがされ、申請した人たちが円陣を組んで面接官のブリーフィングを受けたりしている。むむ、さすがにカネがからんでるからみんな熱心だな。
 僕は言われたように雇用保険の受付に行って「相談したいことがあります」と言うと“質問票”みたいのをもらったので、そこに質問を書き込んで「33番」の透明緑のトレイに入れて待つ。二人ほど過ぎて呼ばれ、僕の質問はスムースに答えをもらえて終わった(内容は内緒)。
 最後に職業訓練のコーナー。前にも書いたけど僕はプログラミング言語を一つ覚えたいと思っている。そんな僕の希望に合致したコースはあるのか。
 ここもそんなに待たずにブースに呼ばれた。面接してくれた担当者は、まず僕の希望を聞いて検索してくれたうえで「ここに用意された職業訓練は、公共職業訓練基金職業訓練とがあります。基金のほうは雇用保険の対象ではない方々のためのものです…」と、僕の疑問にことごとく答えてくれたのだった。
 なるほど。ともかく僕は「会社都合退職」なので条件は素晴らしく良い。だが、あまりのんびりして職業訓練を受けずにいると、せっかく「交通費・受講手当支給」なんてオプションがありながら無効になるから気をつけてね、といった注意事項があったのだった。今募集している(もうすぐ締め切る)訓練コースは七月半ば以降から始まる。だから僕のように少しゆっくりしたい者はもう少し待つのもアリかも、ということなどなど。


■ハロワ、最高じゃん?
 聞きたかったことはわかった。それぞれのコーナーであまり待たずに聞けたのはとても意外だった。今日が雨だからか? 職員のみなさんはいずれも当たりが柔らかく、説明は丁寧で、「また来たいね」と思う接客(?)だ。求職者のストレスを真っ向から受け止めるという、けっこう大変な仕事であることを考えると、彼らの態度は素晴らしいと思いますた。のんびりくつろぎに来る場所じゃないけど、明るく清潔で気持ちいい機関でしたよ。
 帰りにちょっと掲示板を覗いてみた。さすがに若年層向けの求人は多いが中高年向けは少ない。そして中高年向け掲示板の前には割と人だかりがしている。僕もその後ろから掲示板を覗き込む。練馬の「自動車パーツ等販売」というお店で「ラジコン試運転・販売営業・年齢不問・要店長経験、急募」なんて求人がある。給与は「20〜30万円」だぜ! すげーぜ! ま、僕はラジコンのことは何にもわからないし店長経験もないので無理だけど。
 ハロワに登録すると、自宅からネットで求人を探すことができる(ハローワーク・インターネットサービス)。これならハロワの検索コーナーに並んだりしなくていいのである。なかなかブラボーなのである。
 いろんなパンフやらチラシをもらって僕はけっこうハッピーになってサンシャインを出た。もう雨はあらかた上がっていた。いったんアパートに帰り、食事をしてから思いついて池袋ジュンク堂書店に行った。前から読みたかった本を探し、ついでにPerlの入門書を選んだ。
 三階を通りかかると名物副店長のT口さんを見かけて挨拶する。この人にはものすごい前からお世話になってて、うつ病で会社休んだりしてたときはクリニックがこの近くだったこともあり、行き帰りに書店に寄ってぬぼーとした顔を見せていた。いっぱい心配かけたのでほんと足を向けて寝られない人なのだ。
 懐かしい人にも会えたし、ハロワにも行けたし、なかなか有休消化の日は充実していたのであった。とくに公的機関の接客がこんなに良くなってるとは驚きだった。ひるがえってこっちの業界は、この間どんなイノベーションをしたかいな?なんて考えてしまう。
 ハロワ池袋はとにかくうちから近いし、このアパートにいる間はちょくちょく行こうと思った。中高年の転職市場はたしかに楽じゃないけど、さすがに東京は求人が多い。すごいぞ。
 なんか悲惨で厳しい社会の風を感じるかと思ったのだが、なかなかそういう展開にならないので自分でも?と思ってるんだよ。やっぱり僕はちょっと頭のネジがはずれているのかな?(つづく)


※明日は飲み会が入っているので更新はたぶんおやすみします。あしからず。