新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

「不知火検校」が好きなんだが、人には言いづらい(2014のものに追記)

僕は勝新太郎が好きなのだが、とくにこれは好きだ。「不知火検校」。

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どうして好きかというと、「盲人を不気味だと思う健常者の気持ち」が描かれていたからだ。

僕は佐村河内守の一件も好きなんだけど、あの騒ぎの頃、な~んとなく連想したので、この映画を借りて観た。(いまAmazonでは高騰してるが、大きめのTSUTAYAならレンタルできる)

これ、井上ひさしの戯曲「薮原検校」(1971)とそっくりな話なんだよね。まあ完全互換といってよい。
ちなみにこの映画は1960らしい。
そして、「不知火検校」は歌舞伎の演目にもなっている。最近も幸四郎がやったらしい。やっぱ幸四郎すごいな。
もともとは三世河竹新七の「薮原検校」が下敷きというから、そっくりなのも無理もない。

ただし、井上ひさしはあとがきか何かで「薮原検校は初代は知っておりましたが二代がいるとは知りませんでした、と研究者に言われて慌てた」と書いているらしい。
これはその学者先生が不勉強すぎるのか、当てこすりなのか、井上のホラなのか。そもそも井上の「薮原」の前に勝新の「不知火」が大ヒットしてるんだしな。

   *  *  *

この映画、どこまで考証してるか知らんが、座頭の所作など非常に面白い。

いま僕は身近に障碍者の知り合いがいないので、そういった所作になじみがない。なので、こうして映像で見せられるとぎょっとしたり、感心したりする。勝新がこれを演じた頃は、按摩さんといえば盲人だったり、門付けの人がいたりしたのだろうか。

「耳の聞こえないクラシック巨匠詐欺」が成立してしまった背景には、僕らは障碍者を隔離してしまい、無用な先入見を持たされてしまった、ということがあろう。
障碍者全員が善人なわけないし、乙武くんみたいに明るいわけでもない(乙武くんだって常時明るいわけじゃないし……と思っていたら2016には性豪としてキャラ転換して驚いた)。

   *  *  *

ダイバーシティというと、多様性を受け容れましょう、とか意識高い感じのお題目をつい唱えてしまうが、そういうことかなぁと時々不審に思う。そんなことより、障害者や外国人や、その他いろんな人と知り合いになりてえな、と思う。

以前、公園で野良猫を鑑賞?する仲間に、知恵遅れの女性がいた。猫の一匹一匹をよく見分けて、喧嘩して怪我してるだの、体調が悪そうだだの、よく観察していたのに感心した。最近は見かけないのだが、引っ越しでもしたのだろうか。

平日昼間の公園は、幼稚園児が集団で来てたり、老人が日向ぼっこしたりしてる以外に、障害者とボランティアが連れだって散歩していたり、いろんな人を見かける。それを見ている僕も含めて「弱者」が多いのが平日昼間の公園だ。そして、お互いを少しずつ「不気味」だと思っているのが面白い。だがそういう先入見は、挨拶やちょっと言葉を交わすだけでもだいぶ変わる。

   *  *  *

「巨匠詐欺」の場合、実は耳が聞こえてたんじゃん、金返せ、という人が出てきたら面白い。そっちの方がより真実に近いからだ。
僕は交響曲なんて、どうでもいい。

(※2014に書いたFacebook投稿に加筆して転載した)