新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

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2014秋に見た映画のメモ。「超高速!参勤交代」「続300」「ロボコップ」「ゴジラ」

☆「超高速!参勤交代
英語タイトルは「サムライハッスル」、これじゃなんだかわかんないね。
松竹作品で、東映東宝大映などの伝統とまったく関係ない感じのニューウェーブ民主的時代劇だが、案外と面白かった。
佐々木蔵之介の貧乏大名はなかなか頑張っていた。家臣たちも、あんまり民主的すぎるかなとは思うが小藩の悲哀と結束は伝わってきた。
あとは伊原剛志の抜け忍、陣内孝則の老中、深田恭子の宿場女郎等々、お約束の演技で意外感はない。けど深キョン可愛かった。可愛いとか声が良いとか「もっとこの役者を見ていたい」と思わせるのはそれだけで才能だと思います。大根だったとしても許す。
石橋蓮司、六角精児、西村雅彦抔など脇はしっかりしている。が、将軍吉宗はちょっとどうかな?
この映画、肝心なとこで戦後民主主義的価値観を出すのが玉に瑕だけど、総じて良い感じだった。大名、といっても貧しい支藩の内側を描こうとしたのは良かったし、貧乏な殿様と下々との距離感(が意外にないこと)も良かった。あんな風に馴れ馴れしくはなかったろうが、総じて武家は質素でみみっちい、という感じがよく出てた。考証先行の今風時代劇であった。
公儀隠密が「死して屍拾う者なし」と言うのは笑うところなんだろうか?「拾うのは骨、屍は大きすぎて拾えない」とまで言うべきか。
製作は近畿各地と山形のフィルムコミッション、各地のお寺、二条城などをたんと使ってる。
冒頭と終いのナレーションは神戸浩、良かった。なお劇用馬にシャコーグレイドがクレジットされてて泣けた。彼の馬券は買わなかったけど。

☆「300 Rise of an Empire」
日本の時代劇映画はリアリティがイマイチだなー、と思ったが、これを見て考えを改めた。どっちもどっちであろうか。と言うか、こんなにお金かけたのにこんなんか!という驚きがあった。
これは続編で、正編はスパルタの半裸男が主人公だったが、今作はアテナイテミストクレスが主人公、敵役はペルシア海軍を率いる女丈夫アルテミシア、物語は前作の時間軸とダブってて、中盤でテルモピュライでレオニダスたちが全滅したと知らせが入る。この辺、程よく前作のことを忘れてるので混乱しなかった。
しかし、なんだかよくわからない映画だった。殺陣はものすごいが荒唐無稽、海戦は駆け引きのない力押しのみ、いつの間にかギリシャが勝ってて、スパルタの援軍は役に立ったのか不明。何だかわからんうちに大団円。
女丈夫は色気サービスも満点だったが殺陣は下手だった。ラーメン二郎のように脂っ気たっぷりで、喰った後は何も残らないくどい映画である。

これらを見たのは英国航空、初めて乗った。この先乗るかわからんのでじっくり味わった。
機材は777-300でシートは3-3-3、ピッチは狭い。室温は低く足下が冷えた。食前にはウイスキーも選べたが、食中は赤白のワインのみ(たしかビールがなかった!)。チキン弁当か肉団子とペンネを選べるが、どっちもどっち。デザートはタルトで生クリームとママレードがついていた。紅茶が先に来る。ティーバッグの味だった。
いろいろ手狭なキャビンだが、トイレは広い車椅子用がある。SQでも見たことない。これは感心した。

☆「ロボコップ」(2014)
バーホーベン版1987が大好きなので、敬意を欠いたリメイクだったら許さんぞと思って見たら、なかなか良かった! 十分なリスペクト。
変更点は、アン・ルイス(元はナンシー・アレンが好演)が男の同僚になっている、マーフィーは家族を喪っていない、警官たちから追われる四面楚歌にはならない。(と書いてて思ったのだが、これだけ違えばもう全然違う話だ)
最大の変更というか今回の味噌は、巨悪オムニ社がアップル社をモデルにしていたことだろう。あのCEOの強引さやプレゼン命なとこはジョブズそっくりだし、工場はデトロイトではなく中国にあるのだ。原作ではデトロイト市が破綻したから警察機構を民営化して地元巨大企業オムニ社が受注、ロボコップも警察の合理化として導入した、と記憶している(記憶曖昧)。
今作は長引く対テロ戦争と、議会を企業とテレビが操っている、という陰謀論が主題になっている。
ドラマとしての強度は、マーフィーと妻子の断絶がさほど深くないなどかなりテンションを欠くが、これはこれでなかなか、と思った。ゲイリー・オールドマンがすっかり良い人、それも頼りない良い人になってたのがびっくり。博士なのに慌てん坊であった。
あと影響力の強い右翼ニュースキャスターにサミュエルLジャクソンだけど、これは悪趣味なバーホーベン風味への徹底したリスペクトなのだがやっぱり変に感じた。メイクも変だった(フランケンシュタインみたいだった)。
……僕の書きよう、全然褒めてないな。
音楽、あの勇壮なロボコップマーチはたった2回しか流れないが、とっても大切に使われていた。今作の製作陣が原作をとことん尊敬してることがよく伝わってきた。あと、劇終で流れるのはクラッシュ。パンクな左翼ムービーであることを強く宣言してる。巨大ロボとの取っ組み合いもストップモーションアニメ風味で、そっちへの敬意も十分。色々くやしいけど結局楽しめた。

☆「GODZILLA」(2014)
初代米国ゴジラ1998はひどいもんだった。事情があってわざわざグアムまで出かけて見たのでガッカリ感は半端なかった。
で、二代目はどうか。やっと姿が見えた時、そのあまりの不細工さに驚いた。太く色気のない脚、ずん胴、扁平な頭。あんまりなブスである。子供の落書きが実体化したようだ(それは別の怪獣だ!)。
しかし筋は良かった。原発事故を巡る陰謀論で始まり、軍隊映画となって空母の内側を見せる、この辺僕大好物だ。ジュリエット・ビノシュを久々に見て嬉しかった。好きな女優。
しかし彼女はすぐ退場し、渡辺謙は終始クチあんぐりでまったく状況に関与できない。全体にこの作品では役者がみな無力だ。
そしてゴジラと、対するつがいの放射能怪獣たち。なんかこの辺の筋はゴジラというより平成ガメラ対ギャオスでは?? と思っていたら最後にゴジラが街を救って喝采を浴び完全にガメラだ。製作者、買う作品を間違えてるぞ。
核弾頭の伏線は恐ろしく投げやりな回収でこれも驚いた。たしかメガトン級の爆弾なのに街から5分離れた海上で無事に爆発、ってひどすぎないか。爆弾エキスパートの主人公も渡辺謙と同じくらい無力で、見ている僕も渡辺同様クチあんぐりである。
思うに、ロボコップと違ってこちらは原作の権利者が買い手を畏怖させるといったことが皆無だったのでは? 東宝にはゴジラを作った人なんてもう一人も残ってない、ただの版権管理会社だろう? それじゃ原作の魂を買い手に感じさせるなんてできないよね。
おそらく脚本は二転三転し、ついに今のようなガメラ対ギャオスになったのだろう。脚本を直し直しした断片が核弾頭だったり色々不具合として残ったのかしら。


BAは日本語映画は少なくて残念だが、音楽が良い。イギリスの新旧良い音楽をたっぷり用意している。ビリー・ブラッグのデビュー作があったのは驚いた。僕はピーターガブリエル3を聴いてた。音質はイマイチだが音量はたっぷり大きい。アナウンスメントも大きい。
それにしても、エコノミーをワールドトラベラーとか言い直すのはやめてほしい。わかりにくい。座席の収納小さいのでゴミが出たら苦労する。前後ピッチも狭いし。イギリス人は比較的大柄なのに、よくこんな狭い座席で世界中に行くもんだ。
キャビンクルーは割と感じが良い。左列担当の男性スチュアードさんはニコニコしながらサーブしてくれ、仕事が楽しそうで彼と接すると嬉しくなる。女性は日本人クルーも多い。おばさんだけど上手い。
座席リクライニングや振り出しモニターを有無を言わせず直すのも良い。安全確保は彼らの仕事だから日系のように下手に出て頼まなくてもいいのだ。早坂茂三もBAならなんの問題にもされず、さっさと直されて終わり、だったろう。ちょっと話が古くてわからん人がいるかな。