新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

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シン・ゴジラの続編はこうだ!──押井守『ひとまず、信じない』


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書影はAmazonより

 一昨年の本、語り下ろしをゴーストライターがまとめたものだろう。はじめはあまり面白くない。説教臭いし、話の焦点がなかなか合わない。語り下ろしの悪いとこだろう。監督、あまりノッてないようだ…そうささやくわけだ、押井のゴーストが。

【目次】
序論――虚構の中に真実を宿らせる
第1章 幸福論――幻想は人を不幸にする
第2章 仕事論――説得する努力を怠ってはいけない
第3章 ニセモノ論――つまり、初めからフェイクなのだ
第4章 政治論――覚悟を決めない政治家たち
第5章 人間論――人間以上に面白いものがあるはずがない
第6章 映画論――「良い夢を見た」でもいいじゃないか

  俄然面白くなるのは3章以降。4章は少しネトウヨっぽく読めてしまうので、旧型リベラルの人はこの辺で本を放り投げてしまうかもしれない。

 5章・6章は白眉。とくに6章の「シン・ゴジラ」論とリドリー・スコット論は本当に面白い。ここでブツッと終わってしまうのがまるで押井映画のようだ。

 

関係ないが「シン・ゴジラ」続編を企画してみた

 押井は、初代ゴジラは原爆ではなく英霊の暗喩である、とする。そしてシン・ゴジラは暴走する原子力発電所である。初代は科学者が立ち向かい、シン・では公務員や若手政治家がゴジラと戦った。

 では次のゴジラは何で、誰が戦うのか?

 原子力発電所の災厄が忘れられつつある今、みんなが一番怖いのは「不景気」ではなかろうか。とすると、次のゴジラは不景気の化身として日本を襲うのだ。

 戦うのは誰か。公務員・公僕であろう。不景気なゴジラが上陸する、不景気な地方自治体の町議会議員とか青年会議所会頭とか商店会長だ。

 西伊豆のさびれた温泉町が破綻寸前である、何とかして観光客を呼び戻したいが施設は老朽化、旅館民宿は廃業、後継者難と良いとこなし。ひとり気を吐く若手の町議がゴジラの誘致を考え出す。東京駅前の凍結ゴジラは今や日本を代表する観光スポットである(いちおうシン・ゴジラの続編なので)。わが町にもゴジラを! しかし誰に陳情すればいいのか。東京都庁で小池知事にバカにされたり、西にガメラの誘致に成功した自治体があると聞いて視察団を派遣したり、ゴジラを呼べるという霊能者に騙され(町の財産を担保に借金する)、巨大広告代理店がからんでき…。するうちになんでか、駿河湾の海底に巨大な動くものの影が魚探に! ゴジラ西伊豆に上陸するのか!?

 いかん、《僕はかつて熱海に怪獣が現れるという馬鹿映画を作ったことがあるが》という押井の言葉に引き摺られてしまった。しかもゴジラが出てこない。ダメだこりゃ。

 じゃあ映像的に不可能っぽい企画を立てて、誰かに挑戦してもらおう。

 時は慶応四年、江戸へ進軍せんとする官軍と、迎え撃つか江戸を焦土にするかはたまた降参かで悩む幕府陸軍総裁勝海舟。勝の密使として幕臣山岡鉄舟が征夷大総督府参謀西郷隆盛のもとへ向かう途中、相模湾から姿を現すゴジラ! ゴジラはもちろん江戸をめざす。迎え撃つ官幕連合軍! 西郷、勝、山岡、大村益次郎桐野利秋江藤新平新選組彰義隊。アームストロング砲は火を噴くのか? 

 以上、浪士慶応報國故事というか、ただでさえ金のかかる時代劇・合戦シーン・怪獣ものをいっぺんに見せてください、という企画でした。

《あらゆる知識を総動員して、虚構が虚構として成立する世界を緻密に再構成するしかない》という押井の言葉が重たくのしかかってくるのである。ああ俺、才能ないわ。