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新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

リストラなう!その9 静けさの中に不穏な胎動

 こんばんわ。「年収を公表しようと思ってる」と書いたら、多くの方からコメントをいただきました。ありがとう。
「やめとけ」と言ってくれる方もいるけれど、僕はこのブログを始めてから「やめとけ」というアドバイスをもらうと必ず「やって」しまうという悪い癖がついてしまったので、ごめんなさい、今回もアドバイスと逆のことをしてしまうでしょう。けどまだ集計してないからね、悪いけどしばらく待ってね。
 一つわかったのは、やっぱりこの業界の年収というのは通常隠されてて、知りたいと思ってる人が多いということ。これは晒す価値がある。ジャーナリズムだぜ!ってわけじゃないけど、隠れているものを白日の下に晒すこと、それが面白いんだってこと。シビれるのう(「仁義なき戦い」の広能風に)。


■山場は週末?
 今日は仕事が忙しくて情報収集(笑)ができなかった。なので新しい展開はありません。残念!
 しかし、じっとしていても感じることはある。僕のいるセクションでは応募した人は多くないようだ。これは訊かなくてもわかる。応募した人はなんとなくわかるものだ。というか、周囲の人が応募した人を峻別してしまうのでわかってしまう。たとえば上司は、応募した人にはあんまり話しかけなくなる。また、来月再来月の予定を入れようとする人は辞めないよね。
 その伝で、僕は「ここでは辞める人は少ないな」と思うのだ。
 一見、平穏無事な空気が流れている。明日も明後日も再来月も、今日と同じ日が続きそうな気がしてる。緊張感もストレスもない。
 だが、事態はそんなのんびりを許さない。募集の七日間のうち今日で三日が過ぎた。今週のあと二日のうちに動きがあるはずだ。会社は何らかのアクションを起こして、週明けの六日目七日目で応募者を増やそうとするだろう。その検討のために募集期間に土日を入れたのだと思う。
 土日が挟まるのはけっこう効果的だと思う。もしかしてリストラのノウハウ集にあるのかもしれない。明日か明後日、たとえば会社が「もうすぐ五十人枠が埋まりますよ」と言ったら、土日の間に家族会議を開く社員は絶対いる。あるいは「新しい基本給はこれだけ下がりますよ」という見通しの発表。あるいは新基本給では従来の住宅ローンを抱えていると破綻する……。いくらでも考えられる。
 恫喝や圧迫は使えない。というか、やっても効果はない。それは第二次面談ではっきりしたと思う。今出尽くしてる情報では、残留の意思を固めた人を翻させることはできない。嫌がる馬を叩いても水は飲んでくれない。新しい情報を与えて、自分から水を飲みにいかせることだ。
 なるべく苦渋の選択をする人が少ないことを祈る。せっかくの好条件なんだから、気持ちよく卒業したい。母校には元気に残り続けてほしい。


■リストラとは人斬りのみにあらず
 首尾良く五十名集まったとしても、もし五十名に達しなかったとしても、六月一日には相当数の人がこの会社から姿を消しているはずだ。そのとき残された側が直面するのは「どう仕事をすべきなのか」だ。
「辞めていくお前が口を挟むことじゃないよ」と言う方がいるかもしれない。だがそんなことはない。僕がやってきたささやかな仕事も誰かに引き継いでもらわなきゃな。あるいは、もう継続してやらないという決定をしてほしい。退職する前に外の人に挨拶とか引き継ぎとかごめんなさいとかしなきゃいけないから。また、使えるお金も少なくなるから必然的に「やっていい業務」と「やめるべき業務」を仕分けしなきゃいけなくなるはずだ。去年も出張を減らしたりしたが今年はもっと大胆に削減を求められてるはずだ。
 ところが、僕が身を置くセクションでは人員の再配置はおろか、来期(六月から新しい会計年度になる)の体制が構想されている気配がない。「誰が、何人が早期退職に応募するかわからない状況では、新体制など考えても仕方がない」ということなのかもしれないが。
 そして、応募を表明した者があまり見あたらないセクションでは、残留する者が多い=引き継ぎしなくてよい=業務再構築もそんなに大したことしなくていんじゃね?というムードが漂っているのだ。
 大丈夫か? リストラとはリストラクチャリング、再構築。従業員を減らすだけではないよ。業務を見直して低コスト化・効率化・活性化させなければ。その作業にとりかかってる節がまったくないのはいかがなものか。
 これは僕の職場だけではないらしい。他のセクション、とくにいくつもの案件が常時走っているセクションでは業務の見直しが焦眉の急になっているにもかかわらず、経営陣から「急いで見直せ」との指令が飛んでこないので、現場がイライラしながら指示を待っているらしい。あるいは、待っていては会社の業務が崩壊するので経営陣に「早く!なんとかいったらどうだ!」と怒鳴り込まんばかりの勢いだとか。
 これって活性化してるってことか? いや爆発寸前ってやつだな。
 せっかく辞める=会社の再建案に賛同する選択をしたのに、会社が再建できないなんてことになったら悲しい。残念すぎる。具体的な業務の見直しは、僕たち応募者が確定する来週まで待ってもいいかもしれないが、一刻も早く再構築のための構想を固めて、発表すべきだ。
 もし応募者が所期の人数まで集まってないとしたら、それはこうした会社の態度にも原因があると思う。会社が明らかにしたのは、きわめて単純化して言えば「早期退職を優遇で募る。残る者は給与が減る」ということだけで、仕事がどうなるか、会社がこれからどこを目指すのか、僕たち社員は何の旗の下に集まるべきなのか、何も言ってない。残念なことに角川歴彦さんとはだいぶん違う。すみません、こんなとこに他社の人の名前を出したりして。不適当ですね。でもファンなもので。
 このリストラの発端である社員総会で社長が明らかにしたのは、「来期は売り上げ○○○億円が必達です」という数字だけだ。どうやってそれを達成するかは言ってない。ビジョンはないけど必達の売上目標だけはある。これは辛い。頭を抱えるね。


■もっと混乱すれば
 もう一つ、僕が残念に思うのは、こうした切迫した状況認識はまだ社内の一部にしかないということだ。営業・管理セクションの間でもかなり温度差があるうえ、編集部とはまたさらに違う。編集部では今回の早期退職の対象者は五十歳以上とごく一部なため、四十代以下は「これも自分たちの問題だ」と思えないようなのだ。
 たしかに編集部は忙しい。次々に締切は来るし、ゲラを読むのは時間がかかるし、昔と違ってやらなきゃならないことは増えてるし。だけど、こんなときだから、目の前の仕事以外のことにも目を向けてほしい、と思う。会社がどうなるか、なんてことを喋るのを嫌う潔癖な人もいるし、その気持ちもわかるけど、編集者というのは面白いものに敏感に反応してナンボの商売でしょ? 今俺たちが直面してるリストラっていうのは、日本のメジャー出版社では最初のケースなんだぜ? 業界も世間も注目してる(よね?)し、もっと自分たちも考えたり議論したりしていいんじゃない? ここから新しい企画が出てこないとも限らないよ。
 いま会社に足らないのは、さらなる混乱だ。もっともっと混乱して、秩序が崩壊する直前になれば、きっと僕たちが使わずにいた潜在能力が立ちあがってくるんじゃないか、と思うんだ。
 世間は「幕末だ!」って言ってるけど、社内も幕末だよ。求む、志士。(つづく)