新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

ドキュメンタリー『ウォルマート——激安の代償』(東京MXテレビ)その他

町山智浩がナビゲートするドキュメンタリー映画の番組が始まった。昨日はその第1回。題目は『ウォルマート——激安の代償』その前半。1時間の番組なので、映画は半分でぶったぎって、適宜オセロ松嶋と町山のトークをはさむ進行らしい。MXテレビの新番組はオセロの松嶋さんと一緒 - 映画評論家町山智浩アメリカ日記
 映画のエッセンスは昨年から町山さんの著作や「ストリーム」Podcastなどで知っていたけれど、実際に目にすると印象はより激しく迫ってくる。前半では(1)ウォルマートが進出した地域では個人経営の店舗が全部潰れてしまうこと、(2)ウォルマートで雇用されている労働者の多くが、最低賃金を下回る給与で働いている。ウォルマートが用意した医療保険は高くて加入できない、最低賃金以下なので生活保護を受けているなどで、全米一の大企業で働いていながら政府の補助なしでは生きられない貧困層を作っている。
 来週オンエアの後半では、途上国での賃金圧縮の模様などが取り上げられるようだ。
 ショックだったのは、労働市場流動性が非常に高いアメリカでも、労働者は誰もが解雇されることを怖れている、ということだ。これは池田信夫城繁幸赤木智弘らによる議論への、嫌な、辛い反証になる。http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/5e942b8aab35f4d953f67c3cd6b4f7e3 いずれも僕が好きな物書きたちだ。だが、極限まで効率を追求したウォルマートの労務管理・経営は、池田らの主張の延長線上にあるわけで、これが実現すると派遣労働者も正社員も全員が明日の首切りにおびえ、低賃金で奉仕労働をして生きていくことになる。なにしろ論理的に効率を追い求めると、ウォルマート以外の解答は落第だ。世界レベルの競争力を持っているビジネスモデルなのだから。ともあれ、資本主義・自由主義の荒々しさを体現したウォルマートによってアメリカがどうなったか、これは一見の価値がある。効率を極めると、自分が生きて食べて糞すること自体が無駄に思える、そんな非人間的なことが起きている。


■その池田信夫だが、彼は冷血でもなんでもなくて、読む者を感動させるものをさらりと書く。東洋大教授の高橋洋一書類送検された件では、こう書いていた。http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/d65cc65ed6bf43988fd922f6cadb536b

こういう事件は高橋氏の言論の内容とは無関係なので、「アゴラ」では引き続き、彼に発言の場を提供する。

 同じ日、前に高橋洋一著作の感想を話し合ったことがある知り合いが、「これで彼は終わりだ。もう本も店頭から消える。読む価値はない」と言っていた。僕は激しい違和感を覚えたけど、うまく言葉にできなかった。「彼の罪と、彼の仕事は関係あるの? 別じゃないの?」と言いたかったけど、うまく伝わらなかった。池田信夫はそれを1行でビシッと文字にしてくれた。僕はうれしかった。


■ニュースを聞いて(僕はやはりテレビは見ない。慣れない)よくわからないことが多い。たとえば、小沢一郎の秘書が政治資金規正法に触れて逮捕された件で、小沢が民主党代表を辞任するかどうかの議論。報道関係者で政治に詳しい人であればあるほど、小沢の辞任は「民意しだい」と観測する。そうなのか? 論理ではなく、民意によって責任の取り方が変わってくるのか? 僕にはよくわからない。法の精神と、選挙で選ばれた立法府の人である責任と、秘書の罪の軽重と、監督責任…などで決まるのではなく、「民意」だという。この場合の「民意」は次の選挙で勝てるかどうか、なのだろうか。それとも民間機関が調べている支持率の多寡? 選挙結果は公的なものだけど、支持率なんてなんの権威もないよね。各社で数値は違うし。それを秤にかけて責任を取るのだろうか、政治家は。法の精神はどこへ?
 小沢が辞めるべきであれば、それは小沢自身の責任によってであって、「支持がなくなったから」ではないはずだ。であれば、支持率さえ高ければ(人気さえあれば)どんな罪を犯した者でも公的地位に居座ってかまわないことになってしまう。
 それは支持率が低いことで有名な麻生太郎首相の進退にも同じことがいえる。支持率が低いから辞任せよ? まったく論理がわからない。政策がダメだから、首相として仕事ができないから辞めろというならわかる。漢字が読めないから、人気がなくなってきたから辞めろというのはどうなんだ? 漢字を読めなくてもつとまる一国の宰相というのもナニだが。
 民意ってそんなにエライものなのか? 空気に刃向かうのはいけないことなのか?


■最後に「未公開映画を見るテレビ」関連のアフィを貼っておきます。
  (この次のオンエアだそうです) (その映画の書籍版です)