新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

Amazon詐欺? その後…品物が送られてきた、が

ご無沙汰してしまいました。Amazon詐欺業者に引っかかった話、続報です。

結論から云うと、なんと「品物が送られてきました」。約1週間遅れで。

しかしそれは「コピー商品」「偽物」でした。

 

1.「ねこじゃすり」コピー版を詳しく見る

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■左は本物(正規品)、右がNewzeroInから送られてきた偽物。箱の色を似せているが安っぽい。また商標がない。イラストや文字はコピーではなく新たに組んでいる。

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■こちらは偽物の箱。ツルツルした銀色です。箱がひしゃげてるのはご愛敬。

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■こちらは本物。マットなシルバーグレイで、紙質も良い。ワタオカさんの商標?が右側にある。

 

うーん、品物が届いたってことは「取り込み詐欺」ではなかったということになるのかな? でも[正規品]と謳って偽物を送ってくるんだから、やっぱ詐欺だよなあ。

では偽物のディテールを見ていきましょうか。

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■箱に収まってるのを見るとそっくりなんだが(左が偽物、右が本物)

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■本物(左)には、商標とマスコットの刻印があるが、偽物(右)にはない。

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■本物(左)の刻み目には極小の突起があり、掻き心地が良い。偽物(右)は単純な射出成形なのか刻み目が鈍く浅く、突起はほとんどない。これでは猫は喜ばないのでは?

 

コピー商品は、本物から型を取って単純な射出成形?でクローンを作ったもののようです。全体の形や重量は本物に近い(やや長さが短いが、重量はどちらも39g)。

付属の説明書も見てみましょう。

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■上が本物、マットな紙にグレイで印刷。下は偽物、薄くてツルツルの光沢紙にスミ100%で印刷。二つ折りになっており、下半分が表紙になる。似せているんだけど、全然違う。

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■画像をひっくり返してみました。文言が読めますか? 上の偽物では「グルーシング」になっています。「ミ」と「シ」が混同されるのは中華圏ではよくありますね。

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■説明書裏面。文言を似せたり、似たイラストを書き起こしてるんですが、やはり違っています。「ねこのぐらし」とか、「、」が行頭に来てるとか、イラストではじゃすりの刻み目が直線になってる(本物は単純な直線ではない)とか。詰めが甘いというか、投げやりな偽造というか。中華民族、仕事雑すぎ。

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■箱の裏面のバーコードにはしっかり「Made in China」と。猫じゃすり正規品は国産です。

というわけで、よくわからない偽物が届いたしだいです。

 

2.取り込み詐欺ではないかもしれないが、やはり詐欺

品物は遅れたけど届きました。だから「発送しない」「取り込み詐欺」ではなかった、ということでしょうか。

しかし[正規品]と謳って偽物を送ってよこすんだから、やはり「詐欺」でしょう。コピー商品の販売は犯罪です。それを購入するのもやはり犯罪。Amazonに返金を要求したのは結果的に間違ってなかったということか。

Amazon「キャンセルした品物が届いた、しかも[正規品]じゃなかったんだけど、どうしよう?」と訊ねてみたのですが、「もう返金は済んでいるからAmazonは感知しない。販売業者に直接メールしてくれ」と言われました。

実はNewzeroInとは何度かメールでやり取りしています。

最初は、配達予定日の10/21に受け取れなかった時に。

「10/22に再配達が不可能ならば、10/23の午前中に再配達してください。」と送りました。SMSで送られてきた不在配達通知?がフィッシングサイトだったので、Amazon経由でメールしたのです。

(しかしこれは無意味でしたね。販売業者は発送したら後は知らん顔というか何もできない。配送業者の問題になるからです)

それに対するNewzeroInの返事。

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あれあれ? 遅れることは決まってたの? それを今言ってくるの? じゃあ10/21に届いたフィッシングSMSは何だったの?

ほんとに発送したのか、それが僕のところに来るのか、それすら信じられなかったので返金手続きを取ったのは前回エントリに書いた通りです。Amazonは返金に応じました。

それら手続きが済んで、もう終わったな、と思ってたら上記の偽物が届いたしだいです。

偽物は欲しくないし、どうすればいいかNewzeroInに再びメールしてみました。

「キャンセルし、返金も済んだのですが、商品が届いてしまいました。ただし注文した商品とは違うものでした。どうすればいいですか?」

すると、こんな殊勝な返事が。

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日本語が少し変なのはご愛敬。文面は丁寧だし、誠意もある(ように見えてしまう!敬語ってすごい)。

そこで、本エントリに載せたと同じ写真を送って、「「不良品」が届いたのではなく、「コピー商品」「偽物」が届いたのです。私が注文したのは[正規品]ですので、注文と違う商品が届いたことになります。コピー商品の販売は犯罪です」とメールしました。

それへの返事。

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あいかわらず殊勝ですが……メールの文面なんてどんなことでも書けますよね。コピペでいいんだし。別に本心から謝ることもないし、詐欺をやめるって言ってるわけでもない。サプライヤーが悪いんだ、と逃げ口上を言ってるだけです。

3.詐欺業者「NewzeroIn」は消えたけれど

いまAmazonで「猫じゃすり」を検索すると、値段は3800円前後の正規品の価格で、「Amazon.co.jpが発送します」となった商品ページが出てきます。

僕が買ったときは、価格2800円くらいのNewzeroIn発送のものが最安として最初に表示されていました。それがなくなったのです。

猫じゃすりは今もAmazon.co.jp発送以外にも、多くのマーケットプレイス業者が扱っています。

しかしその中に「NewzeroIn」の名前はもうありません。

この偽物ねこじゃすりの販売をやめたのでしょうか?

NewzeroInという業者自体が店を閉めたのか? いや履歴から辿るとまだNewzeroInは存在しているようです。はたして、ここに注文して正規品がちゃんと送られてくるのか?

また謎の「税関を通れませんでした」とは何だったのか。フィッシングサイトを送ってくる不在配達通知は何だったのか。

   *  *  *

僕の手元には、怪しいパッケージに入った、刻み目のにぶいナマクラな「ねこじゃすり」もどきが残りました。これ、どうしよう? 猫に使っても喜ばれるかわからないし、材質が猫に無害とかって保証もない。

コピー商品、偽ブランド商品は犯罪です。売るのもいけないし、買って使うのもいけない、と僕は思う。

なぜなら、最初に作った人への敬意がない、最初に作った人のアイデアや努力を盗むことだからです。それは人としてダメな、誇りのない、悲しむべき所業です。

僕は中国や中国人をことさら嫌っているわけではありません。日本を観光で訪れる彼ら、世界の観光地で行き合う彼らは、最近どんどん洗練され、素敵になってきた。その変化のスピードは尊敬に値します。

しかし、一方でやはりこうした犯罪、中国人の誇りをみずから捨てる、なさけない行為が行われている。これはダメでしょう。

また、Amazonが偽物の販売に手を貸している、少なくとも見過ごしている、責任を取れる体制にない、ということも問題として残ります。知的所有権を大事にするはずの米国の企業が、知的所有権をないがしろにして荒稼ぎしている。これじゃ自分たちの仕事にプライドが持てないんじゃないですか?

この変な偽物は、どっか届けるべき監督官庁があるのかな? 捨てちゃっていいんだろうか。どうあっても猫には使いたくないよな。偽物で猫を撫でる、それ自体が犯罪に加担してるような気がして。猫に悪いよね。

Amazonが中国の詐欺業者に加担している実例(恥)【10/25追記アリ】

【追記】10/25になって《Amazonマーケットプレイス保証》が受けられるようになりました。返金のボタンがアクティブになり、返金処理が可能になったのです。以下の本文にも追記を注記します。

 

先日、Amazonで「猫じゃすり」を注文しました。呉市のヤスリ製造業者さんが開発した、猫を撫でる道具です。大人気でバックオーダー、順番待ちになっている。

ところがAmazonで[正規品]と書いて正価より1000円安い、という商品が出ていたのです。喜びいさんでポチりました。

 

しかしこれが詐欺サイト、いやいや、天下のAmazonに堂々と出店している詐欺業者だったのです。

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Amazonの商品ページ。右端に業者名《Newzeroin》が小さく書かれているが…

 1.出品者はメーカー「ワタオカ」ではない。中国企業

出品者名が《ワタオカ》となっていますが、ウソです。
実際は《販売: NewzeroIn》です。

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業者《NewzeroIn》の連絡先。中国・海南市か?

 

この業者《NewzeroIn》の《出品者プロフィールを表示》を見てみるとわかりますが、最悪です。
《商品が届かない》というフィードバックがぞろぞろついているのです。

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しかし、これら業者の悪評紛々は商品の注文ページからは気づきませんから、詐欺と知らずに《購入》ボタンを押してしまうのです!

なお、私は本物の「猫じゃすり」を1本所有してますが、良いものです。呉市の「ワタオカ」さんは良いメーカーです。そこのところお間違えなきよう。悪いのは詐欺業者「NewzeroIn」です。

 

2.配達は来ない。フィッシングサイトURLを送ってくる(笑)

要するに、私もこの詐欺に引っかかりました。

10/9に購入ボタンを推し、《配送業者 中国邮政》が《10/21》に配送する、ということになりました。

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その10/21、私は外出していたのですが、SMSで、

お客様宛にお荷物のお届けにあがりましたが不在の為持ち帰りました。 下記よりご確認ください。h_ttp://b.b456b.top 

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とのメッセージが届きました(転記に当たりURLに_を入れています)。
しかし、このURLはフィッシングサイトとして登録されているものなので、Chromesafariではアクセスできません。

そしてマンションのインターホン録画で訪問者を確認すると、この日10/21はうちへの訪問者はありませんでした。配送業者なんて来ていないのです!

 

3.Amazonには返金リクエストできない追記あり

Amazonの《注文の詳細》ページで《注文に関する問題》を選び、《荷物が届いていません》をクリックしても、《返金をリクエストできません》と言われます。

申し訳ありませんが、この注文は「Amazonマーケットプレイス保証」での返金の対象となりません。最大配達予定日の後3日間まで、またはトラッキングステータスが配達済みとマークされるまでお待ちください。 注: また、最初に出品者に問い合わせて、応答を待つか、お客様が返金をリクエストする対象となるまでに48時間待つようお願いいたします。

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なんと、詐欺に遭ったユーザにAmazonは返金をリクエストさせない、注文をキャンセルさせない仕様なのです。

【10/25追記】翌日、返金リクエストが可能になりました。どうも、10/21の予定日から中3日の経過が必要だったようです。10/24を「3日経ったのに」と思っていましたが、数え方が違っていたようです。また、不安だったせいもありました。

 

 

10/23時点、詐欺業者は、配送状況を《明日までにお届け予定》と書き換えました。すると、配達予定日を過ぎたことにならないので、ユーザーはAmazonにキャンセル・返金させることができない、というわけです。配達予定日を何度も変更すれば、そのつどキャンセルできない期間が延びる、ということだと推測されます。
Amazonのシステムの穴を突いた、巧妙な詐欺です。

【10/25追記】10/21の配送予定日から中3日経過し、マーケットプレイス保証が可能になりました。上で推測したような「未来永劫返金処理はさせない」といったことはないようです。ご心配おかけしました。

 

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Amazonが用意しているのは、《注文に関する問題》というページで、業者宛にクレームのメールを送るというシステムです。業者はクレームの2日後にメールで返事を寄越してきます。

本当に申し訳ありませんが、この前に発送した荷物が税関の検査を通れなかったため、戻されました。ご注文品は2019年10月15日に既にもう一度発送しましたので、ご迷惑かけまして、誠に申し訳ございません。

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もうおわかりのように、これもウソです。業者は私に《荷物のお届けにあがりましたが不在の為持ち帰りました》とSMSを送ってきました。矛盾してますね?
「配達に来た」というのはウソですから、「通関できなかった」というのもウソなのです。

このように、いつ返金手続きが可能になるかわからないので、諦めて泣き寝入りするユーザが大半なのではないでしょうか

 

4.「NewzeroIn」は詐欺業者。結果的に天下のAmazonが詐欺の片棒を

このような業者を野放しにしているAmazonの責任は大きいです。

そもそもユーザの評価が「否定的 81%」と最悪の業者を、放置しているのは大問題でしょう。金額が小さいからかまわないのか?
すぐに全容を調べて、全被害者に補償し、この業者の責任を明らかにすべきです。そしてAmazonが詐欺に加担してしまったことを公にして謝罪すべきでしょう。

私もこれからキャンセル・返金手続きを取りたいのですが、Amazonの仕様のため現在は《返金をリクエストできません》。さあ、どうなるのでしょうか。

 【10/25追記】

配達予定日から中3日経ち、無事に返金リクエストは受け付けられました。この点はAmazon、評価できると思います。というか、ホッとしました。

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ただし、ユーザが詐欺業者でうっかり買ってしまい、時間を無駄にする、いらぬストレスを受ける、といった弊害はやはり看過できません。

とくに、マーケットプレイス業者の評価が商品購入画面からはわかりにくい、業者名が小さい、ブランド名や元メーカー名などに偽装できる、といった仕様は、Amazonが詐欺の温床になっている原因かと思います。

早急に対策してもらいたいです。

ベゾスさんは宇宙ロケットに注力する千分の一くらいのコストを、Amazon店内で詐欺師が横行するのを防ぐことに使うと良いと思うのですが。

Mac整備済品をハンティングする

時々ここを見て「お、出物だな」とか楽しんでいる。

www.apple.com


今朝払暁、MacBookAir2018に16GB/512GBというのがあった。定価で買うより3万安い17万。
   *  *  *
今、予備機としてMacBookAir2013を使っている。8GB/512G/i7_1.7GHzでまだそこそこ使える。2015に買ったからまる4年経つ。去年までは主機として外部画面つないで使っていた。
しかし仮想マシンWindowsを動かし、WQHDの外部画面に出力すると、さすがに遅く感じる。なので主機に15インチMacBookを買って、Airは予備に回した。
ちなみにどれもAppleの整備済み製品で買っている。若干型落ちである。
   *  *  *
整備済みは訳あって返品されたものだから、まっさらではない。何らかのトラブルを抱えていることも多い。

2013AirはWi-Fiが切れるというトラブルがあり、渋谷のAppleStoreでOSダウングレードとかいろいろやった。でもまあ結局、OSがYosemiteからエルカピタンになって解決した。もともとYosemiteが持っていた固有の不具合だったようだ。あれはよくない版だった。
今の15インチに機能的な不具合はないが、ゴム足が水平ではなく少しがたつく、という欠点がある。こりゃたしかに返品したくなるわな。僕はティッシュを1枚敷いてがたつきを止めて使っている。そもそも普段は外付けキーボードなので気にならない。

整備済み品はけっして、単に安くてお得なわけではない。それなりのリスクがある。
   *  *  *
外出先や旅行先で仕事するとき、2013Airはまだ使える。狭い内蔵画面であれば仮想マシンもさくさく動く。
ただ、画面が狭い。画素数というか解像度の話だ。1,440 x 900ピクセルだ。これ実は大昔の15インチと同じ画素で、狭い13インチにこれを強引に押し込めてて親切&お得、と言われた伝統の解像度なのだ。
だけど現代ではもう狭い。
2018Airは2,560 x 1,600だ。旧Airのちょうど倍、ではない、大昔の13インチ解像度1,280 x 800が基準になっている。
なんだ、たいして変わらないじゃん。べつに高解像度でなくてもいいよ。と思っていた。
実際に使ってみるまでは。
実は高解像度だとスケーリングが使えるのだ。2018Airの場合、1,680 x 1,050が使える。これが広くて、かつ見やすくて快適なのだ。
先だって外付け画面が映らなくなって(突如DisplayPortケーブルの不具合だった)、仕方なしに15インチの内蔵画面で仕事していたのだが、1,680 x 1,050ならあまり能率が落ちないのだ。これには驚いた。
仕事の能率は、機械の動作速度にも依存するが、どれくらい広い画面を使えるかによる。
これ使えば、旅先で仕事するのもすごい楽だよなー、新しいAirは100g軽くなってるし、筐体も少し小さいし(筐体が小さいと飛行機の機内で開く時のストレスが小さい)。
   *  *  *
しかし17万は安くない。税金入れると19万になるし。
少し逡巡するか。

と朝食を食べたあともう一度見てみると、もう売れていた。当たり前だよな、出物だから。
   *  *  *
整備済み品は、自分で仕様を決められないのだが、それだけに欲しい仕様のものが出てくると「これは俺が待ってたやつだ!」とすごく盛り上がる。普通に買うより楽しい。普通に新品買うよりリスクが高いとわかっていても、この狩猟的楽しさがあるので、整備品チェックがやめられない。
15インチを買った時は、16GB/1TB/i7_2.8GHz/GPU2GBで税込30万を切るという掘り出し物感に、ついボタンを推してしまった。
これは一種のゲームなのだ。
   *  *  *
今朝は、ケンした(見送った)。次に出たら、どうするか。買ってしまうかしれない。うーん。
(僕は、携帯電話やタブレットより、やっぱり古典的なコンピュータ端末が好きだ。もう30年もMacintoshが好きなのだ)

公園・毒餌事件に思う

www.asahi.com

いずれ読めなくなるから記事を引用しておく。

 大阪府警は3日、大阪市生野区鶴橋1丁目の公園に放置された餌を食べて死んだ犬の嘔吐(おうと)物から、車の不凍液などに使う有害な化学物質「エチレングリコール」を検出したと発表した。府警は、何者かが置いたとみて動物愛護法違反容疑で捜査している。

 生活環境課によると、死んだのは4歳の秋田犬のオスで体重約30キロ。5月13日夜、飼い主の夫婦と散歩中に、北鶴ふれあい公園内のしげみに犬が頭を突っ込み、容器内の液体に浸されたドッグフード様のものを食べた後、衰弱し、翌14日未明から嘔吐し始め、21日に腎不全で死んだという。

 飼い主からの通報を受け、府警が嘔吐物とドッグフード様のものを鑑定したところ、ともにエチレングリコールが検出された。この公園内では容器を撤去した後、先月25日にも液体に浸されたドッグフード様のものが見つかったという。現時点では他の被害は確認されていないという。

 

この事件、少し疑問がある。
体重30キロの秋田犬が、茂みにあった不審な食べ物を食べるのを飼い主は止めなかったのか。もしかすると、止められなかったのか(制御できなかった?)、止められない情況だったのか(リードを放していた?)。
   *  *  *
日本の飼い主はほとんどが犬をコントロールできないので、知らずに周囲にすごいストレスを与えていることがある。
事件のあった公園のことは知らないが、おそらく、多数の犬の散歩者が集まる、良い公園だったのだろう。犬の飼い主たちが親睦を深め、犬同士が楽しそうに交流する。夕方とかさぞ賑やかだったろう。
これは周囲の住民や、犬を飼ってない公園利用者にはすごいストレスになる。犬は尿で公園の敷石や柱、花壇やベンチを汚染し、小型犬は好き勝手に吠える。放し飼いの飼い主もいるのでトラブルになる。
   *  *  *
この秋田犬を殺した後も毒餌が置かれていたというから、犯行は確信的であろう。恨みがあり、理由があるのだ。愉快犯の可能性もあるが、それとて背景がまったくないわけではない。
   *  *  *
死んだ犬がかわいそうだ。毒を拾い食いして、1週間も腎不全で苦しんだとは。

腎不全は地獄の苦しみなのだ。僕は以前、体重6キロの猫、3キロの猫を看取った。異常が発覚して、途中入院させて点滴や透析をやったが、やはり1週間ほどで逝った。すごく苦しむので看取っていて疲れた。西欧の基準だと安楽死させるべきだろうが、ようせなんだ。痙攣が始まって半日、あるいは一昼夜生きた。壮絶だった。

30キロの犬だとストレスはいかほどか。別れは辛かっただろう。
犬のトラブルは犬に責任はない。すべては飼い主にあると思う。飼い主とその他の人との心理的トラブルが延焼し、犬が犠牲になるのだ。

自分のためのスノーケリング・マニュアル

【道具のチェック】
1.マスク、スノーケル、フィン
マスクはレンズの度が合ってること、バンドが頭を締め付けないこと、バンドが切れかけてないこと、シール(水密)が保たれてること。レンズが汚れてないこと(レンズが汚れてると曇る)。
スノーケルは、吸い口のシリコン噛み合わせが千切れてないこと、接合部や管に水漏れがないこと、弁が機能すること、管が太すぎないこと(管の容積が大きいと排水しにくい)。
フィンは、フルフットなら足入れが楽なこと、脱げないこと。フィンずれすることがあるのでフィンソックスや絆創膏の用意も。
ストラップフィンはストラップが切れかけてないこと。履いた時のテンションが適切なこと。ブーツやマリンシューズと適合すること。ブーツのファスナーがちゃんと締まること。

2.水着、ラッシュガード
水着は破れたりほつれたりしてないこと。
ラッシュガードは臭くないこと。砂を噛んでいないこと。ファスナーがきちんと締まること。ウエスト締め紐の両端がちゃんと出てること(片方を引っ張りすぎると片端がパンツに入ってしまう)。
ファスナーがちゃんと動作すること。ネオプレン生地に傷や裂け目がないこと。
着脱が容易なこと。体を締め付けすぎないこと。ゆるくないこと(ゆるいとエントリ時やカレントで脱げることも)。

3.カメラ、トーチ
カメラは電池の充電が十分なこと。ハウジングがきちんと閉まり、水密があること。中に入れるシリカゲルが湿ってないこと。水密Oリングが切れたり裂け目がないこと。水密グリスを塗ること。
カメラのメモリ空き容量が十分あること。本体のみできちんと動作すること。ハウジングに入れてきちんと動作すること。ハウジングのすべてのボタンが使えること。押した時浸水しないこと。
トーチは電池の充電が十分なこと。電池の液漏れがしてないこと。地上できちんと動作すること、水に入れてきちんと動作すること。

 

【エントリー】
エントリーする前にコースを決め、バディと共有すること。
潮位表(タイド・テーブル)を調べ、入水時間と上がる時間の潮位を知っておく。潮位がロー(干潮)の時は初めての場所は避ける。
男性は口髭を剃っておく。
イスラエル製の対日焼け・対プランクトンのクリーム「セイフ・シー」を露出部分に塗って伸ばす(入水10分前までに)。

エントリーポイントまでの移動が裸足だったら、きちんと足元を見て歩くこと。尖ったもの(ゴミ、金属、陶器、サンゴ、木の根など)を踏まない。足元が暗ければトーチで照らす。

1.ビーチからのエントリー
ポイントが砂浜なら、膝以上の水深まで歩いて入り、水の中でフィンを履く。砂地に膝や尻をつくと服が砂を噛むので避ける。シューズやブーツ併用なら、くつが砂を噛まないよう、予め靴を履いてフィンを装着して水に入る。
ラグーンにパス(ドロップオフへの道を)が切ってある時は、パスを示す黄色いブイ、白いブイ、発砲スチロールの箱、旗などを確認する。

2.ボートからのエントリー
混み合うのでなるべく急がず後から入る。バックロールは少なくジャイアンストライドが多いはずだが、バックロールの時は他人の巻き添えで水に落ちないように。
ジャイアンストライドではボートのエントリ口が混雑するので避ける。フィンを踏まれないようにする。カメラやトーチはストラップで自分の手首に固定しておく。

水に入った時の衝撃で道具が故障することがある。マスクと、スノーケルの弁に急な衝撃がかからないよう掌でカバーを。
マスクの曇り止め(洗剤またはツバ)はポイントに着く前に済ませておく。船上の共有バケツに洗った水を戻さない。バケツにマスクを漬けない。
イントラ(ガイド)の水着、マスク、スノーケル先端の蛍光塗料、フィンの模様などを見て覚えておく。
入水したら速やかにボートから離れる。後から飛び込む人に踏まれないように。他人の機材や体に接触しない距離を保つ。高価なカメラを持ってる人には近づかない。

 

【ボート・スノーケリング(ツアー)】
ボートの多くはツアーであり、個人でボートからエントリすることはほぼない。

入水後、マスク・スノーケル・フィンのいずれかに異常があれば、速やかにボートに戻る(イグジットする)。再点検で異常を解決して、再びエントリする。
基本、客の群れから離れすぎない。また客の群れの真ん中に入ってく身動きできなくならないように。
イントラの位置を確認する。顔でイントラを識別できない時は、水面下で水着やフィンを見る。
イントラの方向指示を厳守。目標物は常にイントラ。ボートを目標にしない(ボートは客と関連ない方向に動くことも多い。また、他のリゾートのボートを自分の船と間違えて追うことがある)。
気持ち悪いとか疲れたとかで勝手にボートに戻らない。イントラに訴えて、ボートを呼んでもらう。
イントラに従ってツアーについて行く。
イントラのブリーフィングで「フリーダイブは禁止」と言われたら潜らない。よく聞いとく。
イントラがフリーダイブしてもすぐに真似しない。カレントを見たりするためのダイブかもしれない。
ダイブから浮上する際は必ずと上方確認。後ろから水面を進んでくる人がいるので、空いた空間に向かってても油断しない。
マンタやジンベイが出たら、無闇にフィンキックしない。体を水平にすればキックせずに浮ける。
他の客が密集してきたら膝を抱えて小さくなる。自分から避けず、他人が去るのを待つ。
イントラが「次行くわよ」と切り上げることがあるので、観察に夢中になって置いてきぼり食わないように。

 

【ボートへのイグジット】
イントラがツアー終了を告げ、ボートを呼んだらマンタやカメがいても諦める。ボートに集中する。
疲れていなければ水面で待って、後から上がる。早い順番は混む。
ラダー(ボートへの梯子)と、介添えのクルーをよく見ておく。ラダーに滑り止めはあるか、足や指を挟みそうなとこはないか。クルーは右にいるか左にいるか、脱いだフィンを渡すのは右手がいいか左手か。カメラを渡してよいか(カメラを床に置くクルーもいるが、壊れるかもしれないので自分で持って上がるがベター)。
フィンは片足を脱いで水面待機、ラダーに取り付いて足をかけたらまず片方をクルーに渡す。手と足でラダーに確実に取り付いていることを確認して、残りの片方を脱いで渡す。両足が自由になったら体を持ち上げて水から上がる。ここで滑らないように。
ラダー最上段からボートに乗り込む時も足元が滑る。両足がちゃんとボートの床を踏んで立ったら、クルーからフィンを受け取って自席に移動。
バディもイグジットしてボート上にいることを確認する(案外忘れやすい)。

 

【ビーチ・スノーケリング(セルフ)】
エントリーし、パスからドロップオフに出たら、カレントを確認する。行きたい方向へフォローであること。アゲンストなら何度かキックしてみて、ストレスなく進めること。何らかストレスを感じるようならカレントは強いので、アゲンスト方向へ進むのを諦める。反対に行くか、再度水から上がってエントリーポイントを変える(面倒だが引き返す勇気を持つ)。

カレントがフォローなら、ゆっくり所定のイグジットポイントまで泳ぐ。
パス以外のラグーンは緊急時を除き泳がない。とくに干潮時は、珊瑚礁の浅瀬にハマって身動きできなくなることがある。どんなに浜が近くに見えても引き返す勇気を。
カレントの変化に気をつける。泳いでいて「もしかしてアゲンスト?」と思ったら、テーブル珊瑚の上に静止した大きい魚(ハタやタイの類)を探す。彼らはカレントが来る方向に頭を向けている。
彼らがバラバラな方向を向いてれば、カレントはない(なぎ)。

波はカレントと反対のこともある。波は目に見えるがカレントは見えないので波の向きを警戒しててカレントがお留守になって流されることがある。

 

珊瑚礁は浅瀬が危険】
波は十分な深さがある場所では単なる水面の上下動で支障はない(時々波に酔う人がいるが)。だが浅い場所では波は突然の水位上昇となって強いエネルギーを持つ。
浅い珊瑚礁のラグーンで強い波を受けると、意図せぬ浅瀬に流されたり、珊瑚に打ち付けられたりする。とくに水深が50cmを切る浅瀬では、緊急時に立って姿勢を立て直すこともできない。
波がブレイクしている浅いラグーンには近寄らない方が良い。

 

【バディシステム】
スノーケリングは必ずバディとする。
バディと離れず泳ぐ。透明度が低い時は時々水面から頭を出してバディのスノーケル先端を探す。ぶつからないよう、近づきすぎない。バディのフィンで蹴られないように。
判断(別れ道や方向転換、退却、そのまま進撃か)は必ずバディにはかり、バディが反対したり気が乗らなかったら安全な選択肢を選ぶ(行かずに諦める、イグジットするなど)。
体が冷えたり喉が渇いたり、誤って海水を飲んで気持ちが悪い、手を切ってしまった、など異常を感じたら必ずバディに伝える。
バディが動けなくなったら、2人とも遭難することになる。

バディとはハンドサインを決めておくと良い。方向、イエスノー、異常、発見した魚の種類など。ダイビングのハンドサインが流用できる。

自分の位置は海底の地形で判断しない。時々海上から陸地を見て、90度の方角で二点を見定める。
海洋生物の位置は頻繁に動くので目印にはならない。ウニやシャコガイでも信用ならない。イソギンチャクとクマノミは盗まれて消えることがある。

 

【離岸流について】
離岸流は流れなので波のように目には見えない。
袋状の入江で、湾の口の中央部から外の海水が流入すると、湾の両端から潮が流れ出て、離岸流になる。流れに捕まると絶対アゲンストには進めないので、冷静になり、流れに対して90度の方向へ泳いで脱出する。アゲンストには向かってキックを続けるのは体力の無駄。

潮流は天候・潮位・月齢などで変わる。朝・昼・午後でも変わる。
透明度も変わる。いったん悪くなると数日では回復しない。諦めること。

 

【マスクが曇る時】
水面でマスクを脱いで拭きたくなるが、マスクを脱ぐのは危険でお勧めできない。
マスクは脱がず、少し隙間を作って海水を入れ、レンズの曇りを濡らして取り、鼻息で排水する(マスククリア)。
隙間から指を突っ込んでレンズを拭くのはアリ。スノーケルは咥えたまま。

 

【ビーチへのイグジット】
砂浜なら、まだ適度な深さがあるとこでフィンを脱ぐ。砂に尻餅をつかない、膝をつかない(砂の中に硬い物があって膝を傷つけることがある)。
フィンや道具、服が砂を噛んでないよう、洗い落としながら上がる。

岩場へのイグジットはおススメできない。とくに日本では岩に牡蠣・フジツボ・カメの手がついてて指を傷つける。
グローブを着用し、ブーツまたはマリンシューズを履いている時のみ、岩場にイグジットする。

ごろた石の浜は砂がつかないので理想的。石で足の指を挟んだり、足場が悪くて足をくじくのに気をつける。

ガンギや防潮堤など人工物へのイグジットは、海苔や海藻がついてて滑るのに気をつける。テトラポットなど消波構造物へのイグジットは不可。
両手をついて体を引き上げる場合、水中では支える必要なかった体重が邪魔になる。泳いだ後は疲れているので、普段ならできることもできない。無理すると滑って腹を打ったり擦りむいたりする。

 

【イグジットの後】
ボートならお茶の配給があるので必ず飲んで体温が下がるのを防ぐ。船上にシャワーがあれば体の塩を流すのも良い。
濡れた体は必ずビーチタオルで拭いて、濡れっぱなしにしない。航行中に体が冷える元になる。可能なら濡れた水着を脱いで着替える。

ビーチに上陸したら、シャワーがあれば使って体と機材を軽く洗う。シャワーがないポイントではペットボトルに水を入れ、車の屋根で温めておく。

 

【ナイト・スノーケリング】
日没後または薄明時の暗い海に入る時はトーチを使う。トーチは必ず1人1本。点灯することを地上で確かめておく。

夜は透明度が低いことが多い。バディを見失わないように。
LEDトーチの光線は拡散しないので光軸がよそを向いているとバディの位置を見失うことも。昼より一層相手の位置に注意する。
何か見つけてバディに知らせたい時は、相手が見ている海底に対して自分のトーチの光軸を当てて急に揺らす。夜はハンドサインでは見えない。

カレントと浅瀬に一層注意。
定期的に水面から顔を上げ、地上の明かりを確認して現在位置を知る。地上に目標となる明かりがない場所はナイトに適さない。
砂のラグーンには夜になるとエイが上がってきて、砂地に伏せて獲物を狙うことがある。うっかり踏まないよう気をつける(毒針がある)。

シン・ゴジラの続編はこうだ!──押井守『ひとまず、信じない』


amzn.to

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書影はAmazonより

 一昨年の本、語り下ろしをゴーストライターがまとめたものだろう。はじめはあまり面白くない。説教臭いし、話の焦点がなかなか合わない。語り下ろしの悪いとこだろう。監督、あまりノッてないようだ…そうささやくわけだ、押井のゴーストが。

【目次】
序論――虚構の中に真実を宿らせる
第1章 幸福論――幻想は人を不幸にする
第2章 仕事論――説得する努力を怠ってはいけない
第3章 ニセモノ論――つまり、初めからフェイクなのだ
第4章 政治論――覚悟を決めない政治家たち
第5章 人間論――人間以上に面白いものがあるはずがない
第6章 映画論――「良い夢を見た」でもいいじゃないか

  俄然面白くなるのは3章以降。4章は少しネトウヨっぽく読めてしまうので、旧型リベラルの人はこの辺で本を放り投げてしまうかもしれない。

 5章・6章は白眉。とくに6章の「シン・ゴジラ」論とリドリー・スコット論は本当に面白い。ここでブツッと終わってしまうのがまるで押井映画のようだ。

 

関係ないが「シン・ゴジラ」続編を企画してみた

 押井は、初代ゴジラは原爆ではなく英霊の暗喩である、とする。そしてシン・ゴジラは暴走する原子力発電所である。初代は科学者が立ち向かい、シン・では公務員や若手政治家がゴジラと戦った。

 では次のゴジラは何で、誰が戦うのか?

 原子力発電所の災厄が忘れられつつある今、みんなが一番怖いのは「不景気」ではなかろうか。とすると、次のゴジラは不景気の化身として日本を襲うのだ。

 戦うのは誰か。公務員・公僕であろう。不景気なゴジラが上陸する、不景気な地方自治体の町議会議員とか青年会議所会頭とか商店会長だ。

 西伊豆のさびれた温泉町が破綻寸前である、何とかして観光客を呼び戻したいが施設は老朽化、旅館民宿は廃業、後継者難と良いとこなし。ひとり気を吐く若手の町議がゴジラの誘致を考え出す。東京駅前の凍結ゴジラは今や日本を代表する観光スポットである(いちおうシン・ゴジラの続編なので)。わが町にもゴジラを! しかし誰に陳情すればいいのか。東京都庁で小池知事にバカにされたり、西にガメラの誘致に成功した自治体があると聞いて視察団を派遣したり、ゴジラを呼べるという霊能者に騙され(町の財産を担保に借金する)、巨大広告代理店がからんでき…。するうちになんでか、駿河湾の海底に巨大な動くものの影が魚探に! ゴジラ西伊豆に上陸するのか!?

 いかん、《僕はかつて熱海に怪獣が現れるという馬鹿映画を作ったことがあるが》という押井の言葉に引き摺られてしまった。しかもゴジラが出てこない。ダメだこりゃ。

 じゃあ映像的に不可能っぽい企画を立てて、誰かに挑戦してもらおう。

 時は慶応四年、江戸へ進軍せんとする官軍と、迎え撃つか江戸を焦土にするかはたまた降参かで悩む幕府陸軍総裁勝海舟。勝の密使として幕臣山岡鉄舟が征夷大総督府参謀西郷隆盛のもとへ向かう途中、相模湾から姿を現すゴジラ! ゴジラはもちろん江戸をめざす。迎え撃つ官幕連合軍! 西郷、勝、山岡、大村益次郎桐野利秋江藤新平新選組彰義隊。アームストロング砲は火を噴くのか? 

 以上、浪士慶応報國故事というか、ただでさえ金のかかる時代劇・合戦シーン・怪獣ものをいっぺんに見せてください、という企画でした。

《あらゆる知識を総動員して、虚構が虚構として成立する世界を緻密に再構成するしかない》という押井の言葉が重たくのしかかってくるのである。ああ俺、才能ないわ。

天皇に忠節を尽くそうとしたら、天皇制に疑義を挟まざるを得ない──大塚英志『感情天皇論』

大塚英志『感情天皇論』ちくま新書、2019

感情天皇論 (ちくま新書)感情天皇論 Amazon

 改元のタイミングで刊行された本だが、いくつも驚きがあり、単なる便乗商品ではない。迫力があった。
 基本的には2016に太田出版から出した『感情化する社会』で述べたことを詳述展開しているのではないかと思う。思う、というのは『感情化する社会』は未読で、そのプロモとして書かれたコラム「感情天皇制論」が今回のちくま新書とそっくりだからだ。

www.ohtabooks.com

文芸とサブカル天皇をどう捉えようとしたか

内容をかいつまんで紹介しよう。

『感情天皇論』目次
序 章 私たちは明仁天皇の「ことば」をいかにして見失ったか
第一章 他者としての天皇──投石少年論
第二章 セカイ系としての「純粋天皇」──大江健三郎を平成の終わりに読む
第三章 押入れの中の「美智子さんの写真」と「女子」教養小説という問題
第四章 シン・ゴジラの帰還と素晴らしき天皇なき世界
第五章 平成三〇年小説論──「工学化した世界」の片隅で
短い終章 天皇のいない国をつくる

 

  序章は、明仁天皇が2016に発表した「譲位の仕組み作りを提言した動画」が、いつの間にか「お気持ち」とされて形骸化してしまい、それでもというかそれゆえにというか国民の大多数に支持されていった過程を告発している。

 一章は、1959のご成婚パレードで馬車に投石して拘束された少年の挿話と、それを三島由紀夫石原慎太郎らがどう記したか語る。三島は『裸体と衣装─日記』でエロス的に称揚して書いた。石原は実際にその少年が自分を訪ねてきて「きちんと話したい」と語ったにもかかわらず、文藝春秋に「あれをした少年」という半小説みたいな文を発表し、少年に成り代わった文体で矮小化した。大塚は、石原にはこの事態を受け止める度量がなかった、と言いたげだ。

 二章三章はその後文壇で流行った「不敬小説」の系譜を記す。大江健三郎「セヴンティーン」は実は山口二矢だけでなく投石少年がフィーチュアされている。『芽むしり仔撃ち』や石原の『太陽の季節』も実は不敬がテーマなのだ、とする。
「不敬小説」というジャンルができるほど文壇人は天皇というか明仁皇太子に夢中だった。その極致はもちろん深沢七郎『風流夢譚』1960である。

kappa-man.net

 三章では重要な〝忘れられた不敬小説〟が語られる。小山いと子美智子さま」がそれで、同作は実際に宮内庁から連載中止の要請があり、「平凡」での連載は打ち切られたという。抗議理由は《「私生活に対する侵害」、つまり「人権」であったとされ》、天皇個人の人権を圧殺する天皇制の本質に頬被りして宮内庁が人権を言う、興味深い事例である。
 大塚は、《この小説はむしろ皇太子妃の人権擁護小説》と明快に擁護する。男性純文学作家たちが天皇事象をオナニーや性的暗喩やスッテンコロコロと弄ぶしかできなかったのに対し、大衆向け作家の小山が啓蒙的ビルドゥングスロマンを書いて、しかもそれが宮内庁から抗議されたというのだから。《つまり小山は美智子を皇室を離脱して自立し得ることさえ選択する、自分の意志のある「近代」女性だと書くのだ》。性的暗喩や明白な嘲弄が無視され、通俗的な人権感覚での描写がむしろ逆鱗に触れる、宮内庁の逆鱗に触れなければその小説は現実のエッジに触ったとはとても言えないと僕は思うので、文学史的には小山大勝利であろう。

 四章では皇居直前の東京駅で停止、という劇終を迎えた「シン・ゴジラ」を語っている。エヴァンゲリオンや『絶歌』、折口信夫、「崖の上のポニョ」、「ゆきゆきて、神軍」「小栗判官車街道」とかも語られるが……正直あまり面白くなかった。サブカルの話題なのに。

 五章が本書の白眉かもしれない。古市憲壽『平成くん、さようなら』と田中康夫『33年後のなんとなく、クリスタル』が語られるのだが、ここで大塚は両作品に対して驚くべき審判を下すのだ。ここはあまりにも面白いのでみなさんご自分で読まれた方が良いので詳細は伏せるが、本当に驚いた。
 ところで僕は田中康夫が33年後に相変わらず消費しまくるプチセレブたちを描きながら、ボランティアや〝ゆるいつながり〟、マルチチュードみたいなものに救いを暗示させていることに、すごく田中らしいなあと思い、そしてすごくつまらないと思った。そんな甘いもんで現実が救われるわけねーよ、という地方出身者のニヒリズム・上から(下から)目線で思った。
 田中とともに本書では鶴見済が取り上げられている。鶴見も『完全自殺マニュアル』の頃の突き抜けた立場から一転、シェアリングエコノミーやユイ・モヤイ社会が我々を救う、といった安易な着地をしてしまった。僕に言わせれば、これらは都会人の無知なエゴだ。大塚は取り上げていないが『そして、暮らしは共同体になる』の佐々木俊尚もそうだ。こういう議論は失格だ。人は共同体に居るのが苦痛でしかたがなく、共同体から逃げ出すために勉強したり出世しようとするのだ。そうして少子化孤独死すら選べる自由を手に入れたのだから、二度と共同体には戻らないのだ。「きずな」とか言ってるのは時代錯誤なのだ。
 ジャ・ジャンクーは現代中国を描写する映画作家だが、「山河ノスタルジア」はSF的でぶっ飛んでいた。改革開放・先富起来でリッチになった中国人は、宗族共同体から脱してオーストラリアに移住し、子供からも見放されてたった一人で老いて死ぬ自由を謳歌するのだ。中国人ですらそうなのだ。日本人が「きずな」に戻るわけ、ないのだ。
 まあ、注記しておくと、大塚はけっしてこんなこと言っていないのだが、まあこういう連想してしまうくらい僕には衝撃的な結論だったわけだ。

 終章、大塚は永年の持論に立ち戻る。『感情化する社会』のプロモエッセイで、《天皇制は断念されるべきだ、というぼくの立場はとうに表明済みである》と書いているとおり、本書でも《ぼくの結論は至ってシンプルだ。天皇制を断念しよう》とはっきり言い切っている。
 これは前々から彼の持論なのでネタバレにはならないだろうから、肝心の部分全部引用しておこう。その前段には、《いいかげんに私たちは近代を担保し民主主義を運用し得る「個人」となるため、私たちの怠惰を許してくれている天皇制を断念すべきである。そして天皇家の人々に私たちが奪い続けた「個人となる権利」を返すべきである》とあるのだ。そのために、《天皇制を断念しよう》と。

天皇への共感〟は実は〝甘え・依存〟では?

 実は僕も、前からほぼ同じことを考えていた。
 僕は外山恒一(1970生、九州のファシズム思想家。元は高校生左翼活動家)の影響で「ファシズムを現代に実現するには」を考え続けているのだが、天皇制については「あってもなくてもいいが、現在のように祭り上げて依存するのはよくない」と考えていた。保守(ネトウヨ含む)や民族主義国家主義の限界を突破してファシズムに糾合するには、どうしても「国民みなが天皇制に依存している現状を棄てねばならない」のだ。
 そして「もし存続させるなら天皇に忠義を尽くすべきで、忠義を尽くすなら民主国家が保証する人権を彼らにも与えるべきだ」、だから「天皇天皇制から解放せねばならない」と結論していた。

 天皇に対して「それは不敬だ」とか、遠慮したり、敬して遠ざけるのは、天皇を支える国民として正しい態度ではない。〝不敬〟よりも〝不忠〟をこそ恐れろ。
 つまり、「天皇に忠義を尽くすなら、天皇制を覆さねばならない」。

 これは大塚の「天皇制を断念しよう」とほぼ同じだ。

 あっぱれ、大塚英志は忠義者であった、と思った。
 それ以降の「皇太子の水の文化論」とか「天皇家バチカン化計画」とかはとくに僕は感銘受けなかった。まあ、いろんな考えがあっていいよね、ということだ。
 とにかく「天皇制に依存し、甘えている現状に無自覚でいてはならない」という大塚の結論は唯一無二のもので、スケールの大きいものだ。既存左翼の天皇制反対論とも違う。天皇制を認めるからこそ、そこから卒業せねばならない、からだ。

 憲法十三〜十四条には国民を個人として尊重し、人種や生まれで差別しない、と謳ってある。だが新天皇は還暦間近で登板し、八十過ぎまで激務を務め続けることが義務づけられる。人権もなく、ひたすら国民統合と国土の平穏を祈念し続ける、って持衰(じさい)とか『一目小僧その他』かということだ。野蛮な話である。
 とすると天皇は国民ではないのだな。この家に男子として生まれただけでこんな目に遭うとは。天皇を非人間的な天皇制から解放する闘争が必要なんじゃないのか? それとも民族派の志士や人権運動の闘士諸兄は、天皇にだけは人権を認めないのだろうか。

 今のとこ、きちんと「天皇制を諦めよう」と言っている言論人は大塚英志だけだ。尊敬に値する。もしもあなたの信条が大塚とまったく沿わなかったとしても、読む意義があると思う。

 大塚には巧言令色がないからだ。ことさら〝不敬〟を言い募り、天皇制に甘えるのをやめない輩こそ不忠者、君側の奸だ。

 巧言令色鮮し仁、君子は和して同ぜず。

 

付録。〝著者・大塚英志〟さんの思い出
 僕は昭和末年に大学卒業の見込みが立ち、東京の出版社に就職した。上京したのは平成初年の春だ。
 会社では軽装版ノンフィクション書籍の部署に配属された。隣の編集部のある人の机上に『物語消費論』があった。大塚英志の三冊目の著書だ。僕は田舎にいる時から『「まんが」の構造』『システムと儀式』は大好きで読んでいた。机の主が出社してきたので昼休みに声を掛けた。「この著者、好きなんです。面白いんで」その人は「へえ、知り合いから送られてきたんだけど、だったら読んでみようかな」。
 後日、「面白かったから著者に連絡したんだ。書いてくれるって」。
 こうして、光文社カッパ・サイエンスから『少女民俗学』が出ることになったのだ。
 担当編集は白石厚郎さんといった。本来はカッパ・サイエンスの理系っぽいタイトルを主にやっておられた。
 傍から見るとサクサクと進行して、あっという間に発売された(記録では5月刊らしい。4月頭に厚郎さんと雑談してからアッという間だった)。ささやかな打ち上げを、会社近くの穴蔵のような小さなビストロでやった。僕も呼ばれてお相伴に与った。
 ところがその夏、宮崎勤事件が発覚した。7月に捕まり、8月には自供が報道され、6千本のビデオとか、ロリコンアニメやホラー映画の影響が云々されだした。大塚さんはそれを我がことのように敏感に受け取り、裁判に関わることになってしまった。厚郎さんは「ぜひ続きを」と頼んでいたが、大塚さんの繊細な心に事件は重荷となるだろう、と心配した。不安は的中し、大塚さんは事件に忙殺されて続編は形にならなかった。
 あの時は本当に残念だった。せっかく脂が乗ってきた若い著者なのに、不毛な事件に関わって貴重な若い時間を棒に振るとは、と思った。だが、あの時ご苦労なさったのが、今の大塚英志の思想を鍛え上げたのかもしれない、という気が、今はしている。
 今回『感情天皇論』では、あの昭和末期に大塚が書いた『少女たちの「かわいい」天皇』という論考を、《ほとんどこれはセカイ系としての「天皇」に同一化する人間をただ甘美に描いているだけだ》と自身、完全に否定した。見事だ。そして《昭和のある時期までは盛んだった天皇制否定の議論は平成に入ると消え、逆に天皇制が「必要」であるならいかにあるべきかを考えることを怠った》と、非常に大きな議論を鮮やかにスパッと切って見せた。ここに本書のキモがある、と僕は思った。
 正直、昭和末年に僕が好きだった大塚英志は、明解でよく腑に落ちる文章を書いてくれる、やさしい著者だったが、世に出て以降の大塚の文章はやや読みにくい、韜晦もあるような、僕の苦手な文章を書く人になっていた。だが『感情天皇論』は、かなり明解だ。読みにくいところもまだあるけど、こんなにハッキリしている。三十年前の青年・大塚英志が帰ってきた、いや、ずっと健在だったのだ、ということがよくわかりました。
 ありがとうございます。なお、僕は本書をNet Galleyのゲラ配布・先行読みサービスで読ませていただきました。