新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

ガンダム『一年戦争全史』(上・下)のせいで大変なことになった

 きっかけは、久々に営業で外を廻っている途中、書店に立ち寄ったことだった。最近、文体が読みにくい、かつ分厚い本を読んでいたので、気分転換に新書を買ったのだった。
  ちなみに読みにくい本ってのはこれ→
 吉田司はすごく好きな人なので(でも彼の本を全部読んでる、なんてわけじゃありません。『下々戦記』といくつかくらいです)、とても楽しく読めた。斎藤貴との対談なんだけど、中で吉田が面白い本を紹介していたので、それもついでに買った。
 
 自爆する若者たち、なんてタイトルはちょっと意味が伝わりにくいな。僕がタイトルつけるなら「若者が虐殺・戦争を起こす――人口学が明かす歴史の起爆剤」かな? 一言で言えば、人口ピラミッドで若者が増えすぎると世情が不安定になり、革命やクーデターが起き、若い政権が内戦や虐殺、そして対外戦争に訴えるなんてことが起こる、と。著者はこれをユース・バルジ=若年層の突出と呼び、男性人口のうち15歳から29歳が30%を超えると危ない、という。なぜアメリカはアフガンで勝てないのか?(なぜベトナムで負けたのか)、あるいはこれから不安定化するのは世界のどの国か、といったことも全部人口動態だけで説明してしまうのだ。面白いよ。
 アメリカがベトナムでもアフガンでもイラクでも勝てないのは、ベトナム頃からアメリカは若年層が突出して多い国ではなくなってきた、現在なんて移民がいなければ若者なんて跡継ぎの一人っ子だけって状態。対するベトナム・アフガン・イラクは、いずれも若年層が余っており、米軍に殺されても殺されても次の兵士を送り出すことができる。しかも若者は増えている。米軍の新兵送り出し能力は相対的にとても低い…この単純な算数のため、アメリカはどこで戦争やっても勝てないってことになる。相手が若者の多い国だったら。
 日本は高齢化社会になってるけど、まだ僕たちはそれを深刻に受け止めてない。イギリスでは映画「トゥモロー・ワールド(Children of Men)」や「28週後」みたいに子どもがいなくなる世界を積極的に描こうとしてるけど。日本は「シルバー人材の活用」だとか「高齢富裕層マーケティング」とかってのんびりしてる。だけど、この本読むと、そんな寝言が言えるのはいまのうちだ、ということがわかる。
 なぜ15歳から29歳のそれも男子だけなのか。それはつまり、戦争適齢期ということだ。この年代の若者が父親世代よりも数が増えてしまうと、単純に彼らの居場所がなくなる。その恐怖、焦燥のストレスを受けた彼らが世情を不安定にさせるのだ。若者の変革力とはかくまですさまじい。日本の明治維新だって、一部雄藩の下層武士の若年層が突出したせいで起きた、と言えませんか? 太平洋戦争だって、青年将校の稚拙なテロに結局国全体がゆっくりと動かされて起きたような。この本の著者はドイツ人なので日本のことはあまり言及しないけど、ヨーロッパ人の世界征服(大航海時代から植民地時代)から第三世界の虐殺までがいろいろ取り上げられています。
 それで思い出したのが、ガンダムなんだよ。初代ガンダム一年戦争という大きな大きな歴史を設定して、そこに巻き込まれた少年たちを描いたものだった。いま気になるのは、「人類はその全人口の半数を失った」という冒頭のナレーション(永井一郎)だ。それっていったいどんなことが起きていたのか?
 それで参考書を買ってみた。歴史群像別冊そっくりのこれだ↓。
  下巻の書影はないんだよ。
 一年戦争をすでにあった歴史的出来事として考察するこの本は、基本はパロディなんだけど笑わそうとはしてなくて素晴らしい。むしろまじめにまじめに論じてて、しかも現実の戦争や歴史と引き合わせるような無粋なことはあまりしてない。楽しいです。で、本書は当然、その頃の世界人口についても述べてあって「地球に20億、宇宙空間に90億」なんて記述がある。地球上は移民をいっぱい送り出したので人口減少が起き、サイド3は当然若年層人口が突出して稠密になっているだろうと推測できる。んー、楽しそうだな。ちょっと久しぶりにガンダム見てみるかな。
   
 ということでTSUTAYA行って借りてきた。ゆうべは2まで見て、3に入れ替えた瞬間に倒れて寝た。今朝、3を見た。
 結論から言うと、期待と違ってサイドの描写はサイド7も6も人口が希薄な感じだった。サイド3にいたっては「人口は1億人を数える」なんてナレーションも入ったりして、ああ、あんまり考えちゃいなかったんだな、と思う。宇宙に90億人いる時代で、半数が戦争で死んだとしても45億、そしてサイドの数はざっと6だからサイド3(ジオン公国)にはざっと6〜7億人がいなきゃ数が合わない。まあいいさ、アニメ製作当時はそんなこと考えてないだろうから。あとは僕らが脳内でどれくらい補完できるかだな。
 それにしても疲れたよ。アタマが一気にガンダムになってしまった。やっぱり若い頃に脳に焼き付いた記憶はやばいですね。そこが活性化すると生活が壊れるくらいの熱が出る。気をつけなきゃ。