新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

風邪ひいて仕事休んだんだよ

 飲み過ぎと働き過ぎがたたって風邪ひいたんだよ。昨日が最悪で、今朝はまあ働けないことはないけど、そこまでする義理もないので仕事休んで養生したんだよ。
 歩いて医者に行ったんだけど、月に2回の不燃ゴミの日だったのだよ。道ばたに、ティファールの重ねる鍋が落ちていた(正確にはゴミに出されていた)んだよ。こんなやつ。
 
 あのカチャっとはずすハンドルや蓋はなかったけど(他人のゴミにそこまで期待してはいけない)、18cmか20cmのルクルーゼを買おうかなと悩んでいたところに、なんと18cmと20cmのティファールが降臨したんだよ。うちにある20cmの無名の鍋の蓋がジャストフィットするし。もうルクルーゼ買うことはないな…淋しいけど。ハンドルを買わねばならないな。
 


 そして、なじみの医者に診てもらって、好きな薬を処方してもらって、コンビニでヨーグルトだのポテチだの買って帰ったんだよ。そう、風邪ひいたときはポテチなんだよ。好きな駄菓子食べてゴロゴロするのが養生なんだよ。
 で、コンビニの書架に例の安っぽいペーパーバックがいろいろあったから眺めたわけ。「オバマの陰謀」みたいのとか、「本当は怖い漢字の話」とか、いろいろすごいね安いのに作り込んであって。とくに彩図社はものすごい勢いでこのテを出してる。ここ、http://www.saiz.co.jp/index.phpを見ると、社員12名のちっちゃい会社なんだと。ゲリラ的な企画が多くて、わりと好き。
 でも今日買ったのは違う本。笠倉出版社の『[図解]世界のGUNバイブル』でした。
 
 これは600円もしないペーパーバックなのにすごく良い本でした! パチパチパチ。
 著者は「つくば戦略研究所・かのよしのり」という元陸上自衛隊武器補給処技術課にいらした、59歳の方。この本で取り上げた大半の銃の実射経験があるみたい。これはすごい。こういう、経験の積み重ねが必要な本は一朝一夕の取材では作り得ない。それを500円余で売ってしまうとは、大バーゲンである。
 その代わり、作りは安っぽい。カラー写真は全部東京マルイ電動ガン。本文の写真は著者提供のものだけで、あとはイラスト。でもミリタリ・イラストの巨匠・上田信なのである。ちょっと急いで描いた感じだけど。実はこの手の図解は写真よりイラストのほうが良いのだ。取り上げる銃の写真すべてで明度や解像度をそろえるのは不可能だし、細かい機構が映らないことがある。それよりは特徴をデフォルメして強調したイラストのほうが理解を助ける。
 そして本書がすごいのは、コンビニで安く売ってる暇つぶしの本のくせに、用語の定義とか、分類とかから入るのだ。ふつーだったら「ルパンのP38」とか「ダーティ・ハリーの44マグナム」とかから始めるじゃない? いやもちろん本書にもそれらの記述はありますが、最初に来るのが「鉄砲と銃は違うのか?」「小火器と重火器の違いは」とかだよ。しびれるねー。ストイック。というかちゃんとしてる。ごめん、暇つぶしなんて言って。いや俺も昔から気になってたんだよね。ライフルのこと「小銃」とも言うけど、じゃあ「大銃」ってあるのか?とか。そういう疑問にも本書は答えてくれてます。
 ハンドガン、ライフル、サブマシンガン、マシンガンと章は進んでいくんだけど(ハンドガンの最初の項目は「ハンドガンとピストルはどう違うのか?」だぜ。しびれる〜)、実銃を個別に取り上げての解説では著者の経験が俄然光ってくる。たとえばモーゼル・ミリタリー。こいつは小口径高速弾で射程が長いことが有名ですよね。バットストックをつければたしかによく当たるらしい。だが著者によるとこうなる。

 しかし、拳銃として片手撃ちしてみると、同じ弾丸を使うトカレフよりあたらない。トカレフより反動は軽く撃ちやすかったのだが。どうもグリップの形に問題があり、しっかり握っているつもりでも、小さすぎるグリップが掌の中で動いてしまうようだ。

 鋭い観察! 福野礼一郎の自動車評論みたいだぜ。モーゼルのこと、こんなふうに書いた記事は初めて読んだよ。馬賊がどうのとか、工作精度が高いとか、バリエーションがどうのとか書く人は多いけど、そんなの撃たなくても書けるからね。でも、モデルガンでも模型でも、モーゼル・ミリタリーを握ってみると、著しくバランスが悪いことは誰にでもわかるはず。それを言葉にしてこなかった日本の銃器評論は残念だ。ていうか日本には銃器評論なんてほとんどないか。国内では床井雅美さんの一人舞台で、海外で日本向けに書いてる「月刊Gun」とか「コンバットマガジン」の寄稿者がいるだけだよね。
 余談だけど、僕もガキの頃からガンマニアで、モデルガン買ったりしてました。でも実銃を撃ったのは1回だけ。グアムで。そのとき思ったのは、模型と実銃は何から何まで違うってこと。とくにコルト・ガバメントを握ったとき、抜群の握りやすさと当てやすさに驚いた。こんなに使いやすけりゃ、少々設計が古くなろうと、装弾数が少なかろうと、機械としての寿命までずーっと使ってやろうと思うでしょうよ。そう、実銃と模型じゃ、当てやすさ以外にも、重量配分とか感触とかばねとか全部違うんだよね。
 そんなわけで、相当撃ち込んでるらしい「かのよしのり」さんの本書は、読んでも楽しいけど資料的な価値も高いです。トリガータッチの描写、メカニスムへの言及とか、とても福野っぽいよ。こういう実感を伝えてくれる本は稀少です。銃の出てくる小説に携わる人、とくに編集者は読んでおいて損はないでしょう。安いし、コンパクトに理解できるし。よく翻訳家が資料として読むのは『小林宏明のGUN講座——ミステリーが語る銃の世界』らしいですね。たしかに銃という専門性が高いものを「どう訳すか」、そして日常性の中にどう着地させるかは難しいから、専門の参考書が読まれるのはわかる。でもこれも良いですよ。なにしろ安くて短時間で読める。あとね、新聞とかテレビの記者に読んでもらいたいかな。リボルバーはピストルじゃないんだよ〜。