新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

城繁幸ががぜん面白い

 TBSラジオ「アクセス」のニュースランキングを聞いていたら、「昨年1年間に労働者が働いた時間、初めて1800時間を下回る。景気悪化で残業減る(政府調査)」とのこと。
 自分自身のこと考えたら、月間20日働くとして1日7時間=140時間。そこに時間外が毎月平均で30時間くらいだから計170時間。かける12カ月だと2040時間……まだ平均に達してないなあ。時間外労働8カ月分も多いわ。労働者平均って、毎月10時間の時間外なんだね。これって営業職としては…この時間内に仕事を終えるのはちょっと大変かもしれない。そして、店舗営業での店長職(マクドナルドとかで有名になった名ばかり店長とか)の労働時間の長さを考えると、この平均労働者像ってどんな仕事なのだろうか。と考え込んでしまう。


 そんな今日、突然鼻水が流れ始めて止まらなくなった。会社のなかでハウスダストが飛び交ってるようだ。ここから関節の節々が痛くなって、風邪の前駆症状が姿を見せ始めた。やばいので早く寝ることにします。


 その前に一つだけ。人事コンサルタント城繁幸が面白い。
 こないだの日曜には「サンデープロジェクト」で森永卓郎をやり込めたらしい。僕はモリタクの情緒的なところがすごい好きで、城繁幸の冷たい論理性が生理的に嫌いなのだが、詰め将棋のような論戦ではどうやっても情緒は論理に勝てない。

 城繁幸のデビュー作は左の『内側から見た富士通』。今ではあまり書店で見かけないけど、自分が富士通で人事を担当し、成果主義導入に伴うドタバタ右往左往を包み隠さず明かした同書は文句なしに面白い。
 城氏のことを「新自由主義の走狗」みたいにののしる人がいるが(世に倦む日日 内部留保をめぐる新自由主義側の反撃と詭弁 - 城繁幸と朝日新聞とか)、それはどうかなと思う。人事部のパシリとして成果主義導入の汚れ仕事をやらされた城氏は、成果主義システム(富士通の導入は失敗に終わった)のダメな部分とともに、従来の年功システムの醜い部分もさんざん目撃した。年功序列の悪辣さに比べたら、失敗したけど成果主義のフェアネスのほうがまだ希望がある。若い彼がそう思って、今日までフェアネスを追求する方向で来たのは、たぶんこんな感じの動機だったんじゃないかなと思う。
 その後、畢生のヒット作となる右の『若者はなぜ3年で辞めるのか?』を刊行。あしかけ3年前になるけど、全然古びてなくて、というかますます先鋭的に時代を引っぱっている本だ。

 同書で城氏は、はっきりと「世代間対立がある」と断言した。これは彼の最大の功績だと思う。
 僕は森永卓郎のホンワカした情緒的な主張が好きだし、雨宮処凜のように「派遣と正社員との間に対立はない。手をつなげるはずだ」と語るこれまた情緒的な懐旧闘争っぽい言辞も大好きだ。
 だけど、最近ひしひしと感じるのは、「僕が好きな、僕たち世代にも口当たりがよい言説では、世間の問題は解決できないんじゃないか」ということだ。
 その点、城繁幸は不愉快なことをずけずけ言う。彼から見れば、僕は守旧派・既得権側・持てる者だ。僕はもう44歳になる。上の世代ほどは給与が上がらなかったけど、城氏たちの世代からすると十分給料は上がっている。彼らはぼーっと働いていたんじゃこんな給与にはならないことがもう判明してしまった世代だ。
 このアンフェアを、既得権側はなるたけそっとしておいてほしい気づかないでいてほしい。だから城繁幸はうざったい。彼の顔を見たくない。三白眼が不気味だ。と思う。
 だから、城繁幸がウザがられるほど、彼がほんとのことを言ってるとわかるのだ。モリタクの口当たりの良い言辞はもう効力がない。年収300万円でも牛丼食って玩具を集めてれば幸せ、なんて思えないのだ怒れる若者は。

 城繁幸は正しい。それはよくわかっている。
 でも、僕は彼のことが好きになれない。顔じゃないよ。それよりも、彼が「平成的価値観」の良い例として挙げる、「筆者の周囲にも、二十七歳にして五〇〇〇万円の年俸を受け取る者、三十歳にして経営陣入りする者など、枚挙に暇がない」とかってのに、同意できないのだ(文春新書『論争 若者論』(赤木智弘・萱野稔人・城繁幸など)より)。そんな例ってホント少ないでしょ。無理矢理っぽいモデルケースだよね。そんな人たちの後ろには時給いくらの同世代が死屍累々なんじゃないの?と思ってしまう。

 必要なのは、宝くじみたいな平成ドリームじゃなくて、能力はないけど努力はできる人が、不安におびえることなく働ける環境じゃないか。経済が収縮してゆくおそろしい時代に、数少ない成功例を馬の鼻面にぶら下げて、明日をも知れぬ競争に若者たちを駆り立てるのは、当の若者たちにとっても辛いと思う。

 城繁幸は正しい。それはよくわかっている。
 でも、それだけじゃやはりダメなのだ。何かが必要なのだ。

 なんとなく、モリタクの本も挙げておきたい。ろくなもんじゃねえとわかっていても、僕はこっちを読むほうが心が落ち着くので。
 Amazonの☆1つのレビューは非常に面白いです。本買わなくてもいいので、レビューを読みに行ってみてください。モリタクの本の価値というか社会的機能(ガス抜き)が暴露された、そんなレビューです。好きです。