新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

盛力健児『さらば、愛しの山口組』感想(2014記す)

以下は2014.02.09にFacebookに投稿していたものです。

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鎮魂 〜さらば、愛しの山口組

鎮魂 〜さらば、愛しの山口組

 

大変面白い本だった。こんな本を出せるところに宝島社の凄さがあるんだな。残念ながら僕がいた会社じゃ無理だろう。

関西弁の語りくちがよく、美しい文章だった。構成も非常に練られている。
三国志演義を思い出した。とくに後半の、関羽張飛が死んでいくあたり。悲劇なんだな基本的に。

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読んでいくと、著者周辺の大物たちが続々と鬼籍に入っていく。殺された人もいるが、肝硬変が多い印象。がん、脳血管障害もいるが、それよりも不摂生で若くして病気になってる人が多い。著者は頑健で服役中も体を大事にしていたようだ。

読み終えると、結局、トップに君臨することが本当の勝利なのか、よくわからなくなる。司忍六代目もどうも傀儡化してるみたいだし。そんな苛烈な権力闘争をやってると早死にするのも当たり前だ。何百億貯めたって意味が無い。

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興味深いのは、「大義」がボールのように行ったり来たりすることだ。
渡辺五代目は宅見若頭に傀儡化され、「当代への忠誠」を大義として中野会に宅見を殺させた。
そこで大義の在処が殺された側に移るのである。司若頭は宅見組二代目入江禎を連れて「親の仇は取らなあかん」の一言で大義はこちらにあり、と宣言して渡辺を追い込む。なんだか将棋のようである。

著者は自分の大義を「田岡の親分と田岡家」「山健の親父」への忠誠に置いている。これは動かない。だから著者のスタンスは揺らがない。歴史を書く側の特権だな。

読み所が多い。中部国際空港の利権で司忍は経済力をつけ、権力を奪取したとか。刑務所に行くことの“勲章”と“デメリット”とか。冷静に比べるとデメリットの方が多いのだが、だから誰もが服役を避けるようになると、服役を恐れない者が服役を恐れないというだけでメリットを受けるようになる。ゲーム理論みたいである。

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山健組は安原会の伝統を汲むという。『仁義なき戦い 代理戦争』で安原政雄に扮した遠藤辰雄はじつに名演であった。

正史の三国志を書いた陳寿は蜀の人だった。そして三国志演義の主人公は劉備たちである(演義は正史ではないけど)。

広島抗争の正史は広島県警『暴力許すまじ』、中国新聞社『ある勇気の記録』なのだろうが、僕らが記憶しているのは美能幸三の手記による飯干晃一『仁義なき戦い』である。ところで産経新聞社は『極道ひとり旅』(これは美能幸三の単著)電子書籍にしてくれんかな。
で、本書はこれから山口組抗争史について誰もが参照する文献になるだろう。歴史は敗者によって書かれたものが残っていくのであるなあ。

都知事選は終わったが、本当に舛添が勝ったのか、僕にはよくわからない。彼はこれから大変な権力闘争に晒されるのだ。一年もつのか、どうも怪しく思える。

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前々回の都知事選って今頃やってたのね。で、舛添は2年半で失脚したのか。

権力ってすごいね。