新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

オリンピック柔道、なんとか面白くできんもんかね?

 昨夜は女子57キロ級で松本薫が金メダルを獲ったので、関係者一同ホッとしただろうね。関係者っつっても、柔道の人から、テレビや新聞の人から、広告代理店やらいろいろだろうけど。
 でもそんなことは見てる側には関係ないわけで。

 つまんない試合だったよね。
 とくに57キロ女子決勝は、相手の反則で試合が決してしまい、しかもそれは「松本があまりに強かったから相手が反則を犯してしまった」て感じじゃなくて、なんか流れで禁じられた軸足を刈ってしまった、ていうような。あれ場外だしもうゲームは停まるとこだったし、重要な局面じゃなかった。

 これに比べれば、男子73キロ級決勝のほうが見応えがあった。ロシアの選手は突然見せた飛びつき十字固めで日本の子の腕を極めた。これは、日本の子の闘争心をくじいた強烈な一撃だったと思う。さすがはコマンドサンボの国だ。その後の有効を獲られた局面より、ここが面白かった。

 いいな、と思ったのは3位決定戦。女子のアメリカ対イタリアは、一瞬の小内刈り一本良かったよね〜。小さい選手が大きい選手を投げるのはほんと気持ちいい。
 男子のフランス対韓国、これもサドンデス技ありだから一本と同等だよね。決まり手は大外刈りらしいけど、よくわかんなかった。返し技だろうか。リプレイが見たかったけど、日本の放送は次の試合の松本の顔ばかり映すもんだから。

 柔道において「技が決まる」って瞬間はものすごく大事だと思うのだけど、日本のメディアの興味はそんなことじゃなくて「メダルの色」だけにあるのかな?

◆なぜ国際試合はつまらないか
 問題は、ほとんど技が決まらないのに勝負がついていく、このフラストレーションだろう。
 これはやってる選手も辛いと思うよ。
 どんなに技を磨いても、結局国際試合では守りが堅い選手が勝ってしまう。しかも国際柔道の場合、「守りが堅い」というのは「相手の技をすかす」「相手の技を返す」「相手の技を受けて動じない」ことじゃなくて、「相手に技を出させない」「自分も技を出さない」「相手のペナルティを誘発する」ことだから。

 攻めない闘いを延々見せられる、やらせられる、ってどーよ??
 こういう展開になるのは、とくに国際試合に多い。国内の、高校柔道や、日本選手権ではここまでひどいことにはならない。国際試合は細かいポイント制になってることが、問題なのだ。
 延長戦をサドンデスにしたり、消極性への指導をまめに入れたり、今回みたいにジュリーを導入したりとか、大会ごとにいろいろ工夫しているようだけど、全然おもしろくならないですよね。

 日本人だけじゃないと思うんだが、柔道を最初心者は、まず受け身をやり、次に足払いなどの崩し技、大腰とかの基礎的な投げ技を習うと思う。投げたり投げられたりの面白さって大事じゃないかと。
 だから、シビアな国際試合が、相手の技を封じる、自分有利の組み手に持っていこうとする組み手争いになっていくのも仕方がないことだ。
 だが現状では、組み手争い→不十分な形からの掛け逃げ→相手が指導を食らうのを誘う、という非常にセコいやりとりになっている。
 これ、つまんないし、柔道の本質じゃないと思うんですけど――!
 行動経済学じゃないけど、柔道の国際試合って、勝利への戦略が「ポイントを取ること」の一方向にしかないからだ。
「技を決めること」が決定的な勝利要因になるよう、システムを変えなきゃいけないのだ。

◆もう強制的に組ませてしまえ
 組み手争いはもう禁止にしてはどうか。
 たとえば、ノーマルな試合時間5分では組み手争いをしても良い。だけど、延長に入ったら、強制的に組ませてしまうのだ。相四つでも喧嘩四つでも、釣り手と引き手を両方持たせることは可能だろう。主審が立ち会って、四つの手がしっかりと相手の胴着を掴んでいる「相手十分、自分十分」の態勢を確認してから、「はじめ」とするのだ。
 こうすると、相手を崩すところからゲームが始まる。
 自分から組み手を離したら、指導を与えよう。
 だが、この指導はポイントにはならないことにする。
 セコいポイントを稼ぎ合う柔道なんか、見たくないからね。

 こうしよう。組み手で消極的とされて指導を食らったら、「相手十分、自分不十分」の態勢で組んで、試合再開にさせる。
 たとえば、指導を食らった選手は釣り手を離し、相手に釣り手・引き手を持たせた状態からリスタートするのだ。
 これは怖いよー。

 せこい組み手争い、差し手争いじゃなくて、堂々組んでからの力比べを見たいものだ。
 そして、相手を崩し、投げ、相手の背中を畳に叩きつける瞬間が見たい。
 バルセロナ古賀稔彦だったかな、利き手の反対側から背負い、担ぎ上げながらものすごいスピードで態勢を修正し、担いだ頂点からはもう芸術的な勢いで相手を投げてしまった試合があったよね。ああいう瞬間が見たいんだよな。
 あるいは、ヨーロッパの中量級が大好きな、すくい投げ・肩車・裏投げ・移り腰といった、非テクニカル系の力業。背負いを裏投げで投げ返すような、ちょっと大味かもしれないけど、問答無用の力比べが見たい。

 あとね、猫だましからの双手刈りとか、そういうのも見たいね。大舞台で猫だましやってほしい。

 システムの話に戻すと、延長戦にかぎって「場外」を取らないとかね。本来、取っ組み合いの殺し合いで「ここからは場外です、リスタート」なんて局面はないわけで。畳から転げ落ちる寸前まで取っ組み合いさせようよ。
 それから、背中の大きなゼッケン(?)はどうかな。せっかく胴着の色変えたんだから、あんなに大きなゼッケンは不要じゃない? 硬いゼッケンが襟元まで来てると、奥襟を掴みにくいと思うんだよね。そもそも2着の胴着を使い分ける時点で、試合ではみんなゴワゴワの胴着を着ることになってしまい、これも試合をつまんなくしてると思うのだ。

 今のままじゃつまらない。何より、選手たちの闘争心が、違う方向に向かわされてる気がする。
 失点をせず、うまく逃げたほうが勝つ、なんて競技はつまらない。
 力を出し尽くし、ぶつけ合って、どちらが強いかを比べてもらいたい。
 外国の柔道ファンも、同じこと期待してると思うよ。

 今日は一本で決まる試合が、少しでも多く見れますように!