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新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

完結させることが良い、とは限らない。鑑賞「凄ノ王」永井豪ほか

某日、『凄ノ王 超完全完結版』(講談社)を読んだ。全6巻。
「凄ノ王」は少年マガジン連載時はあまりにも唐突な未完で終わっており、僕の漫画鑑賞の師匠・珠樹さんは、それが如何に衝撃だったかを熱心に語ってくれた。僕は貧乏だったので週刊漫画雑誌は買ってなくて、知らなかった。後に岡山・奉還町のマンガ喫茶「馬酔木」で読んで、その凄さにおののいた。

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永井豪は「手天童子」できれいに、本当にきれいに着地を決めて物語を終わらせたので、まさか次の「凄ノ王」がこんな終わりになるとは誰も思わなかったのではないか。『超完全完結版』1巻には作者あとがきがついてて、「はじめから未完に終わらせるつもりだった」と書いてあるが、ほんとかどうかはよくわからない。

しかし、今回「完結」したバージョンを読むと(といっても少年マガジン版凄ノ王を完結させた、という触れ込みで、後の角川「凄ノ王伝説」とは違う作品、ということになっている)、なんというか、「やっぱこれも未完じゃん」というか、「最初の未完の終わり方がいちばん良かったよ!」と強く言いたくなるのである。

「超完全完結版」6巻のうち、少年マガジン連載部分は5巻までで、最終6巻は一部「凄ノ王伝説」からの使い回し、他は書き下ろし、ということだが、書き下ろし部分は絵が上手くなっていて(これ褒めてないから!)、あるいはアシスタント?が描いてて、つまらないのである。
さらに、物語が東京都下M市の耳宇高校から宇宙へと飛び出し、ものすごくスケールアップしていく。しかし、物語のスケールが大きくなるにつれ、物語は失速停滞していく。はっきり言うと、宇宙に飛び出して宇宙戦艦と邪神凄ノ王が戦う描写は全然おもしろくない。

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それよりも面白かったのは、耳宇高校の帰宅部少年・朱紗真吾が徐々に超能力に目覚め、学園を陰から支配する部団連合や不死団と順々に対決する、少年ジャンプ的展開部分。とくにボクシング部主将・合田との対決は素晴らしい。
合田がまた良いキャラなんだよね、試合で相手を殺したことがある、今回も部団連合が真吾を制裁する尖兵として登場したというのに、実はフェアで思いやりもある、殺すはずの真吾の身を真剣に心配したり、非常に複雑なキャラになっている。「あいつがもう少し弱かったら、殺さずに済んだ……俺が本気を出さねばならないほど強かったのが命取りだった」だったかな? かっこえ~! このへん作者はノリノリで描いてて、それが読者にも判るので嬉しい。ほんとにもうワクワクしてしまうのだ。

それが、完結させるためのパートになると、精彩を欠くんだよね。
少年マガジンの終盤、邪神が街を破壊し、人々が鬼へと変貌していき、宇宙の彼方から八岐大蛇が地球に向かってくる、絶望的な破局の予感が充ちてきたなか、かつての雑魚キャラ・モヒカン不良の青沼が鬼に変貌して閉鎖病棟から瓦礫の街にさまよい出て、灰燼のなか、復活した真吾と邂逅する場面はほんとうに素晴らしい。ここで未完のまま連載終了となるのだが、それがどんなに素晴らしいことか、「超完全完結版」を読むとよくわかるのだ。完結させることは蛇足なんだ!ということがわかる! 永井豪先生、素晴らしいです。

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世界史に残る名作「デビルマン」は超ウルトラCの着地で完結してるけど、よくよく読むと物語の大きな部分は全部端折ってあるんだよね。だから良いんだというか。

名作になり損ねた問題作「バイオレンスジャック」は、週刊・月刊マガジン連載部分だけだと間違いなく名作だと思う。漫画ゴラク版は壮大な蛇足を続けた挙げ句、まあやっぱりあってもいいかな、と思わないでもない。
僕はゴラク版単行本全31巻のうち、30巻までを買って持っていた。1994年当時池袋芳林堂では最終刊を売ってなかったのですよ、なぜか。
で30巻の終わり方はというと、決起軍の包囲攻勢に遭ったスラムキングが何もかも棄てて脱出し、「東で待つ者のもとへ」という予言に導かれていくと、遠くに佇むジャックのシルエット、キングは斬馬刀を抜く(二度と鞘に納めぬ決意で)というシーンで終わってるんだよね。それがいかに素晴らしい余韻を残したか!

数年後、完結31巻を読んで、たしかにあの謎解きはすげーっ!と思ったけど、正直30巻で終わってる方が幸せでした。とくに老人になった逞馬の回想でページを閉じる、という終わり方は最悪でした。

昨今の、何十巻にもなる長期連載ばかりの漫画は、永井豪先生の足の爪の垢を煎じて飲むべきだろう。あの至高のテンションの一瞬をめがけて突っ走り、最後は投げっぱなしにする永井豪先生はやっぱり天才でした。

デビルマン 全5巻セット 講談社漫画文庫

デビルマン 全5巻セット 講談社漫画文庫