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新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

今の新聞は、現実を記事にしているのか?……宮古島市長選の記事を読み比べた

ちょい古い話になるが、先の年末年始は宮古島に居た。正確には、宮古の隣の伊良部島。今は伊良部大橋で往き来できるので便利だ。離島感がしない。

ある日、伊良部大橋で宮古側に渡ると、橋のたもとで幟を振って、通行する車に手を振っている人がいた。のぼりにはひらがなの人名。どうも、年明けにある宮古島市長選挙の事前運動らしかった。誰だったかは忘れたが。

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以下は、朝日新聞報ずる宮古島市長選の概要。

www.asahi.com

これをあらあら要約すると、「辺野古その他で政府と対立する翁長県政が支持されるかどうか」「ミサイル部隊など陸自配備計画の是非」が最大の争点、と読める。

だが僕には違和感があった。どうも、陸自の配備は宮古島市民の間ではあんまり話題ではない感じなのだ。

たしかに陸上競技場の近くには「自衛隊配備反対」の立て看や捨て看を見かけた。だがあの辺りには沖縄県職員組合の事務所?があり、そこが立て看の中心地なのだ。県教組は必ずしも宮古島出身者で構成されているわけではない。

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次に掲げるのは、開票翌日の、現職3選を伝える沖縄タイムスの記事。

www.okinawatimes.co.jp

あらあら要約すると、「争点は自衛隊配備だったが、大型建設事業での利益誘導を掲げる現職が僅差で勝ってしまった」という処か。

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最後に掲げるのは、宮古島の地元紙・宮古毎日の記事。これは投票前日「4陣営が打ち上げ」をした、という運動期間中の総括だ。4陣営、という、つまり保守も革新も2つずつに分裂した奇怪な選挙だったのだ。各陣営のスタンスをコンパクトにまとめてある。

www.miyakomainichi.com

これ見ると、「自衛隊」を言葉にしているのは「オール沖縄」候補1人だけ。残り3人は自衛隊という言葉すら使ってない。

候補のうち1人は「自衛隊配備反対」を訴えたが、他の3人は違うことを訴えていた、ということではないのか。つまり宮古島市民にとって切実だったのは、「自衛隊配備とは違うこと」ではないか?

(※ちなみに宮古島には地元新聞が「宮古毎日」「宮古新報」の2紙ある。本島に「沖縄タイムス」「琉球新報」が並び立っているのと似ている。でもスタンスは本島ほどガチリベラルではないようだ)

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遠い南の島の選挙、報ずるメディアが内地に近くなればなるほど、現地の空気とは違うものが、現地のリアリティとは違うものが記事にされてるような気がする。

翁長知事は本島や東京大阪では大人気だが、宮古八重山などの離島では人気がない。東京大阪の新聞には、「沖縄」というと「=翁長県政」と見えるかもしれないが、そんなの関係なく日々を送っている島民が大半なのだ。

本島の人たちの、素で平和を希求する感じは尊いと思うが、一方で、JALANAの飛行訓練がなくなって大不景気になってしまった伊良部島を見ると、かつて下地島空港自衛隊を誘致しようとした旧伊良部町議会の気持ちもわかるのだ。

(※この決議は後に否決されている。また民間機訓練終了と決議は時系列が違う。伊良部島は大橋開通で宮古からの観光客が激増して飲食店はバブル的景気になったりした)

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政治の実際とか、民情とか、経済とか、すべては白黒で割り切れたりしない。グレーゾーンの中で調整や妥協を積み重ねるのが現実のはずだ。だがTwitterで「#宮古島市長選」を検索すると、争点は自衛隊配備一点、という感じになってしまっている。

twitter.com

内地の新聞はめんどくさい現実を、わかりやすい二元論に還元し、わかりやすい構図で見せてくれる。内地の新聞はたしかに面白い。面白いが、それは島の民情とはかけ離れている。プロレスなら見て面白ければそれでいいが、島の現実をプロレス的に報じるのはどうなのか。

それに踊らされる内地の人々…Twitterのように限られたソースだけで見ている人々は、もう現実の島民とはまったく関係ない〝幻の宮古島〟しか見てない気がする。

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MXテレビの番組「ニュース女子」が「沖縄ヘイト」言説を放映した、という話題が盛り上がっているようだ。僕はテレビを見ないのでよく知らない。

「沖縄ヘイト」という言葉の他に「構造的沖縄差別」という言葉もあるのは知ってる。

だけど、島の選挙の争点を勝手に「自衛隊基地の是非」にしたりするのも、「構造的な沖縄への偏見」ではないのか。

とくに内地の新聞は、社論に合わせて現実をかなり角度をつけて切り取り、トリミングし、全体像からはまったく違う画にして見せているような気がする。

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新聞が事実を報じずに、売れる記事、ウケる記事、ポスト真実、オルタナ事実を書いているのは、まるで戦前みたいだ。と思いますが如何。

(※このエントリは篠原章先生のFacebook投稿にインスパイアされて書きました。)

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