新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

スピルバーグの魔術に騙されてはいけない、とよくわかる「戦火の馬」

先日やっとDVDを見た。スピルバーグの泣かせる戦争映画。
鑑賞中ずっと違和感が付き纏ったのだが、ネットでいろいろ感想を読んでも解消されなかったところ、Amazonの★1つレビューを読んで納得。

このリンク先のレビューで「★1つ」には3つの投稿があるが、うち2つは北海道の人のレビューだった。二つとも「馬という動物への間違ったイメージ」「動物映画にありがちなご都合主義」と手厳しい。
ネット上の感想はほとんどが「感動した」「スピルバーグ健在」といった好意的なものばかりなので、僕も搦め取られそうになったが、なんとか踏みとどまった。
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スピルバーグ、相変わらず「見たいものを撮る」という癖が抜けないんだな。
「そこにあるものを撮る」のではなく、「見たいものを撮る」、この違いがわかるまで、僕はずいぶん時間が掛かった。
「そこにあるもの」だけで「自分の見たいもの」を作り出すのは、すごく難しい。だから、つい人は「そこにないもの」を撮ってしまう誘惑に負ける。
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ずっと以前、ちょっと競馬をやっていたのだが、馬券を選ぶ決め手が最後までわからなかった。パドックで美しく強そうに見える馬を買えばいい、という人もいたが、外見と強さは比例するのか、全然わからなかった。 目利きにはそれがわかるのだろうか? 今でもわからない。
この映画ではみんなが主人公の馬をひと目見て「名馬だ」と惚れる。外国人は僕なんかよりずっと馬に馴染みがあるのでわかるのだろうか。
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それでも、WW1の終盤は、馬は自動車にリプレースされ、無用の長物になっていたことが少し描かれててよかった。
なお、日本陸軍では大東亜戦争でもこの映画序盤のように、騎兵や輜重や砲科で馬が重用されていた。「愛馬進軍歌」に歌われたように(この歌にはあの栗林中将がちょっと関わっている。良い歌だ)。
だから馬と兵士との心理的紐帯はよく描けているのだが、それに馬がきちんと応えてくれる、というのはどうも嘘くさい。 とても綺麗な映画だけど、駄作だとしか云えない。

軍馬について、日本にもすぐれた小説があった。連作の中の一篇なのだが、帚木蓬生の軍医小説『蠅の帝国』所収の「軍馬」である。
帚木のこの連作は、実在の軍医たちが遺した数多くの論文や手記を元に書かれている。医師である帚木は、あの戦争を医師はどう生きたか、をこの連作で描き込んでいる。「軍馬」は、日中戦争にいった軍医の物語なのだが、軍馬に対する情熱が嵩じて馬術の達人になってしまい、本職の騎兵を凌駕してしまった、という愉快な話。しかしここで描かれる軍馬の姿はファンタシーではなくリアリズムである。

 この2冊は全部、軍医の物語です。