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新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

大河ドラマ「八重の桜」が始まったね! 期待以上の出来で、銃オタ・歴オタ・幕軍オタの涙を絞りまくってるんだよ!

 一昨日の日曜、大河ドラマ「八重の桜」1回が放送されたね。みんな見た? どうだった?
 僕は、いやー、良かった!最高!だったなー。

 アバンタイトル(題名表示前のパート)、意表を突いてアメリカ南北戦争から始まったのが良かった。最初は呆気にとられたけど、あそこで使われた膨大なライフルの中古が続々と幕末の日本に流入して戊辰戦争で使われるわけで、日本の歴史は世界と無関係だったわけじゃない、てこと。
 南北戦争からシームレスに会津戦争鶴ヶ城籠城戦へつなぐのも痺れた。
 ラトビア(ロケ地クレジットあったね)の俳優さんたちによる南北戦争は、ああ見えて安くできるはずだ。衣裳や道具はアメリカから取り寄せてもいいし、もしかしてアメリカ映画が欧州でロケした道具が近くにあるかもしれない。でも戊辰戦争を撮るのは大変だ。道具は国産になるし、俳優も日本人が必要だ(人件費高いよ)。初回だから予算に糸目を付けずに撮ってるのかもだけど、気合いがビシビシ伝わってくる画だった。

 めんどくさがってテレビをiPhoneで撮った写真なんだけど、わかるかな、ヒロインが持つスペンサー・ライフルのマガジン(弾倉)交換シーン。チューブ型7連発弾倉なのだ。銃オタとしてはほんとに嬉しいシーンだ。

 これも嬉しいシーンだ。装弾するためにレバーを引くと、機関部が露わになるのだ。良いプロップ(小道具)ガンに見える。改造実銃かな?
 この直後には官軍の持つ後装式ライフル(スナイドル?)の機関部もアップになったりして、オタ歓喜感涙なのだ。ドラマとして当然こだわるポイント(ヒロインは女ライフルマンだからね)ではあるけれど、ここまで銃を正確に描いた歴史ドラマってあったか!?

 幕末史を読んでいくと、意外にこういうところに落とし穴がある。
 ドラマ本編ではヒロインの兄・覚馬が江戸からゲベール銃を持ち帰って披露していた。これは前装式・滑腔銃身で、火縄銃とさほど性能差はないらしい。ただ、撃発機構が火縄から雷管になっており、使い勝手が非常に良い(撃鉄のモメントが火縄より大きいので精度的にはマイナス、という説も聞くが)。この時代の標準的な銃は火縄もしくはゲベールだった。
 だが、施条銃身・椎の実型銃弾の前装ライフル、ミニエー銃が台頭して来、こいつがほとんどゲベールと使い勝手は違わないのに性能的には段違いで、勤王佐幕問わず重要な戦略兵器となった……。ということなんだが、この後エンフィールド銃、シャスポー銃、ドライゼ銃……とかが出てくると、もうお手上げだ。金属カートリッジを使う近代銃ならまだしも、半近代的な銃って憶えにくいんだよね…。僕は飛行機でもレシプロ機は憶えられないたちなんだ……。
この本とか、ミニエー銃とシャスポー銃の違いをめちゃ書き込んでるんだけど、正直なかなか全体像が頭に入らなかった。

 今回の大河「八重の桜」は、幕末の重要な戦略兵器である「歩兵銃」について、きっちり学べる、嬉しいチャンスなのだ。

 ヒロイン綾瀬はるかが懸命にスペンサー・ライフルを操っているのが泣けた。撃発の瞬間どうしても瞬きをしてしまうのが残念だが、これは反射なのでかなり上手い人でもやってしまう。それより、左目を瞑るのが気になる。両目をしっかり開けて狙う方が楽で正確なんだよね。幕末の砲術マニュアルが残っていれば、当時どうしてたかわかるんだけどな。がんばれヒロイン。次に戦闘シーン撮るときは、さらにパワーアップした女ライフルマンになっててほしいな。

 今回の大河は昨年の作品に比べると汚しが少なくて画がきれいなんだそうだ。「清盛」は総集編しか見てないので違いがわからないのだけど、今年の大河は見ていて非常に気持ちいい作品になってると思う。
 この“見ていて気持ちいい”というところが大事なのだ。

 今の時代、そこにないものでもCGで描くことができる。考証も昭和の時代劇全盛期と違って、非常に正確に綿密になってきた。髷ひとつ取っても、ボテッとしたダサい髷は少なくなった。凄いと言われる黒沢映画だって、戦国の武士が江戸ものドラマと同じ羊羹みたいな髷のカツラをつけていたのだから、こうした技術的な進歩はものすごいものがある。

 でも、ドラマに重要なのは考証じゃないのだ。考証は、素晴らしいドラマを引き立てるもの、あるいは足を引っ張らないためのもの、と考証家の先生も本に書いていた。武士が武士らしいそろりとした足の運びをしていたら、挙措が現代人ぽくなく武士らしければ、より雰囲気が出るじゃん? 当時の人を画面で見ているかのような錯覚を覚えるじゃん? 見ていてわくわくするじゃん?ということ。

 今回、幼いヒロインが来客に茶を振る舞うため、襖を開け、敷居を踏まぬよう注意深く進んでいたシーンがあった。幼児とはいえ武士の家の子、という雰囲気が出てた。見ていて気持ち良かったのだ。

 このドラマでは現代と同じ磐梯山が映る(磐梯山は明治に大爆発して山容が変わった)。なぜCGで当時の山容を映さないのか、考えてしまったが、おそらく制作者には何らかの意図があるのだろう。
 秋の磐梯山、初冬の磐梯山は、現代の山容だが、本当に美しく映っていた。ここにCGの筆を加えるのは少し畏れ多いかもね。

 このドラマは、銃オタや考証オタにも嬉しいけれど、僕がいちばん期待しているのは、「会津の士魂」「会津の赤誠」を描いてくれることだ。「赤誠」はCGでは描けない。気の利いたセリフ一つや二つでは見えてこない。役者たちが小さな芝居をこつこつ積み上げ、その挙げ句にやっと見えてくるものなのだ。

 西田敏行福島県出身)の会津弁は、ずっと聞いていたいような魅力に溢れている。会津の野山で遊ぶ子供たちの姿も、ずっと見ていたい。今回のヒロイン(幼い八重)は素晴らしかった。泣かせる芝居をしてくれたじゃん(脚本も良いけどね)。
 だが僕がいちばん嬉しかったのは、松平肥後守容保公を演じた役者さんだ。綾野剛というの? 申し訳ない、僕は疎いのでこの人知らなかったが、現存する容保公の姿にそっくりだね。とくに陣羽織に烏帽子姿の彼は、wikipediaにも載ってる京都守護職時代の容保公とクリソツだ! 地下のご本人も喜んでおられるのではなかろうか。
 姿かたちだけでなく、大藩を受け継いだプレッシャー、藩の士と民を安んずる責任、迫り来る時代の難局などなどを上手く表現している。好きだなあ。今回ずっと見ていたい役者ナンバー1だ。

 クリソツといえば奥田瑛二演ずる佐久間象山も、象山本人が「ん、許す」と納得するレベルではなかろうか。
 兄・山本覚馬を演じている役者も良い。西島秀俊、好きな俳優になったなー。田舎から出て来た純朴な侍、ちょっとダサい。だけど誠意と情熱だけは誰にも負けていない。そんな人間像が伝わってきて温かい。

 初回は大サービスでスペクタクルシーンを見せてくれたけど、これからはそうはいかないんだろうね。いろんな制約があるなかで、日本で最大の連続ドラマが作られていく。すごいことだなあと思う。これをこれから一年、目撃できるんだから、トクだなあというか嬉しいなというか。
 
◆オマケ。京都・黒谷の会津墓地に行ってきました

 田舎に帰るついでに京都で途中下車し、東山に近い金戒光明寺に行ってきた。

 ご覧のように、氷雨に濡れそぼちた会津墓地は鬼哭啾々という感じだった。

 新選組の墓?がある壬生寺とかはファンが押し寄せてすごい数の絵馬が奉納されてるけど、ここには何もない。会津関係者が手向けた花がわずかばかり。だけど、それがたまらなく温かい。

 会津墓地のお墓に戒名はない。仏式ではなく神道で祀られているからだ。墓石の側面には文久・元治・慶應の年号が刻まれている。

 容保公を御守りして京に上り、黒谷に本陣を置いて6年あまり、鳥羽伏見の戦い以前にすでに二百名以上が亡くなったという。常駐していたのは千名くらいかな? すさまじい死亡率だ。
 墓石は石、物質にすぎない。しかし、ここには何か魂のようなものがたしかに存在すると思った。ここに何があるのか、彼らはなぜここにいるのか、それがこれから、大河ドラマで描かれるわけですね。期待、です。れ