新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

【空想】消費税率上昇で、国民の生活はこうなる?【妄想】

 今日の午後、野田(下の名前は知らない)総理が「政治生命を賭ける」と称する消費税増税法案が可決されるらしい。けっこうなことである。
 3%や5%、消費税を増税してみたところで歳入は大して増えないし、濫費の仕組みは変えてないのだから、財政赤字体質は変わりはしない。そんなこと、みんなわかってるだろうに、なんでこんなことに「政治生命を賭ける」とか「日本の破綻を回避せねば」と一所懸命になれるのか、僕にはよくわからない。

 破綻が避けられないなら、弥縫策を弄するよりも、破綻した方が良いのだ。1868年と1945年に日本は破綻したけれど、まあいろいろ民草は苦労したけれど、日本はつつがなく続いてきた。もう一回破綻しても、僕たちは苦労するけれど、若い人たちはぼくたち世代ほど深い傷も負わず(若者は資産が少ないからね)、より公平な未来を手に入れられるはずだ。(山田順氏のブログエントリを参照。僕はこの人の主張にあまり与しないけれど、このエントリには頷く)

 けどまあ、「エンドユーザーは「以前のままで良かったのに、、、」という考えに執着する」(CNET JAPANより)と言うとおり、環境の激変を好まない。このままゆるゆると破綻へ向かい、結局大怪我する方向をみんなして選ぶのだろう。

 そもそも、なんで消費税を3%とか5%上げることに野田(下の名前は知らない)総理がこだわるのか、僕にはよくわからない。「政治生命を賭けて」云々の文脈も僕にはわからない。「増税できなかったら、政治生命を自ら絶つ」のか。でも結局、消費税を増税した結果、次の選挙で彼は落ちるだろう。その次で再浮上できるか、そんな未来のことは皆目分からない。どっちみち、政治生命は終わってるんじゃん。
 ゾンビというかレームダックというか、すでに政治的に死にかけの野田(僕は名前を知らない)総理は、いったい誰のために消費税を増税しようとしているのか。

 一つには、「増税したほうが良いですよ」と彼に耳打ちした人のため、なのかな。財務省の官僚。消費税増税野田総理独自の発案ではないことはみんな知ってるし、本人だって隠さないだろうし。
 官僚は、日本に破綻してもらっては困る代表者だ。日本が破綻しさえしなければ、なんとか安泰なのが、官僚とか御役人。とくに、地方自治体は夕張市みたいに単独で破綻することがあるので地方公務員はまだ先行き不透明だけれど、国家に奉職している上級官僚はそんなことない。だから、現状に問題があるシステムでも、大きく改変させず、延命策をとりたがる。
 延命策の結果、傷口がものすごく大きくなることは、大東亜戦争でよくわかっただろうに。過ちはくり返される。今はインパール作戦あたりかな?
 財務官僚はほくほくだろう。野田総理は政治生命を棒に振って、今後の増税への道筋をつけてくれた。3%増税が実行されたら、イタリアみたいに消費が「増税したのに歳入が減った」って事態になるだろう。だが、いいのだ。こんどは10%、15%、20%へと上げていけばいい。増税路線を決めたのは野田総理だ。悪いのは私たち財務官僚じゃないよ、と。


 僕はこういう大きなことにあまり興味がない。
 興味があるのは、僕らの身の周りがこれからどういうことになるか、だ。
 どう増税しても日本の財政破綻は避けられないし、それが早いか遅いか、疵が浅いか深いかだけの違いだ。
 僕は空想癖があるので、いちばん嫌な未来、深い傷を負って、なかなか来ない破綻を待ち続ける生活、というのを想像してしまう。

 何を買っても今より15%多い消費税を取られる生活。ローソン100の店内放送も「ひゃくひゃくひゃく円♪ ごめんね税込み105円」から「ごめんね税込み120円」になり、語呂が悪くなって消えた。いやそもそも百円ショップという業態がその頃も流行っているかどうか。中国の人件費も十分に高くなってしまい、ベトナムインドネシアビルマバングラデシュと生産地は転々とし、かつての中国製のような品質は担保されなくなってるのではないか。マッチを擦ると5本に1本くらいしか火が点かない、というのはケニヤで経験したことだが、あれはインド製マッチだった。同じことが日本でも起きるようになる。

 酒税は消費税とは別に上げ放題で、酒造メーカーは果敢に第四・第五のビールなどを開発してきたが、それらも軒並み本体に倍する税金を課せられ、酒飲みは何を飲んだらいいかわからない。高校生の間で流行っているのは、保健室から日本薬局方のアルコールを盗んできて、清涼飲料で割って飲むことである。なんてね。

 自動車は、消費税増税直前に駆け込み需要で売れすぎてしまい、以来十年、新車はほとんど売れない。経営者に人気だった豪奢な輸入車も、経費が認められにくくなってきたので不振だ。そもそも外国メーカーが右ハンドル仕様を作るのを嫌がるようになった。たいして売れないのに過剰品質を求められるから。

 住宅も、新築の着工が減った。公共事業も減ったので土建業はどこも瀕死だ。手に職のない若者に職人への途を用意してきた土建業だが、教育的機能や雇用促進機能はとうに失われ、手練の老職人の技も継承されないし、若者も職に就けなくなった。就職して十年、という最若手がいるが、新築の経験がない。あるのはリフォームと取り壊しの経験だけだ。
 都内の住宅地は、相続税・贈与税の増税のせいで、世代交代ができにくくなり、老夫婦が住んでいた庭付き一戸建てが次々と空き地になっていった。虫食いのようになった住宅街では、近所の幼稚園・保育園が閉鎖され、小学校が統廃合されていく。物納される土地は増えるが、役所も予算がないので公園を作ることもできない。子どもも遊ばない、草ぼうぼうの空き地ばかりが増えていく。

 そんななか、空き地の一角に停めたライトバンから荷を下ろし、肉や野菜、缶ビールなどを売っている男がいる。近所の家々からわらわらと人が集まり、商品が飛ぶように売れる。なぜか。西友やオーケーよりも安いからだ。肉は消費期限ぎりぎり、野菜は傷物が多い。缶ビールや包装された食品は「アウトレット」「わけあり」とかすれた赤文字がラベルにプリントされている。この行商人は、不定期、週に一度くらいの割合で姿を見せる。その都度売っているものは違うが、どれも安い。2割の消費税を乗せてもまだ安いため、非常に人気がある。だが、いつ来るかわからないし、電話番号も教えてくれない。
 そう、彼は闇商人なのだ。彼自身は末端にすぎないが、上には闇の問屋、闇の仲買人がいて、大メーカーや農業法人の担当者とひっついて、廃棄する商品や、輸出に回すはずの商品を横流ししてもらっている。それがばんばん売れるので、いまやメーカーの仕損じ品や作業屑はものすごい割合になっている。企業はそうして利益を出さないようにし、世界一高い法人税をなんとか払わないように、社員への給与もなんとか払わないようにしている。社員はおのおの勝手に、自分の裁量の及ぶ範囲で、横流しや裏取引に励み、生活給をどうにかこうにか手にしている。
 闇の仲買人、闇の問屋は、かつて暴対法や暴排条例で全滅したはずのやくざたちだ。彼らのオヤジや兄貴世代は、バブルも経験したし、金銀のバッジや、代紋の入った名刺、ヤートラと言われた独特のファッションで見分けがついた。だが復活した新世代やくざは、見た目はごくふつうのブルーカラーだし、威嚇的な恰好もしておらず、愛想も良い。
 彼らはごくごく真面目な商売人だ。扱っている商品の見てくれはわるいけれど、品質はそれなりに良いし、お客を喜ばせようと努力もしている。もう一つ、彼らが全力で努力しているのは、なんとか税金を払わないようにしよう、ということだ。彼らは一切の許認可を得ていないし、自動車免許だって持っていない。ライトバンの名義もよくわからない。仕入れ台帳はあるけれど暗号化されており、売上に関する数字は一切秘密だ。
 かつての暴力団は、大企業が業界再編で巨大化する競争をしたように、全国制覇を目指す巨大組織と、地元の伝統組織との間での軋轢・競争が、全体を発展させるエネルギーになっていた。だが政府による完全な非合法化の挙げ句、アメリカのマフィアのように「構成員であることがわかった時点で逮捕、絶対に有罪、実刑」と大弾圧を受け、潰滅を装って地下に潜ってしまった。もう彼らの実態はわからない。
 職に就けない若者は、こうした移動販売車のアルバイトなどを経て、地下やくざ組織に関係していく。
 かつての暴力団は、ごく注意深く、暴力をハンドリングしていた。拳銃を持てるのはメンバーでも限られた人間であり、誰を殺傷するか、いつ暴力を使うかは、上の権限の者が厳重に吟味し、許可を出したうえでなされていた。だが地下に潜伏したやくざたちは、とりわけキャリアの浅い若者たちは、容易に手に入る拳銃を乱射するようになった。そもそも、拳銃不法所持どころか、やくざ組織に関係しているだけで有罪なのだ。だったら、暴力で相手を黙らせる、官憲を殺傷することで逃げおおせる、という選択も、合理的になってくる。なにしろ不景気なのだ。昔のように、おとなしく勤め上げたら幹部になれる時代じゃない。日本のやくざも、世界水準の暴力を振るうようになったのだ。拳銃の発砲は日常茶飯事だし、抗争の際は小銃や機関銃など桁違いの火力を持つ武器が使われる。イラクから密入国してきた元テロリストを雇った組がある。若い衆の身体に爆発物を巻き付けて敵陣に乗りこませる新戦術を指導しているという。
 それもこれも、高い税金のおかげで、何もかもが、麻薬や覚醒剤と同じくらい利幅の大きい商品に変身したのだ。脱税して売れば、どんな商品だってバカみたいに儲かるのだ。脱税商品は、少なくとも、正規の商品より最初から20%多い利幅が保証されている。この利幅を守るためなら、章章の暴力は許容される。というか、価格競争力に暴力の競争力を付加した者だけが生き残るのだ。

 政府の公共事業はとうに発注が絶えた。道路が壊れたり、ゴミが散乱したりしていても、誰も片付けない。役所に通報しても「今期の予算がもうないんですよ」で済まされてしまう。仕方がないので、移動販売車の若者に「誰かに頼んでもらえないか」と泣きつくと、翌日にはゴミが片付けられ、どこからともなく来た重機が道路を直してくれる。その後で、付近住民の家々には実費を請求する若者が訪れる。拒むことはできない。拒めば、ペットが死んだり、窓ガラスが割られたり、移動販売車の物を売ってもらえなくなったりするからだ。

 政府の歳入は減り続ける。税率を上げても税収は増えないことに、やっと気づいたが、どうすることもできない。経済の地下化・非合法化は進む。法人税が高すぎるからだ。目端の利く企業家は、合法部門と非合法部門とを分けて経営するようになる。スティーブ・ジョブズ孫正義を尊敬する若者が、「彼らも昔は違法品・グレーゾーン品を扱っていたんだ」とうそぶき、より効率の良い暴力事業・非合法事業に精を出す。中国人富裕層のクレジットカード情報を盗むのが流行ったりする。

 ……なんてね。映画「ゴモラ」を見たときからずっと、こういうことを考えていました。(重要な映画「ゴモラ」(イタリア、2008)
 今は戯言にすぎません。今は。
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