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新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

他人の「映画ベスト100」に勝手なコメントをしてみる

 尊敬するブロガー、teruさんが「私の映画ベスト100」というエントリを書いていた。知ってる人が挙げた私的な映画ランキングは、「世界中の人にアンケートを採ったベスト100」なんかよりずっと興味深い。
 だいたい、僕は偏屈で自我が肥大した困ったちゃんなので、「今年の映画ベスト10」とか挙げられても興味もないし見たこともない、ということが多い。それでいて数年後にTSUTAYAで借りて観て感動したりするのだから、バカである。
 つまり、他人のことにはあまり興味がないのだ。だけど、知ってる他人のことには興味が湧くのを抑えられないものだ。だから他人の「私の映画ベスト100」を見ながら、横から勝手なコメントをしてみたい。

 なお、teruさんのベスト100は「監督は一人一作」という大変窮屈なルールになっていることをまず断っておく。

◆teruさんのベスト
1位「地獄の黙示録」……同意。実にいい映画だと思う。難解な後半について、「ブランドが太って現場に来たから苦肉の策でああなった。意図したもんじゃないし傑作でもなんでもない」という言い方があるけれど、「だから?」と逆に訊き返したい。十分面白いし魅力的だし、高校生の時見たけどよく納得できたけど。あれから三十年、見る度に発見があって好きだ。「ゴッドファーザー」もすごい映画だけど、コッポラで1本というとこっちになるのはわかる。

2位「地獄に堕ちた勇者ども」。ごめん。ヴィスコンティ見たことないっす。これに限らずヨーロッパ映画は疎いっす。語ダールもよく知らない(一、二度見たけど面白さがわからなかったような気がする)。劇場を間違ってテオ・アンゲロプスが上映されてるとこに入ったことがあって、これは驚くほど苦痛だったけど意外に面白かった、とも思った。でも自分から見ようとはなかなか思えない。

3位「愛の嵐」。ごめん、これも見てない。

4位「地獄の逃避行」……同意。ただ、テレンス・マリックなら「シン・レッド・ライン」の方が好きかな。マリック作品は「困ったことになってにっちもさっちもいかなくなった人」が頻出するけど、「シン・レッド…」は戦争という巨大公共事業の現場で様々な人が困る様が非常に面白い。また、自然も、日本兵の描写も美しい。なお「地獄の逃避行」は原題「Badlands」、スプリングスティーンも同じ題の歌を歌ってるけど、聖書の言葉を忠実に映像化した、アメリカらしいといえば“らしい”映画なのだった。

5位「ガルシアの首」…は未見なのだけど、ペキンパーならなんで「ワイルド・バンチ」じゃないのかな? 玄人好みなのかな。ところで関係ないけどトミー・リー・ジョーンズ監督作「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」はご覧になりましたか? こういうの、ペキンパーの影響ってないですかね。ところで僕はこの「メルキアデス…」は未見だけど、ショーン・ペン監督作品とか、有名俳優が小さなアートっぽい映画を撮ると、たいがいものすごく地味で、自分が仕事で出るような大仕掛けな映画には絶対ならないんだけど、それはなんでかなー? 制作費が小さいってだけじゃないような気がする。

6位「時計仕掛けのオレンジ」、好きですねー。キューブリックで僕が好きなのは「博士の異常な愛情」ですが(あの妙に勇ましいマーチと、エンディングの曲が好き)、「時計仕掛け」の音楽もいい。「スイッチト・オン・ベートーベン」だったかな? 第九の電子音楽とか、ウィリアムテル序曲とか、本当に失礼な使い方だと思う。パンクだ。

7位「天国の門」。長くて退屈な映画だったなー。「ディア・ハンター」も長くて退屈だったが。だけど、他人の宴会とかを覗き見するのは意外に面白くて、そういうシーンは大好き。

8位「ヘカテ」。フランス映画か−、1983年日本公開だから、学生時代によく行ってたフランス映画社の出張上映会にかかっただろうから、まかり間違ってれば見てたかもしれないが、今となってはなかなか縁遠いな。こういう作品のDVDはTSUTAYAにはないし。HMVは…もうないか。紀伊國屋書店ジュンク堂の映画書売り場にあるんだろうな。

9位「ロンググッドバイ」、ごめん、僕チャンドラーとかも読んでないし、面白さがよくわかんない。基礎教養の単位をゲタ履かせてもらって取ったようなもんだね。映画も当然未見です。

10位「許されざる者」…そうか、監督一人一作ならこれになるのか。僕はイーストウッドならつねに最新作が一番好きだな。そして僕はレオーネ作品もシーゲル作品も全然興味ないな。「ダーティ・ハリー」ってそんなに面白いか?と思うし。だけど、イーストウッド監督作は面白いと思う。最初に好きになったのは、たしかに「許されざる者」だったかもしれない。

11位以下は、知ってるやつだけにコメントつけることにします。
仁義の墓場」、そうか、深作欣二だとこれか。菅原文太出演作じゃないんだ。わかるけどね。僕は「仁義なき戦い代理戦争」か「新仁義なき戦い組長の首」が好きです。

「肉体の悪魔」、ケン・ラッセルって変な人だよね。僕が映画をよく見てた80年代は、「アルタード・ステーツ」「クライム・オブ・パッション」にみんなで夢中になってた。そして同時期に台頭してきたのがデビッド・リンチだ。ラッセルの打席の次にリンチが代打に起用され、大事な局面に凡打(「砂の惑星」)だったけど物凄く強い印象を残した、という感じ。後にリンチは大ヒットを連発するわけですが。

ブルーベルベット」、そうですね、わかります。僕が好きなのは「マルホランド・ドライブ」ですが。なぜって、こっちのほうが謎が解けたときの快感が大きいから。「ロスト・ハイウェイ」もいいですね。リンチ作品から僕はデビッド・ボウイルー・リードなどの、なんというか、アートなロックの気持ちよさを教えてもらった。

「タクシードライバー」、これはスコセッシ監督作というより僕の中ではポール・シュレーダーの作品だ。シュレーダーは変な人だと思う。不眠症だから深夜タクシーの運転手になる、なんて、寝言もいい加減にしろって感じの設定ではないですか? ただ、戦争から帰ってどう生きていいかわからない若者の感情には共感できる。ただし、作品内でトラヴィスが帰還兵であることは明言されていない気がする。それどころか、彼には妄想癖や虚言癖があるみたいなので、単なる引きこもり青年だった可能性もある。そう思って見直すと、とても今日的な映画に見えるよーな気がします。

「アメリカングラフィティ」、ルーカスだとこれですか! お見それしました。まあ、僕も「スター・ウォーズ」は興味なくて、1作目しか見てないんですよね。「アメグラ」は何度も見てます。あのポール・ルマットのようなかっこいいアンちゃんは、すべての田舎町に一人ずつそっくりな人がいたような気がする。もちろん僕が過ごした岡山の街にもいて、そこでの彼はラッキーストライクをTシャツの袖にたくしこんでギターを弾いていた。普遍的なことを描いた大切な映画だ。

「レザボア・ドッグズ」、舞台があまり移り変わらない、閉ざされた安っぽい画面の、演劇的な映画でしたね。このほうがタランティーノの話芸が瑞々しかったと思う。僕は使われている音楽の好みで「パルプ・フィクション」が好き。

惑星ソラリス」、上京して、初めて首都高赤坂ランプあたりを通ったとき、あまりにも映画そっくりでびっくりしました。というか、あれを「未来都市」として映画に登場させたタルコフスキーも変すぎる。僕は「ストーカー」が好きだけど、何度も見たわけじゃない。

「恋恋風塵」、これ見てないんだよね。ホウ・シォオシェンだと画面は「非情城市」、筋は「風櫃の少年」が好き。

「けんかえれじい」、前半の舞台が岡山なので大好き。僕はこれ、岡山のライブハウスに鈴木清順を招いての上映会で見た。今思えばなんて贅沢な鑑賞環境か。しかし同時上映の「殺しの烙印」があんまりにも退屈で、しかも監督本人がすぐ近くにいるので文句も言えず困った。「けんか…」はもっとも大事な「226事件以後」がばっさりと描かれないところがいいですね。勝手に想像できて。

灰とダイヤモンド」、高校で一級上の人たちが映画研究会を作り、その発足記念上映会で見た。たぶん自治体が所有するフィルムを借りての上映会だったと思う。田舎の高校の寒々しい小講堂という、今思えば良い鑑賞環境であった。社会主義レクリエーション施設みたいで、映画の中と外との境目が曖昧な錯覚を覚えた。

「チャイナタウン」、ほんと思うのだが、僕にはハードボイルドなどの教養が決定的に欠けている。また、見てもよくわからないというのが情けない。でもテーマ曲は好き。
「L.A.コンフィデンシャル」、これは好き。警察の内部監査ものだからかな、僕が好きなのは。小池和夫原作の漫画「サハラ」(画・平野仁)の後半にもNY市警の内部監査ストーリーがあって、なかなか読ませるんだけど、みなさんご存じでしょうか。内部監査ものって、当事者間のストレスが最大になる設定だと思います。

「ミラーズクロッシング」、コーエン兄弟ですよね、でもこれはダメでした。あとトム・ハンクスの「ロード・トゥ・パーディション」もてんでダメだった。つまり僕は「子連れ狼」の系統はダメなんだな。様式美っていうのは一つツボが違うと陳腐の連打連打、に感じられてしまうのかも。

去年マリエンバートで」、これ何が面白かったのかさっぱりわからなかったけど、上映されたライブハウスを出たら雨が降っていて、むちゃくちゃ興奮してたことを覚えている。あんまり興奮したので当時好きだったサークルの先輩女子の下宿に電話して告白して振られ、濡れながら歩いて帰った。とても気持ち良かった。今思うと相手に迷惑だったな。

ジョーズ」、スピルバーグが出てこないなーと思ったら、これですか! そうかー。僕はスピなら「続・激突!カージャック(シュガーランド・エクスプレス)」が好きです。スピルバーグは他人への共感に難のある人なんじゃないかと思うけど、これは素朴に素敵。

ストレンジャー・ザン・パラダイス」、僕の周りでも流行りました。でも流行り物だったな…。「ゴースト・ドッグ」(1999)とか、作者の衰えを感じて切なかった。
俺たちに明日はない」、これも奇妙な映画ですね。ジーン・ハックマンの存在がとくに奇妙。家族関係が猥雑で、背徳的に見えるのかな。見ていて落ちつかない映画でした。でもここには米国の何か真実が描かれているような気がした。
サスペリア」、大好きです。主演のジェシカ・ハーパーはこれと「ファントム・オブ・パラダイス」のせいで僕的には崇拝対象です。ゴブリンの音楽もいい。美術もいい。映画の筋は真剣に見るとへぼい。それも好き。

東京物語」、広島県人が見ても不自然なところのない笠智衆東山千栄子、人情の薄い杉村春子たち、カツカツのひとり暮らしがグッとくる原節子……どこを取っても素晴らしい映画ですね−。この中で苦労知らずなのは香川京子だけか。原節子の二の腕が非常に色っぽいですよね。それにしても尾道と福山は隣町なのにずいぶん全国的なイメージは違うよね。ていうか福山のイメージってないよな。最近だとラブホ火災だけど、それ以前に福山に何かのイメージを持っていた人っているのだろうか?

市民ケーン」、小学生の時、チャールズ・シュルツ四コマ漫画集「ピーナツ」でネタバラしを目にしてしまい、結果的に今日まで見ずに来てしまいました。シュルツはひどい人だと思います。

 ということで、teruさんのベスト100にインスパイアされ、尻馬に乗った僕のコメントは終わりです。僕は自分のベスト100を挙げられるほど記憶が整然としてなくて困るのですが、ここに挙げなかった映画のことをまたいつか書いてみたいと思います。