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新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

卒業の季節。消え去る学校もある

 被災地の学校で、この春閉校するところがある、というニュースを聴いた。さもありなん。
 被災地じゃないところでも、閉校する学校がある。日本全体で子供が減っており、税金(政府・地方政府が使えるお金)が減っており、しかたのないことかと思う。
 去年(2011年の春)、沖縄本島東海岸の伊計島に行ったとき、協同売店にこんな貼り紙があった。

 このままじゃ読みづらかろうから、テキストに起こしてみる(文意を損なわない程度に読点などを補った)。

島の学校が無くなろうとしています

 平安座、浜比嘉島、宮城島、伊計島、4島の小中学校を全て、うるま市教育委員会は廃校にしようとしています。

 素案では複式学級の9つのデメリットがあるために廃校にすると書いてあります。
 複式学級にはメリットもデメリットもあるのは、それを研究している人の提出録を見れば分かります。しかしそれは一般的に考えられるメリット、デメリットであり、全ての複式学級に当てはまる訳ではありません。

 実際、4島の学校に9つのデメリットはありません。
 学生の成績が下がると一般的に言われていることも、市ママの学校は逆に成績が上がります。これは島の学校に島の外から転校をしてくる人がたくさん居るのでその転校してきた生徒の成績を見比べているPTAが口をそろえて行っています。
 スポーツも宮城中学校では毎年のようにバトミントンで県や中頭地区で優勝、準優勝をしています。
 複式学級だからスポーツがおろそかになるということもこれを見ても当てはまりません。教師が大変だということも、教師の1番の転勤希望地が島の学校だということを考えれば、島の学校の教師は大変だけれど、それはやりがいのある楽しい大変だと分かるでしょう。

「複式学級のデメリットは無い」と現地に足を運んで教師やPTAと離して貰えれば直ぐに分かるのに、教育委員たちはその労をしようとはしません。
 島から学校を無くすと言う、島からすれば島の存続に関わる重大事なのに、教育委員会は現地を水に決定しようとしています。
 また、それを最終決定するうるま市会議員(市議会で決定します)で素案に賛成する市会議員も、現地に来て教師やPTAと離そうという議員はいません。
「そんな馬鹿な」と市民なら思いますが、桃原小学校のPTAに聞いても一切話を聞きに来る人はいないということです。
 つまり、お偉い人たちがお偉い人たちと現場を見ないで自分達は優秀なのだからということで学校を潰すことを話し合っているのです。
 少しでも現場を見れば、この学校が素晴らしいと分かるのに。
 複式学級は贅沢な学校だけれど、決して生徒が複式学級のために教育がゆがむということはありません。
 それどころか、大きな学校でいじめにあった生徒や、不登校の生徒が、島の学校に転校してくるのです。島の学校を潰すと、そのような生徒は行き場がなくなるのです。

 また、島の学校は地域と一体となっているために、学校がなくなれば、島のおじい、おばあが悲しみます。あるおばあは小学校の運動会の日「楽しみで昨日は眠れなかったよ」と言います。島の外になかなか出られない老人は、それほど学校の行事を楽しみにしているのです。
 そして一番大きなことは、島から学校が無くなると、子供を持つ親が島に絶対来てくれないということです。それどころか、島にいるPTAも、島から学校がなくなれば島から出ることを考えると言います。
 桃原小学校は、PTA、8所帯のうち5所帯が島の外から桃原小学校が素晴らしいと考え、子供のために家族と共に引越しをしてきたのです。
 それゆえ、学校がなくなれば今度は子供のために島から出て行くというのはよく分かります。
 つまり島から学校が無くなるということは、島が高齢化して(現在でも7割が65歳以上だといわれている)過疎化になって行き、最後は廃島になるということです。

 うるま市の各企業、各団体の長の方、お願いですから、このうるま市の学校統廃合の素案に対して反対署名をお願いします。

4島学校統廃合反対委員会事務局

 これは、去年見かけた貼り紙だ。
 この3月、浜比嘉島・宮城島・伊計島の小中学校は、どれも閉校するそうだ。平安座島に新設される「彩橋小中学校」に統合されるのである。
 閉校する学校は「閉校式」をやるそうだ。おそらく何十年も前に島の学校を卒業したおじい・おばあから、お父さん・お母さん、にーにーやねーねーが集まるのだろう。多くの小中学校は10日・11日にやったという。浜比嘉島の丘の上にある比嘉小学校は3月22日が閉校記念式典(宮城島の宮城小、平安座島の桃原小もこの日らしい)。これらの日は、現役小中学生の卒業の日でもある。
 
 沖縄東海岸は、読谷・恩納・名護といった観光地を擁する西海岸と違って質素・地味だ。大きなリゾートホテルが少なく(宜野座村のカンナ・リゾート・ヴィラくらいかなー。正直、知らないです)、海遊びのポイントが少なく(海中道路でウインドサーフィンとか、やれる人はいいよ。でも観光客にはに無理無理)、米軍基地がいっぱいあって町が狭い印象。石川とか勝連とか、町の顔も、質実剛健というか無愛想というか、男っぽい。観光地じゃない。
 だけど、海中道路を渡った先にある浜比嘉島・伊計島は、古い赤瓦の家並みと入り組んだ路地が魅力的な、大好きな島だ。それぞれリゾートホテルがあるので島に泊まることもできる。
 今は海中道路があるのでレンタカーで気軽に寄れるが、昔は不便な離島だった。四島の小中学校は、離島の小さな学校として半世紀前くらいにスタートしたのだ。平安座島の石油基地建設に伴い、1972年に海中道路が敷設された。現在のように広い四車線になったのは1999年だという。途中には立派なパーキングエリアと道の駅もある。本島側のキングタコスタコライスを買って、海中道路の駅で海風に吹かれながら食べるのがお手軽な遊び方。
 ドライブで立ち寄るだけじゃ物足りなくて、あるとき浜比嘉島に泊まってみた。浜比嘉リゾートは、夏だったら若いお客さんでごった返すホテルだろうけど、冬は静かなのんびりホテルだった。


 比嘉の集落は古い赤瓦屋根が多い。竹富島と違って道はアスファルトだが、角を曲がるたびダンジョンのように同じ景色が広がる狭い路地は散歩すると超楽しい。集落を見おろす高台はグスクの跡で、てっぺんには拝所があった。浜比嘉島は、沖縄創世神話アマミキヨと縁が深い、神秘の島だ。古事記でいう淡路島のようなものか。海岸にアマミチュー、島の奥の森の中にシルミチューの神様が祀られている。何かがいる気配がする島、今風に言うとパワースポット。また、島の反対側、もう一つの浜集落はもずく栽培で活気がある。
 伊計島は畑が多い島で、おだやかな海風と温かい陽射しの中で猫が居眠りするような、静かな集落がある。

 あと、散歩したことはないけど、宮城島にはミネラル豊富な塩「ぬちまーす」を生産する工場があるし、平安座島にも石油基地以外にダイビングショップ等々いろいろある。
 だけど……、まあ正直に言えば、どの島も過疎だ。集落を歩く姿を目にするのはお年寄りが多いし、学校の生徒も少ない。伊計小中は卒業生が四人だったという。これでは球技の試合はなかなかできないよね。

 先に引用した、学校統廃合反対のビラ。僕は一読、目が離せなくなった。読むのに苦しいリアリティが満ちていて、なまじっかな読み物より迫力があった。
 学校が統廃合される運命は、変えがたい。如何ともしがたいのは、ビラを書いた人にもわかっている。
 だが、学校がなくなることによって、学校だけじゃない、もっといろんなものが島から失われるんだ、という危機感。その葛藤の息苦しさ。
 このビラを見たとき、すぐにも何か書こうと思ったが、書けなかった。一年後の今、本当に島から学校がなくなると決まって、書かなきゃ、と思ってキーを叩いたのだ。遅くてすみません。

 人から聞いた話だけど、統廃合で四島の学校は平安座島の一校に集約されるのだが、伊計島・宮城島・浜比嘉島の子供たちからはすごく遠い(伊計から平安座までは車で二十分くらいはかかる感覚だ)。だけど、スクールバスとかの用意はないそうだ。親御さんたちが送迎することになる。島の親御さんたちにはいよいよ負担が大きくなるのだ。
 残念なことだ。だが、しかたのないことでもある。市にもお金はないのだ。

 沖縄は全国一出生率の高い県ではあるけれど、それでも2を超えてるわけじゃない。ここだって少子化は進んでいるのだ。まして、道路でつながっているとはいえ、離島ではなおさら。もしかすると、海中道路で本島と繋がった結果、より過疎が進行したということもあるかもしれない。人の動きは、机上の計算では御しきれないものだ。
 僕の田舎(広島県)も同様に、山間部・島嶼部ともに過疎が進んでいる。というか、沖縄の離島の学校が閉校したなんて、沖縄だけの話じゃない。被災地だけの話でもないし。子供だけの話でもないし。これは、長い長い老後を過ごす僕たち誰にも無縁じゃない話だと思う。
 伊計島のおばあが楽しみにしていた運動会は、今年は遠い平安座島に行かねば見られない。セニアカーだと片道どのくらいかかるだろう?


(※調べて今知ったのだが、伊計島にあったリゾートホテル「ビッグタイムリゾート」もこの春閉鎖になったそうです)