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新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

私が好きなラジオ放送……旅先ラジオと「ラジオ沖縄」について

 旅行に出る時、荷物になるのを承知でラジオを持って行くことがある。
 一番最初にラジオを持って旅行に行ったのは、あれはドルが127円だった頃、パック旅行でケニヤに行ったのだが、ソニーアナログマルチバンドラジオを荷物に入れた。型番は思い出せない。小さいものだが、長波から、いくつものバンドに区切られた短波、中波、ワイドレンジのFMが聴けたと思う。

 ケニヤツアーはこんな感じで現地にたった4泊。ナイロビは危険なので夜の街を飲み歩くなんてできないし、サバンナのロッジに泊まるとそれこそバータイムが終わったら漆黒の闇だ。僕はツアーに一人で参加していたので話し相手もおらず、バンガローの外にテーブルを出し、蝋燭の灯りでウイスキーを飲んだ。ラジオは2局あり、一方はスワヒリ語、もう一方は英語で放送していた。英語の局はクイーンとか流れてたけど、スワヒリ語の局では民族音楽ボブ・マーリーを聴いたのを覚えている。
 ガイドのお兄さんと話したら、ボブ・マーリーはケニヤでもヒーローなんだそうだ。彼の歌にはアフリカの尊厳を取り戻せ、と訴えるものが多いし、何より音楽的にも素晴らしい。人気なのもわかる。アフリカじゃないけど、たとえばモルディブでも人気らしく、リゾートのバンドが好んで演奏していた。モルディブはアフリカンじゃないし、宗教もイスラムボブ・マーリーとは違う(彼はキリスト教の変形であるラスタファリズムを信仰していた)けど、第三世界の尊厳を歌っているから、国境を越えて誰からも愛され続けているのだ。

 それからしばらく旅行に出かけなかったのだが、最近はよく出歩いている。マルチバンドのラジオはどこかに行ってしまった(今考えると勿体ない!)ので、前にモルディブに行ったときは、シンガポールで買ったラジオを持参した。デジタル選曲なのだが、AMはスキャンが9kHzと10kHzステップを選択できるやつ。FMは87.5から108MHzまでの海外用だ。
 しかし…モルディブのラジオはあまり面白くなかった。首都から離れた環礁の島に泊まったのでそもそも局が少なかったのかもしれないが、いつ聴いても音楽番組が見当たらないのだ。音楽っぽいな、と思ったらアザーン(礼拝の呼びかけ、コーランの詠唱)だった。
 モルディブの観光客は衛星テレビで海外の番組を楽しむ。ESPNはインドとイギリスの競技をミックスして放送しているようで、クリケットとサッカーを交互に中継してる感じ。ニュースはCNNかBBCだったかな? 要するに、外国人は地元のテレビ放送はまったく見ないのである。それは、ディベヒ語やアラビア語がわからないし、つまらないから。地元レストランで見たのは、白い壁を背景に、男性アナが何事かをぶつぶつと喋り続けるような、殺風景なニュースだったなー。ほとんど見てないから偏見なんだけど、実に殺伐とした印象の放送だった。ラジオも似たようなもんでした。
 あの時はラマダンだったから、特別だったのかな? まあいいや。こういうわけで2回目の海外ラジオ遠征はちょっと残念な出来だった。

 台湾は大好きで、時々行くんだけど、この国はテレビが面白すぎるのでつい見てしまう。ラジオ持参しててもスイッチ入れるのを忘れる。それくらい台湾のテレビは面白い。衛星でNHKも入るから、国外にいることを忘れてしまう。地元の放送も最高に楽しい。僕には華語はわからないのだけど、たいがい漢字の字幕がついているので、ニュースなどはあらかた理解できるし。で、ついついテレビばかり見てしまって台湾ではラジオを聴いたことがない。次は必ず聴いてみよう。
(台湾は自社のwebサイトでネットラジオをやっているラジオ局も多いので、実は現地に行かなくても雰囲気を味わうことはできる。こんなのとかこんなのね)

 国内だと、自動車旅行中にカーラジオを聴くのが楽しみだ。関西の高速を飛ばしているとき、眠くなるとAMラジオを鳴らす。東京のお上品なトークと違い、ボルテージの高い喋りが聴けるので目が覚める。
 でも、本州とかでラジオが際立って面白いのはやはり関西に限られる。日中の地元制作の番組は、関西以外だとどうものんびりした感じで、リラックスできるのだけど、正直すごく面白くはない。香川の高速を走ってるときに地元ラジオを聴いてたけど、あんまりのんびりしてるので眠気を催し危険だった。
 日本国内のラジオが残念なのは、ぱっと聴いて違いがわかるような、独自の音楽番組とかが見当たらないことだ。日本には地域ごとに違った民謡があるけれど、それが地元のラジオで愛聴されてる、なんてことは寡聞にして知らない。

 ところが、そうじゃない地域を一つだけ、僕は知っている。地元の民謡をみんなが熱烈に愛し、民謡番組がいっぱいある地域。
 沖縄だ。
 僕は沖縄も大好きだ。そして、沖縄に行くときは今ではラジオが欠かせない。沖縄旅行の楽しみの一つは、沖縄のラジオ番組が聴けるってことだ。沖縄のテレビ番組は東京でもケーブルテレビで見れたりするけど、ラジオは現地でなきゃ聴けないからね。

 沖縄には大きな民放ラジオ局は3つ。AMは琉球放送(RBCiラジオ、738kHz)ラジオ沖縄(ROK、864kHz)。FMはエフエム沖縄(87.3MHz)
 そして沖縄には個性的なコミュニティFM局がいっぱいある!
 FMコザ(沖縄市、76.1MHz)FMたまん(糸満市、76.3MHz)、FM21(浦添市、76.8MHz)、78タイフーンfm(那覇市、78.0MHz)、FMニライ(北谷町、79.2MHz)、FMレキオ(那覇市、80.6MHz)、FMとよみ(豊見城市。83.2MHz)、FMよみたん(読谷村、78.6MHz)、オキラジ(沖縄市、85.4MHz)、FMうるま(うるま市、86.8MHz)。以上が本島。離島にも、FMいしがきサンサンラジオ(石垣市、76.1MHz)、FMみやこ(宮古島市、76.5MHz)がある。
 そんなに広い島じゃないのに、こんなにコミュニティ局がある。素晴らしい。
 あと、超法規的存在としてAFN Okinawa(嘉手納市、FM 89.1MHz、AM 648kHz)がある。AMがトーク中心、FMは音楽中心みたいで、とくにFMは出力が莫迦でかいらしくってよく聴こえる。

 この中で僕のモーストフェイバリットは、ラジオ沖縄だ。夜の飛行機で那覇に着き、安宿で眠ると、翌朝5時に目を覚ましてラジオ沖縄の看板番組「暁でーびる」を聴くのが最高に楽しみなのだ。
「暁」は「あかちち」と聞こえる。「暁でーびる」は琉球言葉で「夜明けですよー」の意だという。民謡歌手の盛和子さんと、彼女の息子で音楽家の吉田安敬さんの、琉球言葉の掛け合いによるDJ。かかる曲は全部沖縄民謡、という徹底ぶり。素晴らしい番組です。
 安敬さんの前は、父上で音楽家の吉田安盛さんと奥様の盛和子さんが番組のDJだった。安盛さんは2009年暮れに急逝され、息子さんが跡を継いだのだった。
 安盛・和子時代の「暁でーびる」も聴いたことあるのだけど、ご夫婦でガチの琉球言葉による掛け合いDJだったので、ナイチャーの僕には会話がほとんどわからなかった。それでも、それでもですよ、この番組が面白いのはひしひしとわかるんです。伝わるんです。意味なんかわからなくても、価値は伝わるものなんです。
 何年前だったのかもう忘れたが、初めて聴いたときから僕は「暁でーびる」のファンになったのだった。
 代替わりした現在は、和子さんが琉球言葉の速射砲で来るのを、息子の安敬さんがやんわりと共通語まじりで受けてくれるので、会話の半分くらいはわかるようになった。でも番組の魅力が薄れたとかそんなことは一切ないからご安心を。

 この番組がすごいのは、ずいぶん前(始まりは1986年らしい)から続いてるってことだけじゃなくて、毎朝5時から7時までの放送を毎週月曜から日曜までやっていることだ。毎週月曜から日曜、って休みがないんだよ! さすがに日曜の番組は「サンデー島唄で〜びる」という名になって1時間と短く、DJも安敬さん一人だ。お母さんは労らないとね……って、安敬さん働き過ぎだ!
 かかる曲が全部民謡、っていうのがとにかく痺れる。沖縄は歌い手も素晴らしいが、聞き手も凄い人たちがそろってるからね。
 沖縄には民謡教室(たいてい「なんとか民謡研究所」という。ラボですよ、ラボ)が至る所にあり、しっかりした発声を覚えた子供たちは将来ポピュラーやロックに転向してもその財産は確実に受け継がれている。何より、結婚式とかの席には民謡が欠かせないし、酒場にもライブが欠かせないし、家で飲んでても三線を持ちこんで歌い出す人が絶対いる。田舎町のゲストハウスに泊まっていると、集落のどこからか三線の音色が聞こえる。それくらい、沖縄の空気における民謡含有率は高い。世界には音楽が盛んな国々、街々がいろいろあるが、沖縄はどこに出しても恥ずかしくない、世界水準の音楽振興地域だ。
 もちろん、沖縄にも下戸はいるし、三線も歌も嗜まない人はいる。カチャーシー踊れない人もいるかもしれない。だから「沖縄は民謡天国だ」なんて言い方は偏見なんだけど、東京や、僕の田舎の広島県なんかと比べると明らかに、大気中の民謡濃度は沖縄に勝るものなし。僕の母は広島県で剣舞だか詩舞をやってるから、まるっきり音楽と無縁ってわけじゃないけど、家では踊ったりしないからねー。夕方になるとどっかで三線の音がする沖縄の町は、やっぱり素敵ですよ。
 そういう土壌を涵養したのが「暁でーびる」に代表される民謡番組だろうし、番組が民謡ファンに支えられて続いているのもまた事実。この番組のスポンサーコールは、長いよ−。いろんな会社がスポンサーについてる。ちなみに僕は、お年寄りが乗ってる電動車いすというか遅いカートみたいなやつが「セニアカー」という名だと、この番組で知りました。「セニアカーのスズキ自販沖縄」もスポンサーですから。

 盛和子さんたちは民謡歌手だから、自分たちのアルバムも出している。僕が持っているのは次の二枚。
吉田安盛・盛和子「暁でーびる」
吉田安盛・盛和子「トゥックイ小(ぐわー)」
 どっちも名盤です。2枚目とか変なジャケットだけど、際物じゃないですから。そういう戯け歌があるんだよね。演奏も唄も、指笛も、切れ味の良い名盤ですよ−。
 Amazonでも売っているのを見つけた。なんと、黒糖とCDのセット販売だった。これは得かも。吉田安盛・盛 和子CD『暁でーびる』 & クラッシュ黒糖60g吉田安盛・盛 和子CD『トゥックイ小』 & クラッシュ黒糖60g

 僕はとくに、盛和子さんの声のファンだ。うどんのように滑らかで、色気と侠気のある良い声なのだ。盛さんの声で目覚めることのできる沖縄の人が、ほんと羨ましい。
 盛さんのトークは琉球言葉なのでわからないことが多いが、ラジオのファンは、トークの内容に惚れることはもちろんだが、単純に、声が良いから惚れることも多いのだ。内容はどうでもよくて。だから時としてトンデモない人物がラジオで大人気になって世界の歴史を悲惨なものにしたりしたわけだが、人間にはこういう行動傾向も確かにあるのだ。
 相方の安敬さんは、普通ならツッコミ役だと思うのだが、ボケてることが多い。とくに一人でDJをする日曜の番組とか、何か思いついて喋り始めたのはいいが、どこに着地すべきかわからなくなってグダグダで終わる様が僕は好きだ。揶揄してるんじゃなくて、純粋に好きだ。予定調和の番組じゃなくて、これこそライブ感だと思うから。生きた人が喋ってるって実感するからだ。

 話がずれるけど、東京のインターFM76.1MHz「ザ・DAVE FROMM SHOW」では、17時のニュースヘッドラインをテレビ東京のアナウンサーが読む。それが女子アナだった場合、必ずDJのデイヴがアナウンサーに話しかける。若い女子アナとトークでからむのが好きなのだ。そして、他愛もないこととか、ちょっと際どい質問とかを投げかけて、アナウンサーが往生するのを楽しんでいるのだ。僕は、この時間帯が好きじゃない。女子アナにでれでれするデイヴも好きじゃないが、もっと好きじゃないのが、デイヴにからまれても余所行きの顔を崩さないように、無難に無難に受け答えする女子アナたちが好きじゃないからだ。
 こういう、ライヴ感から遠く離れる方向に自然に向く、メジャー指向の態度は好きになれない。ラジオっぽくない。音楽的じゃない、とも言ってしまえ。やっぱりテレビの人たちなんだな、と思う。テレビなんて、嫌いだ。

 話がずれた。
 沖縄に旅行するなら、ぜひ携帯ラジオを持って行って、朝食前に「暁でーびる」を聴いてほしいんだよ。ちなみにラジオ沖縄は本島ではAM864kHzだが、名護とか国頭などの北部、あるいは先島諸島ではFMで再送信されているから、まず間違いなく聴ける。携帯ラジオはFM付きのを持参すべし。
 コミュニティFMも楽しいしね。昨日書き忘れたけど、コミュニティFM地震などの災害時は情報ステーションとして機能することになっている。臨時に出力を増すなどの許認可が迅速に決定されることになっているそうだ。だからラジオ受信機は、FMも聴けるのが良いんだよ。もちろんAM専用機は価値がないって言ってるわけじゃないけどね。
 旅先ラジオは、旅にちょっと立体的な彩りを添える工夫になると思う。もしも将来、地域地域のコミュニティFMの主宰者たちが、旅行者にも聴かれることを意識して番組を作ってくれるようになると、面白くなるかもなー、などと思うのだ。その時は、ぜひ地域地域の音楽を、聴かせてください。よろしくお願いいたします。