新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

webサイト・本コレ!「業界人、ぼやく。」というコラムの感想を

■「たぬきちに言及してるサイトがあるよ」と教えてくれた人がいた。MSN産経ニュースに載った『リストラなう!』著者インタビューのことかな?と思ったが、違っていた。
「本コレ!」というサイトの中のコラムだという。下記↓である。
 業界人、ぼやく。■FILE-009■なんと原稿料10%カット! それでもやっていくしかないK社の仕事 (週刊誌フリーランス記者、44歳)


■見出しでは「K社」となっているが本文では社名や雑誌名を具体的に挙げている。そこの週刊誌で働く44歳フリーランス記者、とのこと。こういう書き方だと誰が書いてるかほとんど特定できるじゃん、匿名の意味がないね。僕はこの社の週刊誌の人たちを知らないのでわからないけど――と思って読む。
 僕に言及しているのは下記。

たぬきち」のブログが今度、新潮社から本になりましたが、多くの社員が彼のことを快く思っていません。この私もそうです。彼はどちらかといえばダメ社員で、編集者時代の実績はゼロです。しかも幹部でもなかったから、経営の内情はなにも知らない。そんな社員が、自分勝手な思い込みだけで書いたものが、価値があるわけがありません。

 書かれていることに異論はない。実際、ダメ社員だったろうし、ブログでやったことも自分勝手な思い込みだったしな…。
 よくわからなくなるのがここに続く段落だ。

企業の内部からホイッスルブローイングするには、なんらかの大義明文(ママ)が必要です。たとえば、会社が社会的に許されない不正を行っているとか。しかし、○○社(原文は実名)にはそんな内部告発をするようなネタなどなく、ただ、経営に先見性と定見がなく、人事がデタラメで勝手に自滅しているだけですから、「たぬきち」は何か勘違いしたとしか思えません。

 ホイッスルブローイング…警鐘乱打とかってことか? 同じ段落に「内部告発」とあるから、そういう意味なのかもしれない。
 僕が書いていたことが内部告発かどうか、たとえ僕にその気がなくっても読む人が「これは内部告発だ」と思えばそう読めてしまうのかもしれない。それは仕方がない。人は、自分が読みたいようにしか読まない、人とはそういう限界を持った生物だ、と僕は思う。だから「そんな内部告発をするようなネタなどなく」というくだりには全面的に賛成する。そして「たぬきち」に勘違いやずっこけが多いことも躊躇なく認める。


■わからないのは、「ではこの文章は何なのか?」ということだ。件の会社に内部告発に値するネタなどないとしたら、この文章は「ホイッスルブローイング」ではないわけだよね。じゃあ何なのコレ? タイトル通り「ぼやき」? ぼやくのはいいんだね。だったら僕のブログも「ぼやき」とか「心象風景」として読んでいただけたらこの人にも腑に落ちるんじゃないかと思うのだが……ま、どうでもいいか。
 企業の内部からいろいろ言うのには大義名分が必要、とこの執筆者が考えているとしたら、この人の大義名分は何なのか? それはもしかしたらここに続く後段にあるのかもしれない。
 長いので引用はしないけど、「AERA」が6月に「伸びる企業 縮む企業」という記事を載せたなかに、この出版社について誤った記載があり、抗議を受けたので「AERA」は謝罪した、という件が述べられている。そして、「私に言わせると……○○社の抗議もバカバカしい。……こんな細かいこと、どうでもいいのでは……。」と結ぶ。この部分が、この文章の「大義名分」なのかな?と思ったり。
 あるいは、それに続くフリーの原稿料カット、希望退職第2弾の噂、雑誌の不振などなどがこの文章の肝なのかな?と思ったり。よくわからない。
 ま、大義名分がなくても文章は書いていいし、論旨がわかりにくい批評もあってよいと僕は思う。とくにブログのネタにすることもないか。と思ってブラウザを閉じようとした。
 サイトのディレクトリを一つ上に遡り、「業界人、ぼやく。」の「一覧を表示」してみた。すると、おお! なんだか面白そうな投稿(?)がいっぱいある。


■ちょっと、「業界人、ぼやく。」の「一覧を表示」を引用してみよう。

1 業界人、ぼやく。FILE-009『なんと原稿料10%カット!それでもやっていくしかないK社の仕事』週刊誌フリーランス記者・44歳
2 業界人、ぼやく。FILE-008『もう校正者は必要ない時代なのでしょうか?』フリー校正者・50代後半
3 業界人、ぼやく。FILE-007『この広告不況にNYで大リーグ観戦?ふざけないでほしい!』中堅出版社・広告営業・20代後半
4 業界人、ぼやく。FILE-006『正直言ってね、どうしていいかわからないんだよね』某出版社・重役・60代前半
5 業界人、ぼやく。FILE-005『くるくる変わる方針。それでも漫画を出し続けるやりきれなさ』大手出版社・漫画編集・30代半ば
6 業界人、ぼやく。FILE-004『売れているのに原稿料上がらず、生活は苦しい』中堅出版社・女性誌ライター・20代後半
7 業界人、ぼやく。FILE-003『コンサルが入ったのでリストラ必至。出ても地獄、残っても地獄です!』中堅出版社・雑誌編集者・40代前半
8 業界人、ぼやく。FILE-002『子会社にお金を貸して返ってこなかったらどうするんだ!』大手出版社・販売局社員・30代半ば
9 業界人、ぼやく。FILE-001『ボーナス半減で、住宅ローンの返済見直し。里帰りも中止。』準大手出版社・女性誌編集部員・30代後半

 リンクをつけたのは僕がとくに興味を持った記事だ。よければリンク先で原文を読んでみてください。
 なぜ興味を持ったかというと、ここで言及されている「準大手出版社」「中堅出版社」「某出版社」というのは、どれも同じ特定の一社のことじゃないかと思ったからだ。
 たとえば、2009年暮れに「準大手出版社・女性誌編集部員・30代後半」氏が書いた記事は、「ボーナス半減」「親会社から金融支援」「女性誌が主力」とある。僕が知っている某社とじつによく似ている。
 2010年1月、「中堅出版社・雑誌編集者・40代前半」氏の記事は「とうとううちの会社にコンサルが入りました」で始まる。「Y社」「再建計画」といった単語にも心当たりがある。
 翌2月の「某出版社・重役・60代前半」氏の記事にも「年間計画」「コンサル会社」とある。出版社でコンサルティング会社を入れて経営再建を目指しているところは僕は一社しか知らない。「女性誌ではブランドビジネスをやっている」というのも、特定の一社を連想させる。
 そして同月、「中堅出版社・広告営業・20代後半」氏による記事は、文中に「講談社小学館、文春、双葉社東京ニュース通信社、マガジンハウスなどの出版社から、電通博報堂アサツーなんかの人間も参加しています」とあるから、彼の所属会社はここに名前を挙げられた出版社ではないことをうかがわせる。
 これらの要素をすべて持っているのが、僕もよく知っている一社だ。
 この会社の社員がこんなに大勢、匿名でぼやいているのか?
 匿名とはいっても所属セクションと年齢が書かれているので、それらしいプロフィールの実在する人を同定しようと思ったらできるだろう。こんな、見る人が見れば誰が書いたか一目でわかるような内部告発(?)、ホイッスルブローイング(?)を、この会社の人たちはしてたのか?
 僕は少なからず驚いた。しかも中には現役の役員という仮名での記事もある。はたして経営の当事者がこんな媒体にこんな言いたい放題のぶっちゃけ本音を書くか?


■これらの記事を何度も繰り返し読んでみた。いずれもよくまとまってて“リーダブル”である。こういう文章を書き慣れた人の仕事に見受けられる。年齢も職位もてんでばらばらだが、いい感じのトーンでまとめられている。
 実在の人から聞き書きをして、経験豊富な人がリライトしたものかもしれない。
 だが、それなら情報提供者は職位や年齢を明らかにしてほしくないはずだ。
たぬきち」は「たぬきちはこんなことまで明かしたのか!」と一部で悪評紛々だったが、この「業界人、ぼやく。」で明かされていることは「たぬきち」が書いてきたことよりよほど開けっぴろげで生々しい。しかも、経営陣という責任ある立場の人の発言も含まれている。「たぬきち」なんかよりインパクトはよほど、大きい。


■僕は、あらぬ想像をしてしまう。もしかすると、これを書いている人は、一人か、特定の複数人なのではないか。ちょっと昔の週刊誌っぽい記事の作り方というか、自分が知り得た情報を、会社内部の誰かの発言として読ませようと、このような形式を取っているのでは、と。そしてそれは会社の外部の人ではないかと。
 あくまで僕の想像ですからね。
 というのも、僕について言及した記事で、「企業の内部からホイッスルブローイングするには、なんらかの大義明文が必要です」という文言があったのが気にかかっているのだ。ここで書き手は無意識に「自分は企業の外部にいるから」と表明しているような気がしてならないのだ。
 あくまで、想像とか推測の範囲内ですけど。
 そして、こういうのは良いのかな? とも思う。ゴシップは面白いんだけど、編集部の誰かとか、営業部の若手の誰か、記者の特定の年齢の誰かが、「自分はこんなこと書いてないのに」と迷惑しなきゃいいんだけど。
「そんなこと、たぬきちのくせにお前が言うな!」とおっしゃられるかもしれない。その通りだ。でも僕は誰か他の人に仮託して自分に火の粉がかからないような形でものを言ったことはないよ。
 面白いけど、ちょっと複雑な気持ちになって、いろんなことを考えさせられた「業界人、ぼやく。」だったのだ。