新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

リストラなう!その35 新しい人事、混乱

■辞める側から人事を見ると
 会社では六月以降の人事がほぼ固まった、と思っていた。でもどうやらまだまだ流動的みたいだ。というのも、異動候補の人に打診しても、当人が異動を拒否するケースがときどきあるらしい。だからこの期に及んでも人事全体の細部が詰まないんだという。
 三月以前の自分だったら「まあ異動するのも拒否るのも大変だよね」と思うくらいで、あとは他人事、関係ないや、とこれ以上深く考えることはしなかっただろう。他人の人事なんてそんなに考えても仕方ないしね。
 でも今はちょっと違う。会社に残る四十歳以上の人間は、「辞めますか? 残りますか?」と選択を突きつけられて、「残る」と決めた人たちなんだろ、と思う。僕は「辞める」を選んだ人間だからね。君らはこういう難局を覚悟して残るって決めたんだろ、じゃあなんで会社に異議を申し立てたりするの?と。
 辞めていく者からすれば、「辞めるかって言われて断って、異動を提示されて断って、ほんとお前ら勝手だな」という感想になるんだよ。
 でも、落ち着いてもうちょっと考えてみるとまったく反対の感想も出てくる。
 今度の人事はこれまでのと違ってかなりストレスが強い。未経験の部署を提示されるなんて当たり前で、それどころか、仕事がきつい、拘束時間が長い、要求水準が高い部署をいきなり提示される例も多いと聞く。あの編集部、この外勤部署…なんてすぐ名前が浮かんでくるですよ。きついという職場の噂は社内でもよく聞くからね。
 個人個人にはそれぞれの事情がある。「時間的に無理だ」「健康が不安だ」という事情。さらには「時間外手当が減るからローンが返せなくなる」という切実な問題もある。手当によって増えている月収を元にローンを組むなんて無謀、ローンの組み方がそもそもおかしい、という正論もあるけれど、普通の人間は月収全部を勘案してローンを組んでしまうからね。こういうミスが起きるのも仕方ない。
 とくにこの春は会社は「昇級」ではなく「減給」を提示してきたから。ただでさえタイトなローン返済が危機に瀕している人は多いだろう。
 会社には、人事は発令一週間前には固まっていなければならない(組合に人事を通達するのがこの時期)という慣例がある。だから来週月曜には固めなければならないはずだ。それまで会社内の見えないところ、水面下でバトルは続くのだろう。


■異動がなくても混乱
 そして辞めていく僕のような人間にも混乱は波及している。
 たとえば、やっと引き継ぎを始めることができた、と前に書いた。あと十日しか営業日が残ってない時点で、だよ。僕は前任者から一か月以上かけて引き継ぎを受けたんだ。ルーチンワークに過ぎないといっても習熟期間は必要だ。この短い時間でどうやって次の担当者に引き継いだらいいのか、ちょっと途方に暮れた。
 なんでこんなに引き継ぎ開始が遅くなったかというと、「まだ人事が固まっていないから、誰が異動してしまうかわからない。だから後任も決められない、ちょっと待っててくれ」というわけだ。四月中旬にはもう僕は辞めるって決まっていたのに、こんな五月も半ばをとうに過ぎるまで「待て」をくらっていたわけ。これは長かった。こんなに長い「待て」に耐えたんだから僕って名犬だと思うよ。いや犬じゃなくてたぬきだけど。
 でもなあ。これって何かおかしくないか? 「業務をスムースに引き継いで、仕事に穴を開けるのを防ぐ」「事故を防ぐ」という観点よりも、会社の都合、管理職の都合が先に立ってないか? 何より、引き継ぎがうまくいかないと外部・取引先に迷惑が及ぶかもしれないし。
 このフロアでは希望退職する者は少ないけど、それ以外に他部署に異動する者が数人いるようだ。業務の仕分け・立て直しもやる。部内での担当変更となるとほぼ全員が対象だ。みんなが慣れないことをしなければいけない。この状況で事故なくやり遂げるのは大変だ……リストラって大変だよなあ、と今更。


■コミュニケーションが欲しい
 僕も何度か異動を経験したが、不思議に思ったことがある。オファー段階では異動先つまり「自分がこれから行くセクション」の長が接触してくることはほとんどないのだ。モメたときに異動候補者と異動先の長が話をした、なんてこと聞いたことがない(僕は異動をオファーされて拒否したことはないから知らないだけかもだが)。
 これって世間一般でもそうなんですかね? そういうルールがあるんでしょうか。
 異動先の長って、「乞う側」だよね。それが「君が欲しい」って直接口説いてきたら誰だってグッと来るんじゃないのかなあ。むやみに拒否るケースも減るんじゃないか。
 そもそも異動を拒否るのは、「行く先がどんなところかわからない」「不安だから行きたくない」という理由が多いんじゃないか。行き先の正確な情報がわからないだけじゃないのか。
 これって、単にコミュニケーションが足りてないだけだよな。
『iPhoneとツイッターで会社は儲かる』(マイコミ新書)という本が売れてるが、これは「カネになる」という話じゃなくて「企業内コミュニケーションが活発化すると良い結果がついてくる」という話だと思う。
 そもそも、出版社とかのメディア企業って、人間の根源的なコミュニケーション欲求を満たすことが仕事じゃん。コミュニケーション欲求をマネタイズしたのがメディア、と言い換えてもいい。
 それが自分たちのこととなると、どうもコミュニケーションがヘタなんだよなあ。もちろんこれは自戒を込めて言いたいんだけど。
 いま会社では社内イントラネットで「意見・企画・アイデアを求む」って、社員の声を集めている。こういうの、どこの会社でもやってますよね?
 たしか大殿様の時代にも同じことやってたな。覚えてる。僕も企画出したら役員たちがいる部屋に呼ばれてなんか話した記憶がある。実現しなかったけどね。
 今回の「企画募集」にはいろいろ集まってるんだろうか。盛り上がってるんだろうか。何せ、特設のメルアドに宛ててメールを出してくれ、というだけだから、どんなのが寄せられたか、どんだけ集まってるかもわからない。ブラックボックスに宛ててメール出すようなものでは? それじゃつまらないよね。
 せっかく社内ネットがあるんだから、ここに匿名掲示板でも設けて誰でも書き込めるようにしたらいいのにな。叩き合いをやれば面白いぞ。拙ブログのコメント欄が面白いのも、誰が何を書いたかが全員に公開されてるからだし。コミュニケーションとコミュニケーションの間からしか新しいもの・面白いものは出てこないと思うよ。
 前に「出版社は自分を語ること・自分が語られることが苦手」と書いたけど、それはきっとこういう人事施策ひとつ取ってもヘタさが出てるんだよな。なんて無責任に思うわけです、辞めてく人間は。
(※追記 そーいえば僕もまだ社員なんだから、僕だって「企画募集」には応募できるわけだ。こんなとこで愚痴愚痴書いてないで、この内容をメールしておこう。そうしようそうしよう♪)


 どうも愚痴っぽくなっていけない。具体的な部署・個人のことを書けばすごく面白くなるだろうし書きやすいんだけど、それはしちゃいけない、と思うのでこんな一般論ばかりになる。すると、飲み屋で話す愚痴みたいになるんだよね。ダメだなあ僕は。
 今日は霧雨が降っている。普段ならそろそろシャワー浴びて会社に行くのだが、今日は有休消化の日だ! 休みだぜへっへー。ハローワークにでも行ってきます。面白いことがあったら報告しますから、待っててね。(つづく)