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新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

リストラなう!その18 他者の視線

 ますますコメント欄が白熱する「リストラなう」、今日も親会社の人、新たに腹を立てた人などにご登場いただき盛り上がっております。呼んでもいないのに向こうから面白コンテンツが押し寄せる、これがweb2.0というやつなんですかね?
 ただですね、「何言われても平気だ〜い! 今までも散々叩かれたもんな」と思っていましたが、正直、見知らぬ他人の怒りや呪詛・怨念を受け止めるのは疲れます(ため息)。しかも匿名の人たちからの。普通の暮らしをしてるとこんな機会ありませんものね。今日も心折れまくりです。
 一つだけ助かってるのが、これらの怒りや呪詛が匿名だということです。もしも怒る人や呪う人が自分の実名でやってきたら、きっと僕はショックで立ってられないでしょう。怒りが力を持つのは怒る主体が隠れてない時です。ま、僕も匿名でブログやってるのでその非力さはイーブンですが。とにかく影からの怒りは力が薄い。そうは言ってもたぬき一匹を怯えさせるには十分ですね。
 もっともこのたぬき、どうも狂犬病か何かにかかってるらしく、怯えながらも牙を剥くのをやめません。


 ところで、先週からこっち、ネットのニュースが拙ブログを取り上げてくれてるみたいですね。非会員は覗けないSNSでどう取り上げてるかは知りませんが、無料雑誌のネット版であるとか、スキャンダル誌のネット版であるとか。とくにスキャンダル誌のそれは、けっこう興味深いです。何の根拠もなく「完全暴露」なんて言っちゃったりして。
 拙ブログに呆れている人が読めば、「不完全はなはだしいものを“完全”と呼ぶなど、てんでなっとらん!」とさらに怒り出しそう。そうですよ。このブログなんて、月給袋の中身以外は全部公開になってる情報なんですから。それを「完全暴露」だなんて、お前ほんまに取材したんかと。どーせネットのニュースなんて取材なんかせんのやろね。そんなこっちゃ、見出しで謳ってる会社名も当たってるんだかどーだか。なんてねw


たぬきち包囲網?
 先だって、担当している大手書店さんとの定例打合せに行ったところ、打合せが終わった席で「ではでは」なんて言ってたら、文芸担当の女性から「もしかして、たぬきちさん?」と追及され。想定外だったのでこれには面食らった。この人は前から只者じゃないと思ってたが、ホント鋭い。
 同席していた男性の方々はご存じなかったようなのだが、後日「ググって見つけましたよ」と連絡が。そりゃそうだよな、Googleから逃れるわけにはいかない。ハンドルバレしたのは諦めがつく。
 今日は別の書店さんから電話で注文を受けたのだが、「同僚がブログのこと言ってまして」と。やばっ。続けて「そのブログ見てたら面白い本見つけたんですけど、店頭在庫がないことに気づいたんで」と。ああ、よかったよかった。仕事の話なら平常心で聞けます。
 ブログのコメント欄には「親会社社員」を名乗る人物から「君のことは知ってるよ〜。交友関係も、立ち回り先も、何もかも知ってるよ〜」とでも言いたげなコメントがつく。これ読んだ後だと、昼飯を食いに表通りに出たときとか思わず左右を見回してしまう。
 これまでも恥の多い人生を歩んできたが、この自爆テロのようなブログを始めてからは生涯の総和を軽く上回る勢いで恥をさらしてばかりだ。自分の了見が狭いこと、常識がないこと、他人を慮るなんてできないこと、偉そうに言うわりに会社員として何の力量もないこと……賢明なる読者諸氏にはこの辺が素通しに見えるらしく、ブログ本文に問題点が潜んでいると、すぐにコメント欄で的確に撃破してもらえる。痛い痛い。
 それだけじゃなく、ついにたぬきち追及の手はリアル世界にまで及んできた。今後は“顔出し”の読者から、面と向かってコメントがつくようになるのか?


■同業他社の視線
 最近、同業他社と会って話をする機会があった。姉妹のような美人二人組だった。ラッキー。
 もちろん二人ともブログのことは知っていて、「今朝は廊下で役員と編集長が『リストラなう』の話してましたよ」なんて教えてくれる。うわ、偉い人ににも読まれてるのか。きっとケチョンケチョンだろうなあ。
「朝、出がけとかに読んで、会社で同僚と話してがっくり落ち込むのが日課です。他人事じゃないですから」
 へえ、危機意識が高いね。俺たちはリストラなんて他人事と思ってたよ。でもどうかな。御社と弊社とでは状況がまるで違うでしょ。
「たしかに弊社は御社ほど給料良くはありません。十年前くらい前のきびしかった時期に給与体系見直して、以来ボーナスも定昇も抑えてきましたしね。今の二十代はなかなか昔の水準の給与に達しません」
 なるほど、でも早めに手を打ってたから今日の両社の違いがあるのかもね。
「業界に共通の問題も多いですけど、違うところはすごく違いますよね。お給料とか」
 そ、そうですね。自分でバラしといてアレですけど、再度、面と向かって言われると落ち込みます。
 でもまあ、そのお給料はじめ人件費の膨張で会社が倒れそうになってるんで。今それ調整してるとこだから許してください。ていうか、リストラの結末を見届けてください。そのための日記ですから。


■見られることに慣れてない
 会社の外の人と話してちょっと気持ちが楽になったのは、“見られることのストレス”について語り合うことができたからだった。
 マスコミ業界、とくに週刊誌を持っている会社は、暴露型ジャーナリズムとでもいうか、古くはトップ屋といったのか、人が隠すものをさらして金を稼ぐことをしてきた。ところが、それやってるご本人たちは、雑誌の誌名を看板にして、自分はその陰に隠れてきた。あるいは、名前を出して誌面に登場するのは社員ではなく記者・カメラマンだった。
 とくに、僕が働くこの会社は、見られることに慣れてない。
 僕がやったのは、日陰の石の裏にわだかまる虫を日光の下に引っ張り出して、羽をむしって腹をさらけ出したようなことかもしれない。痛々しい白い腹部がうごめいてるような、大人げない行為。
 この日話した美人姉妹の片方は、以前ネットなどでいろいろ個人情報を晒されて誹謗された経験があるという。それだけに、見られる立場初心者のたぬきちにいろいろ有益な示唆をしてくれた。この人は根性が座っている。そう思わせる女傑っぷりだった。人は見られることで強くなれる。
 僕がこんなこと言うと、会社の他の人は「そんなこと頼んでないよ!」と怒り狂いそうだが、どうせ僕がブログなんて書かなくてもこのリストラは世間が注目してたんだ。結果を人の目にさらして、その視線に耐える必要はあるんじゃないの? そして、会社はけっして恥ずかしいことはやってないと思うし。いまのとこ強制的に辞めさせられるって人はいない。世間の目に耐えうる立派なリストラだと思うよ。


 ところで今日は「早期退職優遇措置・適用決定通知書」という書類をもらった。お前が応募してきたのは正式に受理してやったよ、というわけだ。だからもう一枚書式を配られ、「退職届」というのを書かされた。「早期退職優遇措置」に則って退職しますよ、という届けらしい。僕はぺちょんと判を捺し、上司からも判をもらい、総務部に提出してきた。誰かに見せびらかしてみたかったが、残るやつにそれやると不興を買うのは明らかなので自重した。これでも自重とかできるんだぞ。
 今日も二次募集の真っ最中で、「誰それが提出したって」といった噂が社内を駆けめぐっている。残りはあと何人なのか、まるでわからない。だが着実に席は埋まりつつある。
 午後、腹が一杯で朦朧としながらデスクワークをしてると、音もなく近づいてきた人が僕をつついて起こした。手にした封筒の隙間から「退職届」をちらりと見せ、「ほら。俺も出すから、よろしくな」と。僕はびしっと目が覚めた。うれしいじゃないか、同志よ。
 俺たちはどこに行くんだろうね。(つづく)