新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

雨の夜のバー

超久々に、深夜のバーでウイスキーを飲んでいる。もう何年も何年も一人で深夜にバーで飲んだ事はなかった。
今夜は同僚たちと焼鳥屋で一杯やって、日頃の憤懣や不安をぶつけ合って、雨の駅で分かれて来たとこだった。駅から雨の夜道を尿意をこらえながら歩いて来たとこにこのバーはあった。
目白通り不忍通りが交差する、辺鄙な通りにこのバーはある。じつは10年くらい前、僕は熱心にここに通っていた。あんまり熱心に通ったのでアルコール依存症になりかかったくらいだ。
それから僕は鬱病を患ったり彼女ができたり職種が変わったりしていろいろあった。一番大きい変化は年をとったことだ。あたりまえだけど。
僕は8年くらい酒をやめていた。ここ2年はまた飲んでるが、鬱病の時酒にはひどい目にあったので、なかなか酒と和解できずにいた。とくにこの店のようにウイスキーと正面から向かい合って飲む店には近寄らないようにしていた。怖いから。また失敗してしまうかもしれないから。
ガダラの豚』を書いた中島らもは好きな作家だが、彼も結局酒とうまくやっていけなくて命を落とした。『今夜すべてのバーで』なんて大傑作を書いているのに、結局酔っ払って怪我をして死んだのだ。酒はなまなかな相手ではない。
それでも、今夜はなんとなくうまくやれるんじゃないかという期待を抱いてこの店のドアを開けてしまった。そして10年前と同じように「バルヴェニーをショットで」なんて頼んでカウンターに腰をおろしてしまった。
またうまくやれるだろうか?
いや、あの時は僕は酒に飲まれて失敗した。あの時の失敗を繰り返さずにやれるだろうか。

こないだのマラソンに負けて以来、僕は浪人生のような気分なのだ。宙ぶらりんの、サスペンデッドな、半端者の気分。これは若かった不安な頃の気分でもある。ちょっと気持ちいいかも。バーでかかってる曲もU2の「ブラディ・サンデー」なんかだったりして80年台な気分なのだ。

青春を懐かしむ、僕も本当に年をとった。過ぎた年月は帰って来ない。このカウンターはあとの時と同じはずだが、コースターに乗ってる酒も同じはずだが、客は変わってしまった。あのときは帰って来ない。