新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

やっぱりハイブリッド車はやばい!——漫画家・田中圭一さんの証言

 遅ればせながら「サイゾー」9月号を読んでいたら、田中圭一の連載マンガ「教えてっ真夢子おね〜さん」がたいへん興味深かった。今月はなんと「実録!ハイブリッドカーのトラブルで大損しちゃった!?」の巻なのだ。
 
 本論に進む前に田中圭一先生のことをご紹介します。ご存じの方も多かろうと思いますが、この人のこと特別に好きなので。
 田中先生は会社員と漫画家の二足のわらじを履き続けているギャグ漫画家、代表作は『ドクター秩父山』『昆虫物語ピースケ』『神罰』『プリンセス破天荒』『サラリーマン田中K一がゆく!』『マンガ家田中K一がゆく!』など。主な作風は下ネタと手塚治虫本宮ひろ志パスティーシュ。うしろの2つは自伝マンガで、ヨイコトーイ(仮)という玩具メーカーで営業をやってた頃のこと、また営業をやりながらマンガ家デビューした頃のことをたいへん面白く描いている。絲山秋子の『沖で待つ』と並んで、営業マン文学の歴史に残る名作だ。僕も未熟な(それでいてロートルな)営業マンだから田中先生の描く営業マンガにはずいぶんと勇気づけられている。僕が尊敬し愛読している田中先生の代表作はエントリ末尾にアフィを貼っておくのでみなさんぜひぜひ読んでみてください面白いですから。


 で、田中圭一先生がこうむった災難ですが、「サイゾー」9月号連載を要約すると、

 田中K一は5年前(およそ2004年?)に5年落ち中古で不人気のハイブリッド車を購入した。走行37000km、売価110万円だった。購入半年後、交差点でストールしバッテリ警告灯が点灯。バッテリ修理で10万円かかった。購入3年後、走行中にストールしエンジンも電気系もすべて動かなくなった。ハザードもつかず。バッテリ交換で30万円かかった。さらに2年後(最近のことと思われる)バッテリ警告灯が点灯、劣化による要交換と診断される。さらに30万円の出費…

 という惨状なのだった。
 具体的な車種名は明かされていない。初代インサイトかな?と思ったけど、「新車で買えば260万円もするハイブリッドカーでしたがたまたま不人気な車種だったこともあり…」とあるので210万円で売り出された初代インサイトは該当しない。不人気ではあったけどね。2人乗りだからね。まあわざとボカして書いてるのかもしれませんけど。
 僕のつたない理解では、プリウスはわりと大きなエンジンを積んでるし、電池とモーターの駆動システムも立派なもので、内燃機車と電気自動車どちらの性能も併せ持っている、と思う。対するインサイトは、電動アシスト付き自転車のように、非力なエンジンをこれまた非力な電池とモーター駆動でアシストし、総合的に省燃費を達成しようとしているように思える。このマンガのように、バッテリなど基幹部品が不調になったら全体が動作不能に陥るというのは、どちらかというとホンダ的なシステムにありそうなトラブルかな〜と思う。でも、初代インサイトにはマニュアルトランスミッションがあった。セルモーターさえ生きていれば踏切脱出とかもできるわけで(バッテリが死んでたら無理だけど)、MTは古くて単純つまり堅牢なシステムだ。そういう設計思想は好きだなあ。自分で運転してるのはCVT車ですけどね。初代インサイトにこのような突然死が起きるかはよくわからない。トヨタプリウスはもちろんオートマのみで、エンジンと電池モーターの切替は複雑に制御しているから、それこそバッテリが即死したらすべてのシステムが不能になりそうだ。
 まあ日産とか他の古いハイブリッド車かもしれないのでこれ以上の車種の詮索はよすけど。電気自動車としての機能も立派に持っているプリウスの場合、内燃機が死んでも電気駆動で緊急事態には対応できるはずだ。短い時間・距離だろうけれど。ただし、トラブルが起きる可能性があるのは内燃機部分よりも、圧倒的に電気駆動・制御部分のほうが多いであろうことは想像できる。なんといっても内燃機駆動は百年もの時間をかけて洗練した枯れた技術なのだ。


 このマンガには、ハイブリッドの2つの弱点が描かれている。1つは、バッテリが高価なこと。30万円というとBMWアルファロメオくらいでもふとした修理にかかる額だと思うが、もともと出費をケチろうとしてハイブリッドを導入したドライバーには耐え難い出費だろう。しかも、それが予期せぬときに来るというのは痛い。ふつうは、「最近調子悪いなー、でも定期点検まであと4カ月、だましだまし乗るかなー」って感じで修理代とか貯めるよね。それが「突然死」ではちょっと心の準備ができなくて辛い。
 もう1つの弱点は、まさに「突然死」が起きるということだ。バッテリ、とくに高性能のバッテリは突然に死ぬ。マンガン電池のようにゆっくりと電圧が落ちていくのではなく、それまでフルパワーを供給してくれていたのに、突然に供給が止まる。普通ならもうすぐ寿命が来るよ、ということをセンサーで教えてくれそうなものだが、そのセンサーまで作動しないくらい突然に死ぬのだろう。余談ですが僕のデジカメもそういう設計で、さっきまで全緑だった電池マークがいきなり残り少ない赤表示になります。これ、残量表示の意味があまりないんだけど。
 そしてハイブリッド車でバッテリが死ぬと、マンガにも描かれていたように「ハザードランプもつきません」ということも起きる。高速道路だったら大事故になるね。辺鄙な山道や北海道の原野でも死ぬね。


 作品は最後に「そんなワケで今ではすっかりアンチハイブリッド派です」「まあ…中古車っアタリハズレが大きいから…」「やっぱハイブリッドカーは新車で買ったほうがいいのか…?」と登場人物たちに言わせて終わっている。けど、それじゃやはり問題は解決しないことは作者も十分承知してるだろう。
 すべての自動車は最初は新車だ。新車で買われて、そのまま廃車まで乗り続けられるのは一握りで、たいていが中古市場へと流れてゆく。中古での信頼性が内燃機車に比べて低い、あるいは信頼性を担保するのに必ず大きな出費を強いられる、というのはどうなのか。5年かそこらで廃車、あるいは市場価値がなくなるなら、内燃機車よりよっぽど環境に悪かろう。
 そして、複雑なシステムであるゆえに、簡単な構造の内燃機車より故障する確率が高くなり(故障する箇所が潜在的に多くなり)、いったん故障すると徹底的に動かない、というのでは、人家のない雪道など怖くて走れない。マスコミ報道でのハイブリッド人気を見ると、遠からずすべての車がハイブリッドになりそうな勢いだけど、ほんとのところ、この完成途上で不安定なシステムは自動車としてはあまりにもダメだ。
 自動車は本来、液体燃料と補修部品があれば70年前でも中央アジアの砂漠を踏破してしまえる、自立的なシステムだった。もちろん当時の自動車は燃費も効率も悪かったけど、故障した場所でなんとか修理できた。いま、ハイブリッド車はたいへんな燃費や効率を誇っているが、自動車本来の自立性・自律性という点からするとずいぶん後退していて、緻密なディーラー網や個人では修理など及びもつかない高価・複雑な部品を必要としている。おそろしく外部依存的なのだ。北海道より北、シベリアなんかじゃ絶対に怖くて乗れないだろう。


 いま大量に売れてるプリウス、5年後には大量の中古車となってどうなるだろうねえ。僕は2002年に買った燃費の悪いコンパクトカーに乗ってるけど、今年の暮れにはまた車検を通すつもりだ。たしかに僕の車も今風のハイテクで、ドライブ・バイ・ワイヤだったりするけれど、1回走行中にストールしたこともあるけれど、さすがに田中K一先生のような悲惨な目には遭ってない。

 で、田中先生のおすすめ代表作は以下です。
   

  
 僕としては下段の「田中K一」シリーズが一押しです。