新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

ドキュメンタリー「冬の兵士」を見る

 メールで購入を申し込んだドキュメンタリー「冬の兵士」のDVDが届いた。中身はこんなです。

 これは田保寿一さんというジャーナリストが作った、2008年の3月に開かれた反戦集会「冬の兵士」の記録映画です。
 田保さんは映画専門の方ではないようで、このDVDも随所に素人っぽいところが見られます。パソコンでつけた字幕がドットが見えてたり、字幕やキャプションの位置がまちまちだったり、画像の解像度が低かったりそろってなかったり。田保さん自身がつけたナレーションも素人くさいです。画面も、横長ですが実は4:3レターボックスなので画質は悪いです。
 でも、見始めるとそんなことがまったく気にならないくらい、迫力のあるドキュメンタリーになっています。迫力といっても戦闘場面の動画がいっぱい見られるとかじゃありません。主たるシーンは、反戦イラク帰還兵の集会「冬の兵士」の会場シーンと、ワシントンDCのデモ行進のシーン、それから帰還兵の自宅でのインタビューくらいです。たったそんだけを編集した、素人っぽい映像なのに、ものすごいパワーがあります。僕は80分、画面から目を離せませんでした。
 で、しつこくコレ ついでにこれも
 もう何度でもこの映画のリンクを貼りますが(みんな見てください)、この映画「告発のとき」は、これ単体で完結しているわけでも、これ単体で見終わってはいさよなら、な作品ではありません。リアルな世界の動きと密接にリンクした作品です。そのいちばん密接なつながりがあるのが、まずDVD「冬の兵士」です。
告発のとき」の主人公は帰還兵の息子を殺された老憲兵ですが、「冬の兵士」の主役たちは帰還兵たち自身です。つまり、「告発のとき」の息子がもしも死ななかったら、「冬の兵士」のようにPTSDで苦しんだり、アルコール依存になったり、些細なことで奨学金を取り消されたり、ストップロスと称して除隊が取り消しになって再びみたびイラクに派遣されたりしたことでしょう。
 映画の冒頭では非常に感動的な朗読(シュプレヒコール?)が行われます。アメリカ独立宣言の朗読なんですが、「権力を乱用した明らかな専制政治が行われたとき、その政府を倒すことは人民の権利であり義務である」……これはまさにイラク戦争遂行中のアメリカの姿ですね。彼ら帰還兵は、人民の義務を果たすために立ちあがった、と言えるでしょう。
 集会の様子が延々と写されるのですが、これが意外にもまったく退屈でない。それは、証言する帰還兵たちの顔が見えること(涙や鼻汁で濡れています)、それを聞いている聴衆の目も濡れて光ってること、立ちあがって拍手する人たちの様子などがとても心を揺らすのです。またワンシーンですが、彼らに反対する愛国者たちのデモも映っています。帰還兵たちを裏切り者と呼ぶ人たちです。これもまたリアル。

 そして、メジャー映画「告発のとき」と、素人くさい草の根ドキュメンタリー「冬の兵士」は、なんと結末がまったく同じなのです。
告発のとき」でトミー・リー・ジョーンズ扮する老軍曹は「国旗を逆さまに掲揚するのは、国際的な救難信号だ。いまは国難のときだ。だからこの星条旗はずっと逆さまに掲揚する。夜もおろすな」と言って図書館かどこかの旗竿に息子の形見の星条旗を逆さまに揚げて、ダクトテープで固定してしまいます。

 そして、これが「冬の兵士」のラストシーンです。ワシントンDCをデモする帰還兵たちは、星条旗を掲げていますが、それはみな逆さまです。彼らも救難信号を発しているのです。
 集会「冬の兵士」は2008年の3月に開かれました。「告発のとき」はアメリカでは2007年9月公開です。彼ら帰還兵もきっと見たに違いありません。いや、見ていなくても彼らは星条旗を逆さまに掲揚したことでしょう。
 最後にもう一度、しつこく「冬の兵士」DVD購入のリンクを貼っておきます。この映画はなにより面白いので、見て損はないです。→DVDの販売