新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

下層階級文化の研究ってある?

 4、5年前に三浦展下流社会』という本がベストセラーになった。売れた数はたいしたことないと思ったけど、あの本が当時の論壇に投げかけた衝撃はすごかったと思う。当時、月刊誌も週刊誌も連日「下流」を見出しにしていた。
 いま読むと、パルコ出版の優秀な社員だった著者がマーケ雑誌「アクロス」を作りながら「上昇志向のないダラダラした若者は嫌いだ」「なんで俺みたいな優秀なやつが安い給料で管理職やって、できないやつがたっぷり時間外を受け取ってるんだ」と世間を呪っていたルサンチマンが時を超えて塗り込められていたような本だった。すいませんここ全部想像です。
 でも『下流社会』の前の著者の仕事、『ファスト風土化する日本』とか読むと、単なる定点観測ではなくて、著者の隠せない嫌悪感や違和感がちゃんと出てて面白い。『下流社会』もそんな嫌悪感で統計データをつないだ手軽な仕事だったはずだ。
 しかし、同書は、世間の人々の違和感やら同意やらとシンクロして「下流」ムーブメントを巻き起こしてしまった。


 今よりずっと景気の良かった2005年当時、景気が良かったのは赤木智弘らに代表されるフリーターや派遣社員たちにしわを寄せて「いざなぎ超え」「空前の利益率」とか言ってただけだったのがバレちゃったけど、それでも世間の気分は少し浮ついていた。押し寄せる格差に足下が崩れ始めている不安におののいていたとしても。現実を直視せずにすんでいた2005年当時は、「下流社会」と言われても「ああ、あっち側ね」と高をくくることができた。
 でも、今はもうそんなことは言えない。下流社会なんてこの金融危機で真っ先に吹っ飛んで、立派な「下層社会」がむき出しになった。国民の大多数が下層階級に属する時代が始まった。


 で、下層階級のことなんですけど、これって大多数の地方人が置かれた状況でもあるな、と僕は自分の育ち方を振り返って思うわけです。三浦展によると「ファスト風土化」も地方がまっさきに起きるわけだし、僕が生まれた頃の高度成長の余録も地方は最後に受け取ったわけで。
 日本は、人数でも面積でも下層階級・下層社会がごく一部の中流・上流を包囲した、「一億総中流」なんて死語や「今の日本に飢えるなんてことはない」なんて世迷い言とは無縁の、世界のどこにでもある貧しい国の一つだったわけです。もちろん貧しい国の最たるものはアメリカ合衆国ですが。
 衰えた先進国の大先輩はイギリスです。イギリスには優れた下層階級文化がある。パンクスとフーリガン、『ハマータウンの野郎ども』、"us and them"とかです僕が知ってるのは。
 アメリカはそれこそ下層文化が花盛りですね。ヒップホップってそうでしょ? ヒルトン姉妹ブリトニー・スピアーズみたいなバカセレブもか(日本だとクイズ番組のおバカタレントがそれに匹敵するのかな?控えめでいいですね)。
 で、日本の下層階級文化って、誰が研究してるの? 三浦展はナシよ。彼のは研究じゃなくて呪詛だから。あるいは、僕たちのことを描いた文化資料ってどこにあるのだろう。


 最近、「ヤンキー」がそれじゃないかと思ってるんです。「しまむら」もユニクロを超えるかもしれないってね。
 この項はまた改めて触れようと思っています。中途半端ですみません。あんしぇーやー。