新々リストラなう日記 たぬきち最後の日々

初めてお読みの方は、<a href="http://tanu-ki.hatenablog.com/entry/20100329/1269871659">リストラなう・その1</a>からご覧になるとよいかも。

「琉神マブヤー」が頭から離れないことについて(完結)

 ハゴー! でーじ久しぶりやっさー。しばらく飲んだくれたりして忙しくしてたんで更新忘れてたよ。
 あれから忙しくしながら「琉神マブヤー」のことをいろいろ考えていたんだけど、ニコニコ動画で第1話を見つけたりしてたんだけど、そろそろ区切りをつけなくちゃなと。こればっかり書いててもいけないからな。


 第1話を見て、より感動を深くしたんだよ。まず第一に、マブヤーに変身する青年カナイは、師匠についてやちむんを習ってるぼんくらなんだよ。それがヒーローに変身するようになっても、やっぱりやちむんは習っているんだよ。つまり、ヒーローという職業はないんだよ。ブルース・リーの作品について論じるとき、「ドラゴンという職業はない」という命題が語られたりするけど、それは大事なことなんだよ。子どもたちがこの作品に心を奪われても、ヒーローでいるだけではいけない、仕事を持ってなければ暮らせない、ということが自然に理解できるはずだよ。そこらへんが一つ。
 第二に、ハブデービル親方は職業が悪の軍団の首領という少々常軌を逸している人だけど(マジムンだから人ではないかもしれないけど)、彼も一貫性があって良い。第1話で「ウチナーグチのマブイストーン」を封印して沖縄方言を人々から奪ったわけだけど、そのとき「ワンは沖縄の心を奪って沖縄を支配するんだ」(うろ覚えですが)と明言していた。素晴らしい戦略性があるのさー。
 「マブヤー」において実現した、この第一と第二の特徴がいかに優れているか、かぶり物特撮ドラマの大先輩である「仮面ライダー」と比較してみよう。
 「仮面ライダー」において、本郷猛は定職を持ってたっけ? 僕は「仮面ライダー」リアルタイム世代なんだけど、立花藤兵衛の経営するオートバイ屋に出入りしていた記憶はあるけど、仕事してるとこは覚えてないんだよね…。カメラマンだっけ? 忘れた。主人公が仕事してるとこをしっかり映そうとする「マブヤー」は、教育的配慮もあるのだろうけど、それだけで物語に重層的なリアリティが出てるんだよ。
 そして第二の特徴、悪の軍団の戦略性だけど、マジムンの原型はやっぱりあれだよね、ショッカー。クーバーたちの造型は明らかにショッカーのヒラ戦闘員の影響を受けてるし。しかし、ショッカーとマジムンはすごい違う。悪の組織としての鋭さが全然違う。
 規模は、ショッカーのほうが断然大きい。なにしろ毎週違う怪人(改造人間)を繰り出してくるしな。戦闘員も何人もいる。たった2人しかいないマジムンは、規模や予算において大きく差をつけられている。戦いの中心になる人も、ショッカーは幹部級の人が数名、その週の主役である改造人間が週替わりで登場、と層が厚い。マジムンは、親方が現場に立たない役=管理職担当、現場の人=戦闘担当がオニヒトデービル、とシンプルだ。これは僕が見ることができたエピソードではみなそうだった(最終話除く)。マングーチュは何を担当してるんだろう?
 しかし、悪の組織としての目標、戦略性などは逆にマジムンのほうが断然優れている。沖縄の心を司る9個のマブイストーンを発見し、封印することによって、沖縄人たちの日常やアイデンティティを破壊する。沖縄の人心を荒廃させ、アノミーを引き起こす。それから(よくわからないけど)沖縄を支配する…。アノミーから支配するまでがよくわからないけど、アノミーは恐ろしいよね。実現可能性も高いと思う。優れた戦略だ。
 対するショッカーは、僕がなんとなく覚えてるのは、幼稚園の送迎バスを乗っ取ったり、水源地に毒を入れたりしていたよね。水源地に毒を入れるってのは水道局の浄化システムや毒の濃度をきちんと計算しているのであれば、人心を攪乱するのには有効かもね。しかしどうだろ、三重県のショッピングモールで屋上水槽にヒトの死体が入ってたけどしばらく誰も気づかなかった、って話があったよね。水に異物入れるのって、効果あまりないんじゃ?? そして送迎バスジャックだけど、これははっきり言って父兄と施設の人しかビビらないよね。効率が悪いよ。
 

 主人公が仕事をはじめとするリアルな日常生活を持ってて、悪の組織に戦略性がある、それだけで僕は「マブヤー」の魅力にとりつかれた。でもそれだけじゃない。なにより素晴らしいのは、登場人物たち全員が使っている沖縄方言が、かっこいい。見てると真似したくなることだ。
 いま沖縄の子どもたちにとって、地元の言葉はどれくらい誇れる/恥ずかしいものなのだろうか。
 僕が子どもの頃は、地元の方言はダサいものだった。友達と「ごっこ」をするときは、テレビで覚えた標準語をかっこつけてしゃべったもんだ。ちなみに広島地方です。広島の方言を心底かっこええ!と思うたんは、18歳のとき「仁義なき戦い」を映画館で見たときじゃった。それまではちーとも思わざった。
(へーでも正確に言うたら、あの映画の方言は呉市の一部の方言で、一般的な広島弁じゃないそうな)


 沖縄の子が「マブヤー」を見て、ハブデービル親方のラップを聴いたりして育てば、絶対に地元の言葉を「ダサい」とは思わないはずだ。それだけの魅力が「マブヤー」にはある。
 「マブヤー」は基本、コメディだ。演じているのも地元のコメディアンたちらしい。ヒーローものに笑いの力が加わり、それらが伝統をテーマに展開することによって、1話たった10分のドラマに、たいへんな厚みと深みが出ている。このドラマを、テレビをつけるだけで見られるなんて、沖縄の人は幸せだ。内地でもやらないかな。DVDが出たら買います。
 そして、前にも書いたけど、自分たちの言葉を失い、人類みな他人と思い、祖先を敬わず、命を粗末にする、僕たちナイチャーに、大切なものは何なのか気づかせてほしい。マブヤー、内地に来て! ハブデービル親方たちも!